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【雑記】フジ木10ドラマ『いちばんすきな花』第1話と元トモと二人組と2016年と

元トモ

ゆくえ(多部未華子)と赤田(仲野太賀)の“破局”を聞いて塾の生徒の希子(白鳥玉季)がつぶやいた「元トモ」というワード。

新鮮な響きをもって受け止められたようだが、実は一部の人間にとっては何年も前から慣れ親しんでいる言葉だったりする。
TBSラジオの『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』と『アフター6ジャンクション』内の人気投稿コーナーの名前がまさに『疎遠になった友達 ~元トモ~』

当初は「新学期の最初の頃って席が近い人と一緒に下校してたりしたけど、ほどなくして性格や趣味が合うクラスメイトが見つかって最初に親しかった人とは疎遠になっていくよね」程度の軽い着想からコーナーが立ち上がったそうだが、いざ投稿が集まったらヘビーでほろ苦い余韻を残すものばかり。
しかも今も疎遠な友達の話なので明快な結末が無い(再会した話ではないから)

コーナーBGMであるTOMOVSKYの『疎遠』も余韻の苦さを引き立てる。

2019年には書籍化。

今回の反応を見て、やはりこの「元トモ」という概念は普遍的なものだったんだなと思うこと然りである。

もちろんリスナー的には「いや、知名度!頑張れ宇多丸、頑張れタマフル、頑張れアトロク」という思いが無いわけではないのだがw

男女の友情

本作のテーマは「男女の友情」
(第1話の感じだともっと広い射程を捉えてそうにも思われるがそこは一旦置いておく)

ここでまたまたライムスター宇多丸の書籍を引用する。
(ちなみに脚本の生方美久が宇多丸のファンやリスナーだって情報は見つけられなかったし、蓋然性の観点からも単なる偶然と見るべきだろう)

書名は『ライムスター宇多丸の映画カウンセリング』
読者から寄せられた人生相談に「この映画を観ろ!」という形で答える雑誌連載をまとめた一冊。

本書の中にそのものズバリ「男女の友情って成り立たないんでしょうか?」というお悩み相談がある。

私はここで宇多丸が言っていることに同意(というか受け売り)なのだけど、友情と恋愛を二項対立で捉える問いの立て方がそもそも微妙なのではないか?というリフレーミングを宇多丸は試みている。
つまり「友達に性的な魅力を感じることがあってもそれは別に普通だろう」と。
また、同時に「夫婦とは友情に近い関係性」とも述べており、これも言われてみれば確かになという気がする。
(元の文章をまるっと載せるのは著作権の観点から控えます。短い文章のためほぼそのまま載せてしまうことになるので)

男女間の友情の成立に一貫して否定的な春木椿(松下洸平)が結婚目前で破談となったのはある意味で“必然”だったのかなとドラマを観ている最中に本書のことを思い浮かべていた。
(ただし現段階では自身の半生を「二人組にならせてもらえなかった」と語る椿が「恋人に選ばれない」のか「結婚相手に選ばれない」のかはまだ詳しくは描かれていない)

二人組

第1話でともするとやや執拗なほどに繰り返し出てきた「二人組」というモチーフ。
特に小中学校での「二人組を作って」というあるあるがクローズアップされる。

で、自分はこのくだりで朝井リョウの小説『何様』を思い出していた。

実写映画化もされた『何者』のスピンオフとなる短編集。

その中にこれまたズバリ『それでは二人組を作ってください』というエピソードがある。
主人公の小早川理香は「小さなころから、女の子とじょうずに二人組になれなかった」という人物。
『何者』ではいわゆる意識高い系として描かれていた彼女の苦悩が友人をルームシェアに誘う過程を通して描かれる。
周到に練り上げて準備したはずのお誘い作戦がお披露目する前に木っ端微塵に砕け散るクライマックスはさすが朝井リョウとしか言いようがないw

2016年

さて、ここまで書いてきた

  • 元トモ

  • ライムスター宇多丸の映画カウンセリング

  • 何様

は偶然にも3つとも2016年に世に放たれている。
ここで私が言いたいのは「ドラマ『いちばんすきな花』が扱ってる題材なんてとっくの昔からこすられてきたものだ」という文句ではなく「この非常に古典的な問いに対して生方美久はどうアプローチしてどんな答えを提示するのだろう?」というワクワクである。

この7年間で世界は大きく変わった。
「男女が2人でいるからといってそれは異性愛を前提としない」というのは既にいくつもの作品で語られてきている。

友達というテーマに対しても、ちょうど第1話が放送されている真裏でNHK夜ドラ『わたしの一番最悪なともだち』が見事な最終回を迎えていた。

坂元裕二を介して繋がる生方美久と兵藤るりの共鳴。

さて、そんなこの時代に『いちばんすきな花』は何を提示するのか?
どうやら「男女の友情」だけを描くわけではなさそうに思われるので何を見せてくれるのか非常に楽しみ。

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