見出し画像

映画としての面白さ以上に、ディズニーとして何を大事にしてきたかを優先したような映画だった『ウィッシュ』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:63/172
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★★★
     音楽:★★★★★
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:Wish
  製作年:2023年
  製作国:アメリカ
   配給:ディズニー
 上映時間:95分
 ジャンル:3DCGアニメーション、ミュージカル、ファンタジー
元ネタなど:なし

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
願いが叶う魔法の王国に暮らす少女アーシャの願いは、100歳になる祖父の願いが叶うこと。だが、すべての“願い”は魔法を操る王様に支配されているという衝撃の真実を彼女は知ってしまう。

みんなの願いを取り戻したいという、ひたむきな思いに応えたのは、“願い星”のスター。空から舞い降りたスターと、相棒である子ヤギのバレンティノと共に、アーシャは立ち上がる。

「願いが、私を強くする」──願い星に選ばれた少女アーシャが、王国に巻き起こす奇跡とは…?

【感想】

ディズニー長編アニメーション映画第62作目。ウォルト・ディズニー・カンパニー創立100周年記念作品。まさにこの100年の集大成といった感じで面白かったんですが、好みが分かれそうだなと思う映画でした。

<秀逸なアニメーション表現>

この作品は、まずあのアニメーション表現の素晴らしさを推したいです!予告で観たときから思っていたんですが、往年の2Dアニメーションのように見えて、しっかり3Dで描かれているんですよね。この神がかったバランスがもう最高で。懐かしさと最新技術の融合を体感でき、ディズニーらしいファンタジーな世界観との相性抜群だと感じました。

<抽象的に感じるストーリー>

肝心のストーリーについては、これがけっこう判断が難しいんですよね。面白いっちゃ面白かったんですが、『アラジン』(1992)や『アナと雪の女王』(2013)より楽しめたかというと、個人的にはそこまででした(笑)その理由を考えてみたんですが、おそらくこの作品の世界観にあるんじゃないかなあと思いました。

この映画って"人々の願い"を題材にしているんですけど、それってすごく抽象的なものなんですよね。「誰のどんな願いをどう叶えるか」っていう具体的な話ではなく、願いそのものを持つことの大切さを描いているから、ややふわっとした印象です。例えば、『アラジン』だったら『アラジン』でしか、『アナ雪』だったら『アナ雪』でしか成立し得ない世界観や各キャラクターの願いがあるため、そこに感情移入もしますし楽しめるんだと思うんです。そういう意味では、この作品は別に『ウィッシュ』の世界である必要がないぐらいには、個々の願いについての深掘りはされていません。願いの中身云々ではなく、あくまでも願いそのものを持つかどうかって話なんですよ。

<100周年記念作品だからこそのメッセージ>

もし、これがいつもと同じディズニー映画のひとつであれば、このやや抽象的な作風をあまり受け入れられなかったかもしれません。でも、今回に関してはそれでもアリかなとは思います。というのも、本作はディズニー創立100周年記念作品ですからね。映画としての面白さよりも、ディズニーが一番大切にしていることは何かっていうことを優先したんじゃないんでしょうか。それは、人々が夢や希望、願いを持つことで、その実現に向けてがんばれるということです。それを伝えるために、個性ある世界観ではなく、最大公約数的な形にしたんじゃないかなって勝手に推測していますけど(笑)なので、ディズニー作品をずっと観てきている人からしたら「集大成だな」って思える反面、この全体的にふわっとした作風に感情移入しづらい部分はありました。

<ヴィランが弱い>

今回のヴィランであるマグニフィコ、もう少しヴィラン感出してほしかったですね。なんか弱かったんですよ。戦闘力じゃなくてキャラクターとして。彼ってただ被害妄想が強いだけで暴君となっていたので、イマイチ彼の行いの動機が弱く感じられたんですよね。冒頭でもチラッと触れられていたように、例えばかつては願いの大切さを知る少年だったけど、現実にうちのめされ、やがて他人の願いを妬むようになったとかっていう方がわかりやすかったかもしれません。

<そんなわけで>

やや抽象的でふわっとしてはいますが、ディズニーの「夢を見ることができれば、それは実現できる」っていうメッセージを体現したような映画で、彼らが今まで何を一番大事にしてきたかは伝わってきます。映像と音楽は相変わらずよかったですし、何よりもスターがかわいいのでそれだけでも映画館で観る価値はあると思います!

それにしても、これはディズニーに限らずですが、"〇周年記念作品"ってそれだけでハードル上がっちゃうから、作り手としてはけっこうプレッシャーかもしれませんね。特に、今回のように映画としての面白さよりもメッセージ性を意識して作られた作品だと、余計に上がりすぎた期待値を超えられなかったりしそうなのがちょっと可哀想かなとも思います。

ちなみに、同時上映だった『ワンス・アポン・ア・スタジオ -100年の思い出-』(2023)は、これまでのディズニーキャラ総出演でエモかったですね。ディズニープラスでも配信されているのでいつでも観れますが、映画館の大きなスクリーンで観るとまた格別です。ただ、これ映画館では吹替しかないんですよねー。日本語字幕ついてるのに、音声も日本語なのが謎でしたけど。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?