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夫婦揃ってメンヘラすぎて「こりゃ心労絶えないな」と思った『ナポレオン』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:109/166
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★★★
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

   原題:Napoleon
  製作年:2023年
  製作国:アメリカ
   配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
 上映時間:158分
 ジャンル:伝記、戦争、アクション
元ネタなど:軍人、革命家「ナポレオン・ボナパルト」(1769-1821)

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
1789年。自由、平等を求めた市民によって始まったフランス革命。

マリー・アントワネットは斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り、皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン(ホアキン・フェニックス)。最愛の妻ジョゼフィーヌ(ヴァネッサ・カービー)との奇妙な愛憎関係の中で、フランスの最高権力を手に何十万人の命を奪う幾多の戦争を次々と仕掛けていく。冷酷非道かつ怪物的カリスマ性をもって、ヨーロッパ大陸を勢力下に収めていくが――。

フランスを<守る>ための戦いが、いつしか侵略、そして<征服>へと向かっていく。

【感想】

あの革命家で有名なナポレオンの伝記映画です。一説によると、ナポレオンを登場人物とした映画は177本あって、ギネス世界記録らしいですね。でも、それは彼の伝記映画だけの数ではなくて、例えばタイムトラベルモノでひょっこり出てきたものも含みますけど。

<内容はナポレオンの半生のダイジェスト>

この映画では、フランス革命でマリー・アントワネットが処刑されてから、ナポレオンが亡くなるまでを描いています。僕は同じ題材の映画があるときは、なるべく過去作を観てから最新作を観るようにしており、今回もナポレオンを扱った作品で現在手軽に観れるものとして、『征服』(1937)、『戦争と平和』(1956)、『ワーテルロー』(1969)の3本を鑑賞したのですが、今日観た映画はまさにこの3本を1本にまとめたような内容でした。つまり、それだけ扱っている出来事が多いということです。その分、すべてがダイジェストのように流れていく感じになっていたので、ナポレオンについての知識がある程度ないと、ストーリーとしてはあまりピンと来ないかもしれません。僕も過去作を観ていなかったら、内容についての理解はもっと低かったと思います。

<これはナポレオン夫妻の関係性を楽しむ映画>

伝記映画だと史実から大きく逸れることができない分、映画の内容も過去の作品とそう違わないのですが、今回の映画で特徴的だと言えるのが、妻のジョゼフィーヌを扱ったところです。これがまたクセの強い人物なんですよ。自分の浮気がナポレオンにバレて平謝りしたかと思えば、次のシーンでは「あたしといないと偉大になれないわよ?」と上から目線の発言。一方のナポレオンも彼女には激怒したり、猫のようになついたりと、この夫婦はパワーバランスがコロコロ変わるんですよね。2人揃ってメンヘラかよって(笑)

でも、なんだかんだでお互いに関係性は築けていきます。ナポレオンはいつ死ぬかもわからない戦場に身を置いているためか、妻の存在が唯一の癒しなんですよね。そう考えると、ナポレオンがナポレオンでいられたのは、ジョゼフィーヌの存在があったからかもなあなんて思うわけです。彼女に会いたい一心で、彼は幾度となく死線をくぐり抜けることができたのかもしれませんから。ジョゼフィーヌもまた、当初はそれほどでもなかったのに、徐々にナポレオンに愛情を感じていって、自分が子供を産めなくなって離婚した後も、彼とは友人関係を続けられました。普通だったらもう会いたくないと思うでしょうから。

ただ、この映画はあくまでもフィクションなので、史実とは異なることだけは覚えておきたいところです。結婚当初の実際のジョゼフィーヌは、この映画以上にビッチでいろんな男性と浮き名を流し、ナポレオンからのラブレターを友達に見せて笑うほど性格の悪い部分もあったそうなので。。。
まあ、それで言うとナポレオンも愛人といろいろありましたけどね。。。(笑)この映画ではナポレオンの愛人には一切触れられませんでしたね。『征服』に出てきたマリア・ヴァレフスカぐらいは出てくるかなと思ったんですが。

<時代を感じる結婚と出産に対する考え>

この時代の結婚や出産に対する考えは、今となっては信じられないほどにエグいものがありますね。特に貴族階級ともなると、結婚自体に政治色が帯びてきますし、出産も男の子を生まないと意味がないような風潮です。さらに、医療技術も発達していないため、不妊の原因を探る実験として、ナポレオンを別の若い女性とくっつけて妊娠するかしないかを確かめるという、ある意味残酷なやり方も出てきました。ここらへん、時代および階級社会の強さを色濃く感じる部分で衝撃的なので、人によっては観るのが辛いかもしれないので注意が必要です。

<ナポレオンは小柄ではなかった?>

そういえば、ナポレオンといえば小柄であるという話をよく聞きますけど、実際はそういうわけでもなかったらしいです。諸説あるようですが、彼の身長は169cmで、当時のフランス人男性の平均身長164cmよりも高かったそうなんですよ。兵士になるような人が大きい人ばかりだから、それと比べると低いだけであって、ナポレオンだけが突出して低かったわけではなさそうです。そのためか、僕が観た過去の映画は、やたらとナポレオン役の人が小柄に見えましたが、本作ではそれほどでもなかったです。

<そんなわけで>

正直、ストーリーとしてはナポレオンの半生がダイジェストとして淡々と流れていくだけので、個人的にはそこまで面白いとは感じませんでした。それよりは、ナポレオンとジョゼフィーヌのやり取りを楽しむのがよいかと思います。なんなら、タイトルも『ナポレオン』じゃなくて『ジョゼフィーヌ』でもよかった気さえします。これ、『レジェンド&バタフライ』(2023)もそうなんですよねー。あれも織田信長じゃなくて濃姫だろって話でしたし。この両作品に共通しているのは「妻あっての夫」ってことですね。


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