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金持ちは死さえも金で買う時代なんだと感じる『すべてうまくいきますように』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:34/41
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Tout s'est bien passe
  製作年:2021年
  製作国:フランス
   配給:キノフィルムズ
 上映時間:113分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:エマニュエル・ベルンエイムの自伝小説

【あらすじ】

小説家のエマニュエル(ソフィー・マルソー)は、85歳の父アンドレ(アンドレ・デュソリエ)が脳卒中で倒れたという報せを受け、病院へと駆けつける。

意識を取り戻した父は、身体の自由がきかないという現実が受け入れられず、人生を終わらせるのを手伝ってほしいとエマニュエルに頼む。

一方で、リハビリが功を奏し日に日に回復する父は、孫の発表会やお気に入りのレストランへ出かけ、生きる喜びを取り戻したかのように見えた。

だが、父はまるで楽しい旅行の日を決めるかのように、娘たちにその日を告げる──。

【感想】

安楽死を扱ったヒューマンドラマです。今作と同じフランソワ・オゾンが監督した『スイミング・プール』(2003)という映画の脚本家、エマニュエル・ベルンエイムの自伝小説が元になっているようです。

<死も金で買える>

この映画を観てまず思うことは、「人生におけるほぼすべての選択肢は金で解決できる」ということですね。そりゃそうだろって話ではあるんですが、なぜそう思ったのかというと、けっこう金のかかる安楽死を簡単に選択しちゃうからです。人間の終着点である死でさえも金で買えるなら、もうほとんどのことは金で何とかなるって思いますよねー。この映画の舞台はフランスですが、フランスでは安楽死は合法化されていないため、やるならスイスで行うことになります。渡航費やらコーディネーターへの手数料やらで、劇中では1万ユーロほどかかってました。今の日本円で150万円ぐらい?(思ったより高くない気もしますけどw)

それをですよ、脳卒中で倒れて体の自由がきかなくなったアンドレじいさんが、「こんな姿で生きるなら死んだ方がマシだ」つって安楽死したいって言うんです。娘のエマニュエルが病院の入院手続きで、医者から両親の経済状況を聞かれるシーンがあるんですが、一言「裕福です」と。アンドレは実業家かつ美術品の収集を行うほどで、母親は著名な彫刻家らしく。金はあるから治療にしろ安楽死にしろ、その意思決定においては何の障害もないんですよね。だから、トントン拍子に話が進んじゃって。アンドレは「貧乏人は死を待つだけだな」みたいなことを言うぐらいですから、金持ちって死さえも金で買うんだなと思いました。

<上司の無茶ぶりに振り回されているかのような娘たち>

この手の映画でお決まりのパターンだと、「父親に迫る死を目前に、家族の絆が深まる感動のヒューマンドラマ」ってのがありがちですが、今作に至ってはそういった要素は一切ありません。とにかく、アンドレは頑固で一度やると言ったことはやる人物として描かれていますし、妻も体が不自由なため、夫と大した絡みもありません。まあ、妻に関しては長年連れ添ったために、多くを語らずともわかるという絆の深さがあったような気もしますけど。

あとは、娘2人が父のわがままを叶えるために奔走するっていう、ただそれだけの話なのだ。もはや業務なのかなってぐらい淡々と進みますよ(笑)普通だったらね、家族が父の選択を全力で止めそうなものですが、「父は言い出したら聞かないから」と早い段階からある意味あきらめモードに入ってます。だから、設定としては面白かったんですけど、映画としては淡々としているから好みは分かれそうだなと思います。

<そんなわけで>

題材は安楽死というシリアスなものですが、テーマとしては"金持ちの道楽に振り回される娘たち"って感じでしたね。ある意味、わがままな上司に振り回されることが多い人は共感できるかもしれません(笑)いやー、アンドレじいさん、メチャクチャめんどくさそうな人だなと思いました。金で自分のわがまま全部通してきた人生が垣間見えます(笑)


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