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[素材編]生クリームって、なんだ?

もっとおいしいお菓子が作れるようになる生クリームにまつわるお話。
今回のテーマは、生クリーム
見習いパティシエ、真白けいと共に学んでいきましょう。

生クリームって、なんだ?

まずは定義をご紹介します。

生クリームとは、牛乳を遠心分離機にかけ、
乳脂肪分を高めた液体。

順を追って説明していきます。

まず、乳脂肪がなにかというと、簡単に言えば乳製品に含まれる油分です。

牛乳には乳脂肪は大体3.7%前後含まれています。

さらっと「含まれています。」と聞きましたが、牛乳だってほとんどを占めるのは、です。

水と油。本来は混じり合いません。

でも、牛乳や生クリームの中には天然の乳化剤がいまして

水と油の仲介役となって、乳脂肪が水分中に存在できるようにしています。

そこから生クリームにするには乳脂肪を集める必要がありますので、

遠心分離機にかけて強制的に乳脂肪を集め、加熱殺菌、冷却、熟成などを経て、パックに入っています。
乳脂肪率は35~50%ほど。

そして、泡立ての原理は、

泡立てによって乳化剤が蹴散らされ、生クリームの中にたくさん存在するようになった乳脂肪がくっついて泡立つ

ということらしい。
ちなみに油脂は温度上がると柔らかくなるでしょう?それでちゃんとした骨格が作らなくなってしまうので、冷やしながら泡立てた方が安定するみたいですよ。

ということで当たり前かもしれないけど、最初は動物性クリームしかなかったということですね。

しかし、今は植物性もございます。

ホイップクリームって、なんだ?

ホイップクリームとは、植物性油脂を使って動物性クリームに似せて作られたクリーム

呼びやすいからそうやって呼んでいるだけで、
別に堅い規則で決まってるわけじゃありません。

なぜホイップクリームと慣用的に呼んでいるのかというと、泡立てて使うために作られ、そして泡立てたあとダレにくい、からです。

つまり「生クリーム」を泡立てて使う際の特徴を出しつつデメリットを改善したわけです。
ではいかにして植物性クリームを作ってるかというと、
…ちょっと覚悟してくださいね。

大豆油菜種油パーム油ヤシ油などの植物油脂を、水素添加エステル交換分別などを施し、工業的に乳化剤安定剤香料着色料を混ぜ込み、均質化加熱殺菌冷却熟成を経て製品化される。

意味不明です。日本語でしょうか。
とにかく、めっちゃがんばってがんばって、どうにかこうにか動物性クリームの代用として使えるようにしたんです。
こんな色々大変なのに、なんでここまでするのって思ったでしょう?

…それは、安く済むからです。。

コスト、大事ですからね。
ただ味は、僕はなにも言いません。

こんな風にいろんなタイプが作れるようになってしまったので、紛らわしいという事で、分類するための規格があります!!
実は、普段みなさんも目にできます。

「クリーム」と「乳等を主要原料とする食品」

ではまず、お手元に生クリームのパックをご用意ください。

パックの後ろ側を見てください。

[名称]って項目ありますでしょ?
そこが「クリーム」って書いてある人!

名称「クリーム」
||
生乳から作られた純粋な生クリーム

ちょっと奮発しましたでしょ?笑

次に「乳等を主要原料とする食品」って書いてある人!

名称「乳等を主要原料とする食品」
||
クリームになんらか入ってます。

いや、悪いことだとは限りません。
もちろん乳業メーカーも悪い商品を販売してるはずはないですから。

「乳等を主要原料とする食品」の中でも、こっから大きく3種類ほどにカテゴライズされます。

(α)乳脂タイプ
乳化剤と安定剤の入った動物性クリーム

え、動物性?
そうです。これはまだ動物性です。
実はクリームってとてもデリケートなので、分離しにくくしたり保存性を高めたりしてフィジカルを強くしてあげてるんですね。

(β)植脂タイプ
乳化剤と安定剤の入った植物性クリーム

はい、これはさっき言ってた、がんばってがんばって動物性クリームに近づけたものです。

(γ)混脂タイプ
乳化剤と安定剤が入り、植物性脂肪と乳脂肪を混ぜたクリーム

そんなパターンもあります。

どうやらここまで見たら「乳等を主要原料とする食品」に乳化剤と安定剤は必ずはいっているようですね。
ただ、乳化剤と安定剤は一般的には味に影響はないと言われてるそうなんですが、僕は少し違う意見です。

保存性が高く安定しているということはどうなると思います?

実は、食べた時に少し溶けづらいんです。本当に誤差みたいな微妙な差です。
ストレスを与えずに素早く仕上げることができるのであれば、
無添加のクリームを使った方が、よりよい口溶けを追求できると言うわけです。
つまり職人の腕次第です。

生クリームの由来

最初に牛乳から生クリームができるって発見した人すごい、なんて思って少しだけ調べてみました。

ある日、常温放置していた牛乳の上層に少し濃度のある何かが集まっておりました。
それを見つけた者はそっとすくいあげ、
別の容器に移して一口食べてみました。
すると、コクがあって濃厚なミルクの風味がしました。

なるほど、こういうのはやっぱり偶然の産物なんですね。

それ以降、16世紀頃からレシピに書き残されるも、やはり自然分離したクリームをすくっていたため、大量に入手出来なかった

ふんふん。
ん?あれ、そういえば、ちょっと待ってください。この記事確認して来ます。

やっぱり、間違ってなかったようです。
16世紀頃と聞きましたが、カトリーヌ・ド・メディシス付きの者が、生クリームを泡立てて「ミルクの雪〜」ってやってたのって、1533年でした。

どんぴしゃり。時代がはまった。
さすが王族。当時貴重だったものですがちゃんと入手してます。

時代は下り、19世紀にセパレーター(又の名を遠心分離機)が発明され、脂肪分の高いクリームができるようになって製菓用に普及した

なんと19世紀!
約300年間もわざわざすくってたのはすごい努力ですね。
しかもそのあと製菓用に普及したということは、この記事で僕らが見ていたのは、
どんだけ泡立て大変だったんだ…!?
しかも道具はですからね…。
温度上げてミルクフォームみたいのを作ってたのかな。

そして今でも結構お値段するのに、買える値段まで大量生産できるようにしてくれた、遠心分離機に感謝ですね。

日本では…

1923年、製造開始。しかしまだ広まらない。
第二次世界大戦後冷蔵ケースの普及とともに、バタークリームからクレーム・シャンティイを使ったケーキに代替わりしていき、
今日に至る。

結構最近ですよね
僕はバタークリームケーキ時代を知らない世代ですが、生クリームを使ったケーキが幼い頃から食べられていたことに感謝ですね!

今ではいろんな種類が売っています。みなさんも使い分けてよりレベルアップしたお菓子作りをしてみてください!

ということで今回は以上です!

参考文献
中山弘典 木村万紀子、科学でわかるお菓子の「なぜ?」、柴田書店、2018年
河田昌子、お菓子「こつ」の科学、柴田書店、1998年
クリームとは?、明治の食育、株式会社明治、閲覧日2021-3-9、https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/know/lovable-milk/cream/

※この記事は上記の参考文献をもとにわかりやすくイメージを交えて執筆したものです。現在の科学での見解や、主観に基づく部分は細かいニュアンスが異なっている場合があります。また、新たな事実を勉強し次第追記・編集する場合があります。ご了承ください。

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