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清掃員の日常を言葉ではなく画で見せていくアート寄りの映画だった『PERFECT DAYS』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:164/180
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:-
  製作年:2023年
  製作国:日本
   配給:ビターズ・エンド
 上映時間:124分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、静かに淡々とした日々を生きていた。同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、同じ日は1日としてなく、男は毎日を新しい日として生きていた。

その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。木々がつくる木漏れ日に目を細めた。そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。それが男の過去を小さく揺らした。

【感想】

※以下、敬称略。
邦画ですが、監督はドイツ人のヴィム・ベンダースという方。これはなかなかに好みが分かれそうな映画じゃないですかね。ひとりの清掃員の日常が淡々と描かれていくだけなので。

<広告っぽい感じがした理由>

そもそもこの映画、製作の始まりが他の映画とちょっと異なります。ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏の次男である柳井康治氏が、2020年から行っている「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの延長線で作られたんです。「プロジェクトを通じてトイレの価値や意味について多くの人に知らしめ、一人ひとりが考えるきっかけを作りたい」(日経XTRENDより引用)ということで、あれこれ考えた結果、映像という形に行き着いたそうで。

今回の映画は、映画というよりもCMというかPVというか、何か宣伝臭がするなあと感じていましたが、上記の緯を聞くと、なんかそれも納得できますね。タッグを組んだのも電通グループの方のようですし(笑)

<同じような日々の中にあるちょっとした違いを楽しむ>

本作は渋谷区のトイレを舞台に物語が進んでいくんですが、これがもうタイムループかってぐらい同じ日々の繰り返しなんですよ。平山が朝起きて、歯を磨いて、アパートを出て自販機でコーヒーを買って、車で仕事場に向かって、終わったら銭湯に行って、浅草で一杯やって、帰宅後に読書をして寝る。主人公が悪いやつを倒すとか、夢を叶えるとか、そういうドラマチックな展開は一切ありません。しかも、平山は極端なぐらい無口。一瞬、しゃべれない設定なのかなと思うほど言葉を発しません。

ところが、その同じような毎日でも、微妙に差異があるんですよね。天気も違えば、だらしない同僚(柄本時生)とのやり取りも日々変わります。ゴミの中にちょっとした面白いものを見つけたり、平山が趣味の写真で写す景色も毎回違ったりで、1日としてまったく同じ日はないんですよ。そういう意味では、平山は常に新しい日を生きているんですよね。その微妙な差を楽しむのが人生の醍醐味とでも言わんばかりで、目まぐるしく変化していく東京という街の中で、省エネで平穏に暮らすのも悪くないかもなと思わせてくれます。

<これは役所広司にしか務まらない>

その中でさすがだなと思ったのは、役所広司の演技ですよ。必要最低限のことしかしゃべらないのに、表情や仕草で喜びや驚き、悔しさを表現するんです。彼の出立を観るだけで、今何を思っているのかがわかるってのがすごいことだなと思いました。特に、行きつけの小料理屋のママとのくだりはじーんときましたねぇ。日本に素晴らしい役者さんはたくさんいらっしゃいますが、この平山というキャラクターは役所広司にしかできないんじゃないかと思います。

<ゆーても、好みは分かれる>

ただ、先にも書いた通り、ドラマチックな展開はなく淡々とした映画です。エンタメ寄りかアート寄りかと言われたら間違いなく後者で、この手の映画が各レビューサイトにおいて高い評価を得るのも理解できるんですが、個人的に好きなジャンルかと言われると、、、そうではないですね(笑)この清掃員が、実はかつて特殊部隊に所属していた最強兵士で、渋谷の悪いやつらをボコボコにしていく話とかの方が僕は好きなので。ただ、「こういうのでも映画になるんだなあ」と新しい視点をいただけたような気はします。

<そんなわけで>

アート系の映画が好きな人はハマるかもしれませんね。ただ、CMやPVの延長のような感じなので、それを2時間以上観るっていうのはそれなりに体力使うと思いますけど。あと、ちょいちょい名バイプレーヤーの方々が出ているのも注目ポイントですよ。一瞬しか映らなくても「あ!」と思える方々が出演されていますので、それを見つけるのもひとつのお楽しみ要素かと。


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