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【感想】Netflixドラマ『殺人者のパラドックス』

脚本

Netflix公式サイト記載のあらすじ↓

意図せず人を殺してしまったことをきっかけに、次々と殺人を繰り返すことになる一見平凡な青年。そんな彼を、勘の鋭い刑事が執拗(しつよう)に追い始める。

https://www.netflix.com/jp/title/81607354

第2話まではまさしくこの感じで進む。
完全に無計画かつ衝動的に殺人を犯してしまい、証拠隠滅工作もままならない主人公。
しかし、なぜか自分の預かり知らぬところで都合よく凶器は消え、それにより生じた新たな火種を消すためにまた偶発的に殺人を犯してしまう。
ダメすぎるw

本作の監督のイ・チャンヒが過去に撮った『死体が消えた夜』を彷彿とさせる幕開け。

ただ、今作はよりブラックコメディ色が濃い。

  1. 刑事の勘で完全に彼を疑う男の出現

  2. 疑われてあたふたする大学生

  3. 事態を打開しようとしてまた意図せず殺人

  4. 1〜3の繰り返し

ところが、この調子で毎話犠牲者が出る感じなのかな?と思っていたら第4話ぐらいで突如ギアチェンジ。
第5話以降は「え、そっち行くの!?」という予想外のストーリー展開。
何なら主人公(語り手)がエピソード単位で切り替わっていく。
もしかしたら「序盤の路線でもっと見たかった」という人もいて賛否は分かれるかもしれないが、自分は良い意味で裏切られた。
タイトルの「パラドックス」はそういう意味かと。
キャッチコピーの「ヒーローか 凶悪犯か」もそういう意味かと。

テーマ的には『DEATH NOTE/デスノート』が近いかもしれない。

もしくは脚本・武藤将吾×主演・堺雅人の連ドラ『ジョーカー 許されざる捜査官』

ジョーカーといえばクリストファー・ノーランの『ダークナイト』が描いたテーマも近い。

真の主人公は“あの人”だったという点でも通じるものがある。

映画には真似できないテレビドラマならではの魅力であるストーリー展開のツイストや人物像の掘り下げ。
2時間、長くても3時間の映画では主人公を切り替えるレベルの転換は難しいし(転換したとしても2時間ではそこから収束できない)一人ひとりのキャラクター描写に割ける時間にも物理的な限界がある。
本作の脚本はテレビドラマの醍醐味が詰まっていて良かった(漫画原作ものだけど)

個人的に最も印象に残ったのは第5話。
ギョンア(イム・セジュ)の物語は切なかったし、イ・タン(チェ・ウシク)が引き返す最後のチャンスだったのかもしれない。
ギョンアには幸せになってほしかったな…

演出

本作の演出を務めたのはイ・チャンヒ。
自分はこの人は編集、特にシーン間のトランジションの作家だと思う。

『死体が消えた夜』の感想でも同じことを書いていたw

何か強迫観念なり執着心でもあるのかと思うほどシーンの繋ぎ方へのこだわりが変態的(褒めてます)
同じ形や構図から時間や場所を飛んで別のシーンに繋ぐというのは王道の編集テクニックではあるわけだが、本作はとにかくそれを執拗にやってくる。
例えば

  • 現在パートで殴られるアクションから虐められていた学生時代の回想パートへ

  • ある人物が椅子に座ったアクションから別の場所にいる別の人物が椅子に座っているカットへ

こういったシームレスな編集の連打。
映像作品の醍醐味を感じられて自分は大好物でした。
もちろん「何かこれみよがしで鼻につく」と感じる人もいるだろうw

他にも街中で刑事が容疑者を追いかけるシーンのワンカット長回しのダイナミックな撮影や暗がりにネオンが輝く色彩設計など演出の語り所は多々あるのだけど今回はこの辺で。

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