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ネトフリ史上一番好き!1000年続く価値観に疑問を呈し、真実は自らの目で確かめる姿勢が現実世界にも通ずると感じたファンタジー超大作『ニモーナ』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:12/99
  ストーリー:★★★★★★★★★★
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★★★
     音楽:★★★★★
映画館で観たい:-(配信のみ)

【作品情報】

   原題:Nimona
  製作年:2023年
  製作国:アメリカ
   配信:Netflix
 上映時間:102分
 ジャンル:アニメ、アクション、ファンタジー、SF
元ネタなど:グラフィックノベル『ニモーナ』(2015)

【あらすじ】

近未来的な発展を遂げた中世の国。今夜、新たな騎士の任命式が行われようとしていた。

代々騎士の家系しか騎士になることが許されない世界。しかし、勇敢なバリスターは女王に見出され、1000年の歴史の中で初めて、庶民上がりの騎士が誕生することに世間は湧いていた。

国民が見守る中、女王がバリスターに騎士の証である剣を渡そうとしたその瞬間、剣からビームが発せられ、女王に命中。バリスターの同期で恋人であるアンブローシャスは咄嗟にバリスターの右腕を斬り落とすも、時すでに遅し。女王は帰らぬ人となってしまった。

この出来事に国中が大混乱。国民からの期待を背負っていたバリスターは、突如として犯罪者の烙印を押されてしまい、身を潜めるハメに。自らの無実を証明しようと決めた矢先、ニモーナという少女がやって来る。ニモーナは自由に変身することができ、破壊することに快感を覚える悪魔のような性格だが、国中から疑いの目をかけられているバリスターは彼女しか頼れる人がいなかった。

濡れ衣を着せられてしまった騎士と、変身能力のある謎の少女ニモーナ。王国を相手に、2人の波乱万丈な冒険が今始まる―!

【感想】

twitterを眺めていたら評判がよかったので鑑賞してみました。いやまさかこれほどまでに面白いとは、、、!個人的に、これまで観てきたネトフリのオリジナル作品の中で一番好きな映画かもしれません。スピード感ある展開に、感動的なオチと、面白い要素を余すことなく取り入れたオススメの一作です。

<レトロとハイテクの合わさった街並みが最高>

この映画、まずは世界観にドハマりですよ。騎士が存在していることから、全体的に中世を思わせる街並みなんですが、よく見るとスマホはあるし、自動改札機もあるし、空飛ぶ車もあります。中世と近未来をミックスしたような感じなんですよね。しかも、ミックスされたのは街並みだけじゃありません。主人公のバリスターは中東系で、恋人のアンブローシャスとはゲイカップル。よくある白人を主人公に、女性とのロマンス要素のある話と比べると、多様性を取り込んだ現代らしい設定でした。

<ニモーナの持つギャップにやられる>

この映画、やっぱり推すべきキャラクターはニモーナでしょう。彼女はいろんな動物に変身できる特殊能力を持ち、性格はかなり好戦的です。かわいらしい見た目とは裏腹に、大暴れすることが大好きな人物なんです。このギャップもいいんですが、もっと深いところに彼女の本当のギャップはあるんです。

ニモーナっていろいろ変身できるがゆえに、"モンスター"だとまわりから忌み嫌われてきたんですよ。だから、彼女はずっと孤独でした。そんな彼女にとって、濡れ衣とはいえ国中から目の敵にされているバリスターは、ある意味似た境遇の人物ってことでシンパシーを感じたんでしょう。「疑惑を晴らすのを手伝うから相棒にして」っていうのは、そこまでして側にいてくれる誰かがほしかったんだろうなあ。すべて観終わった後に思い返してみると、こういう健気な一面が彼女の一番ギャップなんじゃないかなと思います。

<生きづらい世界>

そんなニモーナの視点に立ってみると、この王国に蔓延している価値観というのが、とてつもなく残酷な世界だということがわかります。なぜなら、ここではモンスターというだけで完全な悪とみなされ、騎士がモンスターを斬り捨てることこそが正義だと思われているからです。1000年前にモンスターに襲われた歴史を鑑みれば、人間からしたら自衛のために当然のことだとは思いますよ?でも、モンスターというだけで全部が悪かと言われると、そうではありません。現に、ニモーナは好戦的な性格ではあるにせよ、意味もなく人を傷つけることはしませんし、何なら人命を救う優しい一面さえあります。それなのに、モンスターというだけで「倒されるべき存在」とみなされてしまうんですよね。。。ある側面からは正しすぎる価値観なんですけど、もう一方から見るとものすごく生きづらいんですよ。でも、マジョリティが社会を支配しているというべきか、あまりにも当たり前になりすぎていて、本当にそれが正しいモノの見方なのかっていうのが議論されないんですよね。もはや常識だから疑わないという感じで。

これは、現実世界においても似たようなことがあると思っていて、一番わかりやすいのは人種差別かなと思いました。歴史を振り返ってみると、黒人やユダヤ人は、彼らがそうだというだけでひどい扱いを受けてきたじゃないですか。コミカルかつファンタジーな作風からは予想だにしませんが、意外とメッセージとしてはシリアスなのも、この映画の魅力だと思います。

<終盤の展開に大注目>

ラストの展開は意外性と同時に、ものすごく胸が熱くなるものがあります。怒りと悲しみに満ちたニモーナと、それを止めるバリスター。バリスターも自身が追われる身になって初めて、ニモーナの背負っていた孤独がわかったんだと思います。ネタバレになるので詳細は書きませんが、それを踏まえてのニモーナのあの行動。。。彼女はまわりを恨んでしかるべきだったのに、よくあんな行動ができるなと。これは、彼女の中にあるささやかな"幸せの記憶"がそうさせたのか、目の前にいるバリスターの優しさに触れてそうしようと思ったのか、、、僕は両方だと思いますけど。

<そんなわけで>

面白い要素、多くの人がハマりそうな要素をうまく組み合わせた映画だと思います。一見、ただのファンタジー映画に見えて、現実世界にも当てはまりそうなことを描いている分、共感度も高いですから。正直、ニモーナがモンスターになった経緯や、真犯人の動機がちょっとわかりづらいというか、弱いかなっていう気もするんですが、それを差し引いても面白い作品でした。また、ニモーナの声をクロエ・グレース・モレッツが担当しているからか、BGMに『キック・アス』(2010)でおなじみの『Banana Splits』が流れたのもポイント高いです。


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