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これがボリウッドのアベンジ!難聴ラブコメかと思いきや、村の未来のために戦う漢たちの熱量と情報量がハンパなさすぎた『ランガスタラム』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:11/117
  ストーリー:★★★★★★★★★★
 キャラクター:★★★★★★★★★★
     映像:★★★★★★★★★★
     音楽:★★★★★★★★★★
映画館で観たい:★★★★★★★★★★

【作品情報】

   原題:Rangasthalam
  製作年:2018年
  製作国:インド
   配給:SPACEBOX
 上映時間:174分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

1980年代半ばのアーンドラ・プラデーシュ州中部、ゴーダーヴァリ川沿岸の田園地帯、ランガスタラム村。チッティ・バーブ(ラーム・チャラン)は、モーターを使って田畑に水を送り込むことを生業にする労働者。難聴で、他人の声がよく聞き取れない障がいを持っているが、さほど気にせずに毎日を楽しく暮らしている。彼は近所に住むラーマラクシュミ(サマンタ)に惚れて、調子はずれな求愛をする。

一方、村は「プレジデント」を自称する金貸し兼地主のブーパティ(ジャガパティ・バーブ)によって牛耳られている。チッティ・バーブの兄で中東ドバイで働いているクマール・バーブ(アーディ・ピニシェッティ)は、プレジデントが好き放題にする故郷の村の有様を帰省した際に見て心を痛めていた。

やがてクマールは、州会議員ダクシナ・ムールティ(プラカーシュ・ラージ)の力添えで、村長選挙に立候補して政治家として村の生活を改善していこうと思い立つのだが……。

【感想】

RRR』(2022)のラーマ役で一気に日本での知名度を上げたラーム・チャラン。そんな彼が、“最高傑作のひとつ”、“役者人生の転換点”と自ら述べているのが本作です。174分という長尺が気にならないほどメチャクチャ面白かった。。。とりあえず、ポスター変えましょう。これじゃ映画の内容や雰囲気がまったく伝わりません(笑)

<ボリウッドらしくぶっ飛びすぎなキャラクター>

この映画、とにかく熱量と情報量がハンパなくて、一体何から書いていいのかいまだに悩んでいます。ぶっ飛びすぎなキャラクターとまさかすぎるストーリー展開、そしてインド映画おなじみのド派手な歌とダンス、この3つの要素がインド映画の中でもひとつ抜きん出ていると思います。もはやこのインパクトデカさには、世界が追いつかないんじゃないでしょーか(笑)

とにもかくにも、一番推したいのはやっぱりキャラクターですよ。特に印象的だったのが主人公のチッティ。彼、難聴で他人の声がよく聞き取れないんです。兄が補聴器を買ってあげるんですが、「まわりから難聴と思われるのが嫌だ」つって使わずで。とはいえ、村の人も割とそのことを知っているんで、もういいじゃんとは思いましたけどね(笑)

そんな彼が、一目惚れしたラーマラクシュミ(彼女は難聴のことを知りません)にアプローチするんですが、耳がほとんど聞こえないのでまったく会話が成立していないんですよ。大声で話してもらえればわかるんですが、彼女はチッティが難聴ということを知りませんし、かといってチッティもそのことを言わないので、コミュニケーションが全然取れていません。チッティは唇の動きを読めるとか言っていましたが、全然読めてなくて的外れな返しばかりしてて笑いました。

そんなアホなところがある反面、実はチッティってメチャクチャ強いというすごいギャップを持っているんですよ。「これもう『RRR』のラーマじゃん」ってぐらい、ひとりで敵をボコボコにするシーンもあるんですが、そこがたまらなく痛快で。いや、本当にインド映画はうまいですよ、こういう圧倒的な個を描くのが。それでいて、ちゃんとその主人公に感情移入できる流れを作った上でのそういう演出ですからね、みんなファンになっちゃういますよね

<ポップとシリアスがうまく融合したストーリー>

次に推したいのが、秀逸なストーリー展開です。先に書いたようにラブコメなのかなと思いきや、それはあくまでも要素のひとつにすぎません。この映画の主題は、独裁者に支配され腐敗した村を改革することなんです。村の支配者であるブーパティは、30年もその座を動いておらず。それは、対抗勢力を悉く潰すヤクザみたいなことをしていたからなんですが、その上で、村民に金を貸し付けては水増しした金額を返済させるというとんでもない悪党です。なのに、人々は一切抵抗しません。まあ、抵抗したらしたでどんな仕打ちを受けるかわからないってのもあると思いますが、渋々それに従い、貧しい生活を余儀なくされています。それを変えようと、チッティの兄であるクマールが立ち上がり、新たなリーダーに立候補します。

悪党の不正を暴き、ビビってる村民を説き伏せて自分に投票するよう呼びかけます。仲違いしている連中とも手を組み、敵の妨害に遭いながらも懸命に選挙活動を続けるシーンは、先のポップなラブコメからはまったく予想できないシリアス展開で驚きましたね。

<やっぱり外せない歌と踊り>

そして、ボリウッドでおなじみの歌と踊りは本作でも健在です。『RRR』の『ナートゥ・ナートゥ』ほどの衝撃ではないにせよ、川や草原、村などいろんな場所で激しく舞い踊る画は圧巻でした。よく観ると、真ん中の主人公だけじゃなくて、まわりのダンスモブみたいな人たちもキレッキレなんですよね、踊りが。観ているこっちが元気になります(笑)あと、毎回思うんですけど、インド映画の踊りの振り付けって謎なの多くないですか?今回も筋トレとかヨガみたいな動きがあって、「よくそんな動きを踊りの中に取り入れるな」って思いました(笑)

<そんなわけで>

ラーム・チャランが「人生を変えた作品」と言うのが納得できる作品でした。わかりやすいアクションバトル映画ってわけでもないので好みは分かれるかもしれませんが、とにかくストーリーとキャラクターが推せます!ぜひ映画館で観てみてください!!


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