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音楽レヴュー 2

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#韓国

素顔を隠さない強さ 『aespa LIVE TOUR 2023 ‘SYNK : HYPER LINE’ in JAPAN -Special Edition-』 2023.8.5~6

 2023年8月5~6日、aespaの東京ドーム公演に行ってきた。彼女たちのライヴを観るのは、今年4月におこなわれたさいたまスーパーアリーナ公演以来だ。そのときとツアータイトルは同じだが、東京ドーム公演は-Special Edition-と銘打たれている。どこがスペシャルなのか知りたいと思い、チケット販売開始と同時に応募し、運良くゲットできた。
 正直、ここ最近ライヴに対するハードルが上がってい

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言葉で楽しむK-POP ライオット・ガールの表情を帯びはじめた(G)I-DLE

言葉で楽しむK-POP ライオット・ガールの表情を帯びはじめた(G)I-DLE

 この一節は、韓国の5人組アイドルグループ、(G)I-DLEのデビュー曲“LATATA”(2018)に登場する。本稿を書くためにあらためて再生したら、リリース当時に聴いたときと印象は変わらなかった。多くの新人アイドルグループの歌がそうであるように、質の高いパフォーマンスでファンを魅了するという意志が詩的な言葉に置きかわっている。あるいは、誰かを夢中にさせたいと願う者を描いたラヴ・ソングとしても聴け

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Moon Sujin(문수진)「Lucky Charms!」

 韓国のポップ・ミュージックを追っている者は、ムン・スジンの名を耳にすることが多いだろう。EXO-SCやテイル(NCT)などさまざまなアーティストとコラボレーションを果たしてきたことからもわかるように、彼女の歌声は各方面から高く評価されている。自ら作詞作曲をこなす力もあり、愛聴してきたというアメリカのR&Bやヒップホップの要素が色濃い曲群は上質なトラックばかりだ。

 そんなムン・スジンにとってフ

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2NE1のコーチェラ再結成ライヴから考える“若さ”という呪縛

 2022年4月16日(現地時間)、アメリカのカリフォルニア州で開催されたコーチェラ・フェスティバルに、2NE1が降臨した。CL、ダラ、ミンジ、ボムの4人による2NE1は、2009年結成のK-POPグループだ。2016年11月に解散するまで数多くのヒットを飛ばし、女性にも愛されるガールクラッシュ系の象徴的存在である。

 公式の場で4人が2NE1としてパフォーマンスしたのは、2015年12月に香港

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The Volunteers(더 발룬티어스)『The Volunteers』



 韓国のアーティスト、ペク・イェリンは非常におもしろい。2012年にJYPからデビューしたK-POPユニット15&(フィフティーンアンド)の元メンバーとしても有名な彼女は、ソロになってからより才能を解放している。とりわけ、内省的な詩世界を描いたファースト・ソロ・アルバム『Every letter I sent you.』(2019)、ハウスやUKガラージといったダンス・ミュージックの要素を巧み

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ITZY (있지)「GUESS WHO」



 筆者からすると、韓国の5人組グループITZY(イッジ)のサウンドは、ハウス成分が多いように聞こえる。具体的に曲を挙げると、『Settle』(2013)期のディスクロージャーを想起させるデビュー曲“Dalla Dalla”(2019)、スティールパンに似た音色のシンセ・フレーズと4つ打ちを刻むヘヴィーなキックが際立つ“TING TING TING”(2020)などだ。これらの曲はポップ・ソング

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Susan(수잔)「EROS」



 少しハスキーかつ甘美な歌声で、さまざまな情感を流麗に紡いでいく。喜び、愛欲、快感といった陽なエモーションだけでなく、憎しみや悲しみなど陰なエモーションもストレートに表現する。その表現は艶やかな生々しさとも言える空気を醸し、リスナーの耳と心を拡張してくれる。

 そうした言葉を書かせたSusan(수잔)の最新EP「EROS」に出逢ったのは、今年1月のこと。彼女の存在はファースト・シングル「열매

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Youra(유라)「Gaussian」



 韓国のシンガーソングライターYoura(유라)を知ったのは、数多くの客演仕事がきっかけだった。これまでに彼女はKirin(기린)、Way Ched(웨이체드)、Leellamarz(릴러말즈)といったアーティストの曲に参加し、ドラマ『すべき就職はしないで出師表(하라는 취업은 안하고 출사표)』(2020)のサントラにも関わるなど、さまざまな課外活動をこなしている。韓国のポップ・ミュージック

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