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安倍さん、あなたは私の青春でした:私の安倍晋三元首相への弔辞

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先月27日、日本武道館において安倍晋三元首相の国葬儀が執り行われた。
前日、私は個人的に安倍元首相への追悼を行うことを思いつく。
東日本大震災のさい、中学生であった私にとって高校から大学までの青春時代は安倍政権の時代と重なる。まさに、私の時代の精神を体現したのが、安倍晋三と云う人物であった云える。
今回の国葬は賛否両論で国論を二分し、反対派の声が大きかったが、私なりの安倍晋三へのお別れの言葉を述べたいと思う。
なお、人生初の弔辞なので不慣れな部分が多いのはご了承いただきたい。
また本弔辞を聴くさいは、国葬儀の中で生前の安倍元首相による「花は咲く」のピアノ独奏を背景にして故人の業績を振り返る映像が流れたように、森山直太朗の「さくら」を脳内で再生して欲しい。

 安倍晋三さま

 私は仙台市に生まれ育った人間です。あなたが第二次政権を発足させた平成24年のとき、私は中学三年生でした。私が中学二年生だった平成23年に東日本大震災が発生し、当時与党であった民主党政権が失政を重ねていました。被災地であった東北の人間としては酷い対応が目に余りました。とは云え、当時は中学生だった私は政治について知識がありませんでした。
 高校生になったばかりの私は当時あなたを応援していた保守言論人の著作を手にすることにしました。当時のインターネットはあなたを応援する動画やブログであふれていたので、私はそこから政治を勉強することにしました。
 保守言論人たちによると、あなたは中国を打倒し、北朝鮮拉致被害者を奪還し、日本の誇りを取り戻す救国の志士だと云われていました。そのためにアベノミクスでデフレ下の長期不況で苦しむ経済を立て直し、アメリカがレーガノミクスでソ連を打倒したように中国を崩壊させ、拉致問題を解決に導くと云う深遠な計画が存在すると云われていました。高校時代の私はそのような言説に触れ、あなたを救国の志士だと思い、アベノミクスによる経済政策は理に適ったことであり、民主党を筆頭とする反日勢力から日本の誇りを取り戻そうとする政治家だと理解しました。
 その後、私は大学に進学し、勉学に励みました。高校時代は保守言論人の著作ばかりを読んでいましたが、他のジャンルの書籍も読むようになりました。その頃になりますと、保守言論人たちの言説が変化していきました。きっかけは平成26年に8%へ引き上げられた消費税増税でした。引き上げに関しては、景気が回復したばかりなのに増税は時期尚早と云う意見とあなたの云うことなら良いじゃないかと云う意見に分かれました。消費税増税反対派はあなたは財務省に操られていると云う言説を流していましたが、頼りになるのは安倍さん、あなたしかいないと云っていました。
 平成27年には、戦後70年と云う節目であり、先の大戦についての政府見解を述べる戦後七十年談話を発表されました。談話の内容に関しては、保守言論人たちの間で再び見解が分かれていました。否定派は平成7年に発表された村山談話と同じではないか、日本が侵略を認め、謝罪をするのはけしからんと述べ、肯定派は日本の明治維新を評価し、過去の罪を次世代に背負わせてはならないと述べたのは、中韓への謝罪外交からの脱却だと云っていました。しかし、それでも安倍さんしかいないと云う声は止みませんでした。
 特定秘密保護法、安全保障関連法案などは国論を二分しましたが、反対して騒いでいるのは反日勢力だと保守言論人たちは述べていました。その後、森友・加計学園問も発生しましたが、それでも日本のリーダーは安倍さんしかいないと云われました。アベノミクスで景気は緩やかにだが回復している。民主党政権よりはマシだ、野党にまかせるも安倍さんの方が良いと云う言説が流れ、私もそう思いました。
 やがて、私は保守思想を本格的に学び、保守言論人たちが述べていた国家観や歴史観を再検討しました。結果、私は保守言論から離脱していきました。
 大学三年生の時、市内で大学同期で同じ学科に所属していた人が警察官を殺害する事件を起こしました。その頃、ゼミの卒論準備と就活が同時にはじまる時期であり、大学同期の友人たちの間には不平不満が沸き起こりました。あなたはアベノミクスで若者の雇用を増やし、若者が就職しやすい環境を整え、一億総活躍・女性活躍・人づくり革命を推進し、若者の支持を集めたと評価されていましたが、私はその時になって社会の閉塞感を感じ取りました。
 私は就活にはついていけないと思い、卒論に専念しました。進路が就職か院進の二択しかないとされていましたが、どちらも私にとって未来がある道には到底思えませんでした。こんな国に暮らしたくないと思い、海外に移住したいと思いました。
 それでも大学を卒業したあとは、働かないといけないので仕事を探すことにしました。折しも新型コロナ感染症によるパンデミックと重なり、経済は一気に悪化しました。バイトすらろくに採用されず、就職支援施設を頼って受けた支援はマナー講座と履歴書の添削、自己分析、激励だけでした。大学を卒業したので両親から金銭的支援は打ち切られ、収入がない中で貯金はあっと云う間に底を尽きました。それでも頼れる人がおらず、「ステイホーム」と一方的に云われ、自宅で淋しく先行きがみえない不安の中にいた私にとって話を聞いてくれる人がいるだけでもありがたかったです。
 しかし、結局、私はどこにも採用されず、とうとう体調不良を起こし、自宅から出れなくなり、わずか半年で就活から離脱しました。その後はフリマアプリのメルカリでの物品販売などの副業で糊塗を凌ぐ日々を過ごすようになりました。今でも体調不良は治っておらず、朝食が採れずに一日二食しか食べれないため体はやせていき、体力が回復していません。外出ができなくなり、人と合わなくなったため、ネット依存症になり、昼夜逆転の生活を送るようになったので、朝は起きられず、時間感覚がなくなっていきました。現在、私の貯金が2万円しかなく、生活保護を受けるか、就活を再開するかで悩んでいます。
 私のような状況にあるのは新自由主義的な観点でみれば、「自己責任」なのかもしれません。確かに、聖書には「だれでも持っている人は更に与えられて豊かになるが、持っていない人は持っているものまでも取り上げられる。」※1と云うそうです。私も大学時代はそのように考えていましたので、大変懐かしく感じております。
 安倍さん、あなたは平成24年に行われた第46回総選挙において「日本を、取り戻す。」を旗印に選挙で圧勝し、憲政史上最長となる7年8ヶ月と云う長期政権を築き上げました。安倍さん、あなたの時代はまさに、私の青春でした。
 今回、選挙応援演説中に凶弾に倒れると云うかたちでのご逝去はまことに遺憾です。ここに哀悼の意を示したいと思います。

 安倍さん、さようなら。
 安倍さん、お疲れさまでした。

 令和4年10月1日 自営業兼無職


※1マタイによる福音書25章29節

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