【個人的な満足度】

2022年日本公開映画で面白かった順位：51/156
　　ストーリー：★★★★★
　キャラクター：★★★★☆
　　　　　映像：★★★★☆
　　　　　音楽：★★★★☆
映画館で観たい：★★★★☆

【作品情報】

　　　原題：On the Line
　　製作年：2021年
　　製作国：韓国
　　　配給：ツイン
　上映時間：109分
　ジャンル：クライムアクション、クライムサスペンス
元ネタなど：なし

【あらすじ】

釜山の建設現場で働く従業員たちにかかてきた電話――。振り込め詐欺によって娘の治療費からマンションの支払いまで、たくさんの人々が大金を失った。

現場の作業員として働くソジュン（ピョン・ヨハン）は、前職が刑事という異色の経歴を持つ。彼は愛する妻と同僚の30億ウォンを取り戻すため、振り込め詐欺犯を追跡し始める。

犯人の手がかりをつかみ、中国のとある建物へ侵入するソジュン。そこでは組織化された巨大な詐欺集団がクァク（キム・ムヨル）の指示で、毎日多額の振り込め詐欺を行っていた！

愕然とするソジュンだったが、300億ウォン規模の新たな詐欺計画を知り、元刑事の正義感に再び火がつき、ひとり巨悪に挑む！

【感想】

日本だけじゃなくて、韓国でも振り込め詐欺の被害は深刻化しているようです。そんな状況を踏まえて作られたのが本作です。韓国映画らしい見ごたえバッチリのクライムアクション、クライムサスペンス！

＜"組織犯罪"こそがこの映画の一番の見どころ＞

犯罪にいいも悪いもないですが、振り込め詐欺と聞くと、少し地味な印象を受けますよね。電話を使って声だけで済んでしまうから。声や音を題材にした秀逸な映画は直近でもいくつかありました。『THE GUILTY／ギルティ』（2018）や『ブラックボックス：音声分析捜査』（2021）なんかは、そもそもの設定が秀逸でしたよね。でも、振り込め詐欺自体は割とポピュラーなので、これをどうやって秀逸なクライムアクション、クライムサスペンスに仕上げるのかは気になっていました。その答えが"組織犯罪"だったのです。

＜アイコン的な見せ方がうますぎる＞

そもそも、この映画はストーリー展開が非常に上手なんですよ。開始5分で建設現場の事故と振り込め詐欺をリンクさせた演出でつかみはOKでした。その後、防犯カメラの映像から怪しい人物を割り出し、さっそく敵の懐へ。ここは「ちょっとうまくいきすぎだろ」っていう印象もあるんですが、テンポがよくて飽きない作りなのは好印象です。

で、敵の本拠地で見せられた圧巻の光景。それは、きちんと統率された巨大な組織だったんですよ。100人はいるであろう電話番たち。綺麗に並べられた机に座り、チームに分かれて同時進行で詐欺行為を行っています。全員エンジ色のジャンパーを着こんで一体感を出す演出手法は『イカゲーム』（2021）を彷彿とさせますね。こういうアイコン的な見せ方ってすごくいいと思うんですよ。パッと見で立ち位置がわかりますし、後からコスプレもしやすいし、韓国作品のうまいやり方だなと思いました。ここで、クァクの厳しい管理の下、日夜振り込め詐欺に励みます。「どのチームがいくら売り上げたか」みたいな会社っぽい会話もあり、人々を絶望に追いやる犯罪集団が巨大な組織だったときの光景はかなりインパクト強かったです。

＜一度カモられたら抜け出せない怖すぎる手口＞

彼らの手口は卑劣です。特殊な装置を使って、ターゲットとなる人物がかけた電話はすべてこの電話番のところにやってくる仕組みなんですよ。チームで役割を分担し、警察や弁護士、病院、金融庁などになりすまして、全員でひとりをカモにします。かけた電話すべてが犯人グループのところにつながるなんて、一度ハマッたらもう逃げられないですよね。クァク曰く、「振り込め詐欺のポイントは、相手の希望や絶望に寄り添うこと」だそうです。いかに共感してあげるかが大事らしいですね。人の弱みを突いて金をだまし取るなんて、人間として最低ですよ。

＜潜入捜査のスリルも味わえる＞

敵の本拠地に潜り込んだソジュン。すでに刑事は辞めていますが（ちなみに辞めた理由は特に明かされません）、まだまだ体はなまっちゃいません。敵に気づかれずに新たな被害を阻止しつつ、外にいる仲間にこの場所を伝えなくてはなりません。自身の正体を隠しながらの潜入ミッション。いつバレるのか、どうやって敵を叩くのか、そのスリリングな展開に片時も目が離せませんでした。そこにアクションシーンが差し込まれるのも、中だるみせずに楽しめるポイントだと思いました。

＜そんなわけで＞

さすが韓国映画と言える見ごたえあるクライムアクション、クライムサスペンス。この手のジャンルを作らせたら本当にピカイチですよね、韓国は。スリルと興奮を味わえるテンポのいい映画なので、ぜひ多くの方に観ていただきたいです。