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エリザベス女王を知らないとまったくついていけない、まるでファンがファンのために作った思い出ビデオのようだった『エリザベス 女王陛下の微笑み』

【個人的な評価】

2022年日本公開映画で面白かった順位:88/89
   ストーリー:★☆☆☆☆
  キャラクター:★★☆☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★☆☆☆☆

【ジャンル】

ドキュメンタリー

【元になった出来事や原作・過去作など】

・人物
 エリザベス2世(1926-)

【あらすじ】

昨年9月、監督ロジャー・ミッシェルが急逝した。

「ドキュメンタリー作品を作ろう」

新型コロナウィルスによって次回作の撮影機会が奪われてしまったとき、ミッシェル監督がそのアイディアの一番手に挙げたのが女王陛下だった。

しかし、既視感のある、ありきたりな王室ドキュメンタリーにはできない。「エリザベス女王はまさにモナ・リザだ。誰もが知っている圧倒的存在。ビートルズよりもはるかに有名で、“お城に住むお伽話の主人公”。でもその存在感にも関わらず、実態はベールに包まれていて、私たちは彼女を永久に知り尽くすことはできなかった」

本作では、船のデッキでゲームに興じたり、競馬でご贔屓の馬がトップでゴールインしそうになるとぴょんぴょん跳ねて大喜びする姿も映し出す。そんなキュートでチャーミングな、誰も見たことのない“素顔の女王陛下”の魅力を体験できる。

【感想】

うーん、これは、、、イギリス人にしかわからないんじゃないかっていうドキュメンタリー映画でしたね。エリザベス2世についてよく知らないと、完全に置いてけぼりです。

<従来のドキュメンタリーとは異なる作風>

題材自体はとてもよかったです。イギリスのアイコン、エリザベス2世ですから。ダメなはずがありません。96歳ながらもいまなお精力的に公務を続けておられる。そんな彼女のドキュメンタリーというのだから、知られざる素顔を深掘りする内容を期待していました。

ところが、実際はまったく異なるものでした。「ありきたりなドキュメンタリーにはしない」という監督の意志が強く表れた作りなってはいるものの、時系列もテーマもバラバラな、脈絡のない映像がぶつ切りに映し出されるのみなんですよ。まるで、彼女の思い出アルバムを観ているかのような気分になりました。

普通、ドキュメンタリーと言えば、決められた題材について深掘りし、その魅力を伝えていくものじゃないですか。なので、正直テーマが微妙とかっていうのはドキュメンタリーにおいてはないと僕は思っています。どんなものでも、普段自分だったら見向きもしないようなことについて、調べたり、追いかけたりしている人たちがいる。それだけで興味が湧きますよね。

でも、今回のドキュメンタリーは、エリザベス2世を知らない人たちがいることも想定して、彼女の魅力を改めて伝える内容ではなく、「当然誰もが知っているでしょう」という前提に作られています。もし彼女のことをよく知っていたら、あんなぶつ切りの映像でも懐かしんだり、感慨深く思ったりできるとは思います。なので、現地で生まれ育ったイギリス人、もしくはエリザベス女王について相当知っている人じゃないと、正直退屈なんじゃないかと思いますね。

<エリザベス2世の魅力は伝わってくる>

上記のように、構成自体はだいぶ人を選ぶ形になってはいるんですが、エリザベス2世自身の魅力というのは伝わってきました。女王という立場でありながら、とてもキュートで国民から愛されていることが、様々な時代の映像を観ることでわかります。若い頃の彼女はとてもかわいかったし、競馬を観てはしゃぐ姿には親近感を覚えました。僕はイギリス王室の歴史やそこに関わる人々については無知に等しいですが、それでも彼女の愛らしいキャラクターは好きなります。それにしても、エリザベス2世は1926年生まれで、僕の亡くなった祖母の2歳年上になるんですが、よく幼い頃の映像まで残っているよなって思いますよ。今から90年以上も前なのに。

<そんなわけで>

題材的に興味を持つ人は多そうですが、内容としてはファンがファンのために作った思い出ビデオ感があるので、ついていけない人は少なくないと思いますよ(笑)

そういえば、イギリス王室ってエリザベス2世の息子であるチャールズからスキャンダラスになっていったイメージがありますけど、そこらへんは9月30日公開予定のドキュメンタリー映画『プリンセス・ダイアナ』で窺い知ることができるかもしれませんね。


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