見出し画像

自分好みのAIの必要性について考えさせられる人間とアンドロイドのラブストーリー『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』

【個人的な評価】

2022年日本公開映画で面白かった順位:7/12
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】

ラブストーリー
AI

【原作・過去作、元になった出来事】

なし

【あらすじ】

ベルリンのペルガモン博物館で、楔形文字の研究に没頭する学者アルマ(マレン・エッゲルト)。研究資金を稼ぐため、とある企業が極秘で行う特別な実験に参加することに。

そこに現れたのは、紺碧の瞳でアルマを熱く見つめるハンサムなトム(ダン・スティーヴンス)。初対面にも関わらず、積極的に口説いてくる彼は、
全ドイツ人女性の恋愛データを学習し、アルマの性格とニーズに完璧に応えられるようプログラムされた高性能AIアンドロイドだったのだ!

トムに課されたミッションは、“アルマを幸せにすること”ただひとつ。実験期間は3週間。献身的でロマンチックなトムのアルゴリズムは、過去の傷から恋愛を遠ざけてきたアルマの心を変えることができるのか――?

【感想】

人間とアンドロイドのラブストーリーってことで、設定自体はオーソドックスですよね。でも、けっこう深いテーマでいろいろ考えさせられる点で、これまでの同じ映画とはちょっと違う印象でした。

<アンドロイド感ゼロのトムが新鮮>

トムは全ドイツ人女性の恋愛データを内包した高性能AIアンドロイドです。データの母数が違いますからね。会話は自然だし、詰まることもありません。まるで人間そのものでしたよ。逆に言えば、アンドロイド感が一切ないってことにもなるんですけど(笑)だから、普通に人間同士のラブストーリーに見えちゃう部分はありました。冒頭、フリーズしてしまうシーンはあるものの、それ以外で彼がアンドロイドであると感じられる部分はほぼないので、「もはやアンドロイドの意味、、、」って思いましたね。ある意味新鮮ではあるんですけど(笑)

こういう映画だと、アンドロイドが人間の気持ちを汲み取れずにミスしたり、超人的な身体能力を見せたりっていうのがよくあるパターンですが、そういう要素はありません。個人的には、もう少しコメディ要素があった方が楽しめるんじゃないかなーっていう気もしたんですが、これはこれでよかったと思いますよ。なぜなら、この映画はトムのキャラクター自体は二の次で、自分好みの対応をしてくれる彼と関わることで、人間は本当にそういうものが欲しいのだろうかっていう問題提起に繋がっていくので。

<自分好みの対応をしてくれるAIは必要か>

アルマも最初はトムに対して、ただのアンドロイドだと思って、深く関わることはしていませんでした。でも、彼女の身に起きる仕事上のトラブルや、元カレに対する"あること"への嫉妬などもあって、側にいてくれる存在として、トムを受け入れるようになります。

最終的にアルマがトムに対して恋愛感情を抱いたかどうかは明言されていないんですが、自分好みのAIの果たす枠割と、その必要性について、彼女なりの持論がラストで語られるのは、とても興味深かったです。

これはもういろんな意見があるでしょう。こういう自分好みの対応をしてくれるAIって、僕はあってもいいと思いますよ。とにかく持ち主を気持ちよくさせてくれるんですから。無償の愛を与えてくれる親に近いかもしれませんね。感情のないものに対して愛だのなんだのってのはおかしな話だとは思いますが、、、でも、この先技術が発達して、全人類のデータを取り込んだAIなんかが出てきて、普通の人間と同じような対応ができたとしたら、そこに感情がないと言えるのでしょうか。感情がある人間となんら変わらない対応をして、もしかしたら人間以上に適切な対応をして、それで「でも心はないよね」って言えるのでしょうか。受け手がどう感じるかかなと僕は思います。たとえ心があろうがなかろうが、受け手がそこに愛を感じたのなら、それはAIからの愛あっての行動ってことにしてもいいと思いますけどね。

ただ、アルマの言っていた「自分好みの対応しかしないと、人はそれに依存し、他の人と話さなくなる」ってのは、そうかもしれません。だって、自分をすべて肯定してくれる気持ちよさって、絶対中毒になりますよ。そうなったら、対話がなくなるばかりか、それに甘んじて、「AIの方が楽だしいっかー」となって、人間同士の関わりも減って、社会の在り方も変わっちゃうかもしれません。感情的には寂しいなとは思いますけど、果たして悪いことばかりなんでしょうか。まあ、今以上に子供が生まれなくなる気はしますけど、、、でもそのおかげで世界の人口が減って、資源の消費量も減って、、、いや、長くなるのでやめましょう(笑)

これは短絡的な考え方かもしれませんが、少なくともアルマは人間同士の関わりがなくなることを危惧していました。トムのような存在は、時と場合によりますね、その必要性は。

<そんなわけで>

こんな感じで、いろいろ考えさせられる映画ではありました。ロマンチックさやドラマチックさはありませんが、映画として楽しむよりも、議論のきっかけとなるっていう意味では有意義な作品なので、興味がある方は観てもいいと思います。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?