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ショッピングモールは許してくれない 2

【この話は事実をもとに膨らませた あくまでフィクションです】


ー  ショッピングモールからの波状攻撃 ー

 前述の和食レストランで食事を済ませて支払いをしようとした私は、伝票を手にレジに向かった。すると笑顔のアルバイト(と思われる)の女の子が『当店のポイントカードはお持ちですか?』と聞くではないか。『ううう・・・、まだ続くのか?』と構える私に対し、まくしたてるように『お持ちでないのなら お作りしてもよろしいですか?』と女の子は言う。
 この子も店長や先輩から販促について指導されてるんだろうなぁなどと考えているうち、『あ、、はい』と答えてしまっていた。息つく間もなくその女の子が『このポイントカードは期限なしで、1回ご来店ごとに1つスタンプを押しまして、10個スタンプがたまりますとお会計から500円割引させていだきます』と流暢に、ただし感情無く言った。
 満腹になりながらもグッタリ疲れて(10回も来るわけはないだろう)と思う私だった。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 しかしやっとの思いで支払いを済ませ 店を出ると、新たな刺客が私を狙っていたのである。レストランを出た私の前に現れたのは、風船を持ったお姉さんだった。目を逸らさずにポケットティッシュを差し出しながら歩み寄って来るその女。そして『携帯電話はどちらの会社のものをお使いですか?』と私に訊いたのだ。

 こんな時には『いや私は携帯電話は使わないんですよ』と言えれば一番いいのだろうか? 『本日ご契約のお客様には、今日から使える5%オフチケットに加えて毎月200ポイントを差し上げます』なのかどうかは知らんけど、今日そんなことをやるつもりはサラサラない。しかしお姉さんたちは私1人に対して2人がかりになり、ガスと電気をまとめることで、いかに経費を節約できるのかを熱っぽく語る。

 手を変え品を変え繰り出される攻撃を断り続けた私に、この男は無理だとあきらめた携帯電話の営業部隊。『またお願いします!』という声に送られて駐車場に向かう私の前に、次に立ちはだかったのは、携帯電話の営業と同じにおいがする人種だった。『お家のインターネットは遅くてお困りではないですか? ◯◯光ならインターネットのお悩みは全て解決です!』

 揃いのウインドブレーカーに身を包む光通信のチームは、ビスコなどの菓子類をバラまいている。携帯チームよりやや大人びた雰囲気の人が多い印象であり、その口調はあくまで優しく、まるで知らない間に外堀に続いて内堀を埋めようとしているかのようだった。しかしもちろん今日、そんな面倒臭いことに手を出す気はない。我が家のインターネットはメッシュWi-Fiを契約していて、時折途切れることはあっても基本的に快適だ。要するにこの人たちには当面用事はない。

 ということで彼らからも逃れ、やっと駐車場に繋がる出口に来たと思ったら、まだ帰してはくれない。そこにはさらなる軍団が控えていたのである。特設コーナーで待ち構えるのは、不敵な微笑みをたたえる クレジットカード契約部隊であり、最後の砦として待ち構えていたのだ。

 もはやその時の私は 人から何かを勧められることには吐き気がする位の状況だったのだが、そんな私に『今ご入会いただけますと、特典として 2,000ポイント、お誕生月にはそれとは別に1,000ポイントを進呈いたします!それが毎年ですよ! さらに今なら年会費無料に加えて、当ショッピングモール全店で使える金券3,000円分プレゼントしています!』と、かなり魅力的なことを言うではないか。
 ということは、今日5,000円貰えるってことだよなぁ・・・と揚げ物でやや胸やけしている私は、まんまと営業社員の術中にはまり パイプ椅子の人となったのであった。


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