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【ネタバレあり】特殊爆弾によるパニックアクションとその裏に隠されたシリアスなヒューマンドラマに韓国映画のエンタメ力を感じた『デシベル』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:101/158
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★★☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:Decibel
  製作年:2022年
  製作国:韓国
   配給:クロックワークス
 上映時間:110分
 ジャンル:パニック、ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
大都市・釜山。ある一軒家で起こった爆破事件のニュースを目にした元海軍副館長カン・ドヨン(キム・レウォン)にかかってきた一本の電話。

「次のターゲットは、サッカースタジアムだ。通報したり観客を非難させたら爆発する」

それはテロリストからの脅迫だった。仕掛けられたのは普通の爆弾とは違い、騒音が一定のデシベルを超えると制限時間が半減して爆発する特殊爆弾だ。

ドヨンは事態を把握する間もなく、5万人の観衆で埋め尽くされた釜山アシアード競技場に向かうが…。

【感想】

さすが観光映画ですね~。気になるところはありつつも、スリルと感動が同時に味わえるエンタメ感に脱帽でしたよ。

<パニック映画としての高いクオリティ>

この映画の見どころは2つあります。ひとつは、仕掛けられた爆弾によって人々が混乱に陥るパニック映画としての側面ですね。これは、キアヌ・リーヴスとサンドラ・ブロックが出ていた『スピード』(1994)と似たような構図で、それはバスが一定速度を下回ったら爆発するっていうものでしたが、今回の映画は騒音が一定のデシベルを超えると制限時間が半減して爆発するというものです。仕掛けられた場所がサッカースタジアムだったり、プール施設だったりと、人が多くて騒音をコントロールできないという点に焦りともどかしさを感じましたね。爆弾を見つけたときはまだ制限時間に余裕があったのに、人々が騒ぎ始めた途端、一気に制限時間が半分になる恐怖ったらないですよ。それにしても、あれだけのエキストラを用意して、爆弾でパニックになる様子を描いて、韓国のこういうアクション映画とかパニック映画っていうのは、ハリウッド映画に勝るとも劣らないクオリティで作って来るから毎回驚かされます。まあ、日本の映画も先日の『ゴジラ-1.0』(2023)を観て、その映像技術の高さにびっくりしたので、これからは邦画でももっと視覚的に派手なパニック映画も作れるとは思うんですけど。

<犯行動機にまつわる事件の重たさ>

もうひとつの見どころは、犯人の動機です。実は、この動機にはとても重く辛い過去のある事件が関係しているんです。ここから先はネタバレになってしまうので、まだ知りたくない方はここでページをそっ閉じしてください。。。




















かつてドヨンが乗っていた潜水艦が"ある魚雷"に襲われてしまう事件が起こりました。ドヨンの的確な指示で幸い直撃は免れたものの、船体を一部破損してしまい、身動きが取れない状況に。しかも、不運なことに外は台風で大荒れ。救助が来るのは2週間後とのことでした。このままだと救助が来る前に乗組員が酸欠で全滅しかねない。それをどうしても避けたかったドヨンが取った行動、それは乗組員の数を減らすことでした。でも、彼の一存だけで決めたわけではありません。やるかやらないかの投票を乗組員全員で行い、くじ引きで生きる者と死ぬ者を決めたのです。もちろん、反対意見も少数ながらありました。ありましたが、もう議論を重ねている時間もありません。最後は副艦長命令で実行したんです。そんな事情があった上での今回の犯人の凶行ですよ。自分は反対したのに、結局ドヨンの指示で大切な仲間が命を落とすことになったので。

<よくよく考えるとツッコミどころのある設定>

映画館で観ていたときは、潜水艦内での事件の心苦しさと、苦渋の決断を下さねばならないドヨンに同情していたりもしたんですけど、家に帰って改めて思い返すと、けっこう無理矢理だなと感じる部分が目立ちました。

まず、"ある魚雷"というのが、なんでそんなところにあるんだよっていうところですね。今回の設定のためだけに置かれたような都合のよさを感じてしまいました(ちなみに、わざわざ"ある魚雷"としているのには理由があるんですが、それは物語の核心に触れるところなのでここでは伏せておきます)。魚雷じゃないとしたら、潜水艦の故障とか、実際にどこかの国と交戦っていう設定も考えられますが、そうするともう話が変わっちゃいそうなので、もしかしたら製作側も苦肉の策だったんじゃないかなって気もしますけど(笑)

あと、乗組員を半分減らすときにどういう手法を取ったのかまでは描かれていないのもモヤモヤするんですよね。外には出れませんし、武器があるような描写もなかったので、おそらく何らかの方法で自殺を促したんでしょうけど、くじ引きで決めた生死のために、正直そこまでするものかなあと。これが愛する家族を守るためとかであれば、もっと感動的になりそうですが、単にくじ引きで決めただけなので感情移入はしづらかったです。とはいえ、全滅を免れるためには艦内の消費酸素量を減らす必要がありますし、そのためにはやはり人を減らすしかないと思うので、他の代替案ってのは僕には思いつきませんけど。

<そんなわけで>

後半はけっこうツッコミどころがある内容でしたが、個人的には総じて楽しめた映画です。特に爆弾によるパニックムービーの部分はかなりスリリングだったので、むしろそこだけにもっとフォーカスした方が変にモヤモヤしないで済んだかもしれません。


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