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タイで起きた洞窟遭難事故の救出劇に息を吞むドキュメンタリー『THE RESCUE 奇跡を起こした者たち』

【個人的な評価】

2022年日本公開映画で面白かった順位:14/37
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】

ドキュメンタリー

【原作・過去作、元になった出来事】

・事故
 タムルアン洞窟の遭難事故(2018)

【あらすじ】

2018年6月23日、サッカーチーム「ムーパ(イノシシ)」に所属する少年12人が、サッカーの練習後、コーチ同行のもとタイ北部チェンライ県のタムルアン洞窟探検に入った。しかし、その日は豪雨により洞窟が浸水し、出入り口が塞がれてしまった。少年たちは帰宅できなくなり、不審に思った家族から行方不明と報告され、捜索作業が始まった。

少年たちは洞窟の入り口から約5km入った場所に取り残されていることが確認されたが、洞窟内は増水し、救助は不可能と思われた。タイ海軍特殊部隊や米軍特殊部隊に加えて、各国から応援が入り数千人が集まったが、洞窟ダイビングは死のリスクが高く、特殊技能が必要であるため、少年たちの救出活動は進まない。

そこで世界各地から集められたのは、民間の洞窟ダイバーたちだった。彼らを中心にした決死の救出作戦が始まる―。

【感想】

実はこの話、2020年にも『THE CAVE サッカー少年救出までの18日間』という映画が公開されています。僕も当時観ましたけど、内容はまったく同じですね。ただ、本作の方がドキュメンタリーな分、リアリティがありました。

<時間との勝負による緊迫感>

洞窟内に閉じ込められた少年たちとコーチ。当時は雨季に入っており、大雨で洞窟内に大量の水が入り込んだ結果、水位が上昇して洞窟内は冠水。洞窟内の石は石灰岩で、水を溜め込みやすいらしいんですよ。なので、正直生存は絶望的かもしれないという見方が多かったんじゃないでしょうか。

タイ内でも特殊部隊やボランティアなど5000人が救助活動にあたっていたんですが、洞窟内潜水には特別なスキルが必要。そのため、海外から洞窟ダイバーを招集しました。そんなダイバーいるんだって思いましたけど。

幸いにも、事故発生から10日で全員の生存を確認。ところが、洞窟内は酸素が15%(18%以下だと生命活動に支障が出るらしい)で、またいつ大雨が降ってくるかわかりません。だから一刻も早く全員を助け出す必要があり、現場には緊迫した空気が流れていましたね。

<洞窟ダイバーという特殊ジョブ>

後から調べてわかったんですけど、洞窟内での潜水って普通の潜水以上に危険らしいんですよ。まず緊急時に浮上できないので、何かあったら出入口まで戻らないといけませんよね。このとき、十分な酸素が残されていなかったら、酸素不足になってしまいます。しかも、中が迷路のようになっているので、道に迷ったらそれこそ命の危険ですよ。開放的な海でのダイビングよりもリスクが高いです。でも、真っ暗な水中を進んで行くのは、まるで宇宙を遊泳しているかのようでとても神秘的だそうです。

あと、、、これは自分のことで恐縮なんですが、この洞窟ダイバーたちがみんな自分と似ている部分があって、ものすごく親近感が湧いたんですよね(笑)何人かにインタビューしていましたが、全員揃ってチームプレーや団体競技が苦手で、対立することが好きじゃないっていう。僕も小さい頃からの経験でまったく同じことを感じていたので、潜水ダイバーに向いてるかもと思ったり(笑)他にも、内向的で子供のときに嫌がらせを受けていた人とか、スポーツ自体が苦手という人もいたりとか、潜水ダイバーという言葉からイメージされる人物像とはまったく違う人たちばかりで面白かったです。

<祈るタイの人たち>

これは宗教的な意味合いが強いんですが、とにかく祈るんですよね、タイの人。ナンノンの女神を祀って、僧侶も呼んだりして。宗教を否定するわけじゃないですけど、これが救助活動に何か役に立っているかというと、多分そんなことはないかなっていう。祈って助かるなら誰も苦労はしないって言いたいところではありますが、現地の人はそれを信じているし、精神的に安定するならいいとは思いますけど。まさに、「神様、どうか子供たちをお助けください」っていう神頼みですから、これ。

<子供たちを眠らせて運ぶという賭け>

洞窟の出入口にたどり着くには2時間以上の潜水が必要でした。その間に子供たちがパニックになって暴れたら、さすがに潜水ダイバーといえども対処しきれません。そこで考え出されたのが、麻酔で眠らせて運ぶという手法です。ウェットスーツとマスク、酸素ボンベをつけた後に、唾液を抑える薬(唾液で窒息することもあるとか)や心拍数を安定させるための抗不安薬、そして麻酔を投与。子供たちが眠ったら移動開始です。かなりリスクが高く、麻酔科医ですら反対していましたが、もうこれしか方法がありません。途中、呼吸が乱れたり、止まったりする子もいましたが、結果的に全員無事に生還できました。

ただ、今回のこの救出劇においては、ダイバーがひとり、物資を届けた帰りに酸素不足となり、亡くなってしまったんですよね。。。まだ37歳の若さだったのに。。。

<そんなわけで>

前代未聞の救出劇ということで、不謹慎かもしれませんが、とても興味深く観れる映画でした。1人の殉職者を出してしまったものの、子供たちが全員無事で何よりです。


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