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自分の価値を見つける場所

好きなことは趣味でいい。これは大人の発想だと思います。
頑張れない子は、好きなことがない子でしたよ。

今自分がハマっている、ブルーピリオドというマンガの中で、登場した言葉です

この言葉の背景を少しお話すると、ブルーピリオドは、高校生の主人公が自分の情熱を注げる事が見つからずテストや友達との人間関係など目の前に起きることを
ノルマのようにこなしていました。
ただ、そんな現実にモヤモヤを抱えて生活していたのですが、あるきっかけで
美術の世界と出会います。

美術になんの興味もなかった主人公が、絵を描くことが自分が好きだということに気づいしまうのです。

今まで自分よりも周りからの期待空気を読むことを優先していた主人公が初めて自分の情熱をそそげることに出会ってしまい、そこに葛藤を抱えます。

そんな中、進路選択を迫られる時が来ました。
主人公は、将来安定の保証されない美術の世界へ進むべきなのか、
一般大学に進学して安定の道を進むべきなのか葛藤します。

そして美術部の先生に冒頭の言葉をかけられるのです。

そこから東京芸術大学への受験を決意し、
美術の世界へ没頭していくといったストーリーです。

その先生は、好きな事に人生の一番大きなウエイトを置くことは普通のことだし、好きなことをする努力家は最強とも話していました。

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自分もその言葉にとても共感しました。




さて、そろそろ本題に入りたいのですが、今回は ”チーム” ということについて考えていきたいと思います。

冒頭の美術の先生の言葉には、チーム作りの大きなヒントが隠されていると思っています。



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チームスポーツとは?


バレーボールはチームスポーツです。
個人的に、チームスポーツの魅力は一人では成し遂げられない事でもチームを組めば成し遂げられるという所にあると思っています。

より高い成果を出すためには、チームワークが求められるというのは誰でも分かることだとおもいます。

ではチームワークとはなんなのか?
どうすればチームワークが良いチームが出来上がるのか?

これはコーチをしていて、技術指導とは別に考えないといけない重要なことだと思っています。

その中で自分の行き着いた答えは、それぞれのチームのメンバーが自分の個性を生かしていく居場所を見つけたときに最高のチームワークが発揮されるのではないか?というところでした。

ではどうすればチームメンバーが自分の個性に気づけるのか?
自分の居場所を見つけていけるのか?

掘り下げた考えをまとめていきたいと思います。



"人の価値"について

人の価値というのは計り知れない。

自分一人ではどこに自分の良さがどこにあるのか自分ではわからない。
自分一人では自分は見えないから。

でも、人は社会を作り、他の人と生活していく中で、自分の良さを見出だせる。
簡単に言ってしまえばそれが個性というものなのだろう。

個性は作るものではなく、誰しもが元々持っているものだと思っています。

誰よりもスパイクで点を取れる。
誰よりもきれい好き。
誰よりも他人の些細な変化に気づける。
誰よりもポジティブ。
誰よりも勉強ができる。
誰よりも声が大きい。

どんなことでも、その人の良さというものは必ずある。

なのに、自分の良さについて気づけている人は少ない。
自分は価値のある人間だと思えている人は少ない様に思います。
自分もその一人でした。

日本人はどうしても、足りない部分に目を向けてしまう傾向があると聞いたことがあります。短所を補おうと考えてしまいがちだと。

チームで活動していく中で集団としての秩序は守る必要があると思います。
ただそれを重視しすぎて、それぞれの個性を失う必要はないと思っています。

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それぞれの個性を活かして、自分にしかない価値を存分に発揮できる場所があればチームとして機能するように思う。

世間的な価値あるものが必ずしも価値のあるものではないのです。

試合に勝利するという点においては、スパイクを誰よりも決めれるという要素は価値が高いように見えるかもしれない。

でも、誰よりもきれい好きの人がいなければ体育館は汚くなってしまうかもしれない。汚い体育館で練習するよりもきれいな体育館で練習したほうが練習の質は高まるかもしれない。それが回り回って試合の勝利に貢献することもあるだろう。

そういう意味では、"スパイクが決めれる個性"と"きれい好き"という個性に優劣は無いのではないでしょうか。

こういう考えをチームのメンバーが持てれば自ずとお互いに感謝の気持ちを持つだろうし、チームとしてうまく機能していくのではないかと思っている。

そもそもきれい好きな人がいるから誰よりもスパイクを決めれる個性に気づけるのだと思います。逆も同じ。
他人との比較でしか自分の個性というのは浮き出てこない。

それに気づき互いを認めることができるチームが多様性を認めることができるチームだと思う。そこに協力が生まれる。


なにより長所に目を向けてそこを伸ばすことで短所を補うきっかけになることもある。

きれい好きだと認められ、チームに自分の役割ができ、チームに属する喜びを覚えた選手が以前より練習の取り組む姿勢が変わり、プレーが伸びることも考えられるだろう。

じゃあどうやってこういうチームを作ろうか?
考えている中で面白い理論に出会いました。



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役割分化理論


これは大学院時代にリーダーシップに関する講義があり、魅力的だと感じた理論です。英語の論文を何本も読んでリサーチさせられた地獄の講義でしたが、今でも役にたっている講義の一つです。これを学びたいと思えたから、大学院時代、練習終わりに、深夜まで大学の研究室にこもりリサーチできたと思っています。

簡単にこの理論の説明をすると、チームのリーダーは一人でなくても良い。
むしろ複数のリーダーを作りリーダーシップを役割分担することで
よりチームワークを高めようという理論です。

この理論では、リーダーには大きく4つの役割があると言われています。

①課題リーダー
試合中や練習中においてチームの課題達成のためにコート内でリーダーシップを発揮するリーダー

②動機づけリーダー
試合中や練習中においてチームの動機づけを高めるためにコート内でリーダーシップを発揮するリーダー

③社会リーダー
試合中や練習中以外でチーム内の人間関係の調節などコート外でリーダーシップを発揮するリーダー

④外部リーダー
試合中や練習中以外でチーム外の人とつながりについてリーダーシップを発揮するリーダー



この4つの役割は複数人で役割分担できる。
それにより、リーダーシップがチームの隅々にまで行き渡らせることができるとされています。

それによって得られる効果として、


1、チームの一員であるという自覚が高まる

2、目標を達成しようという気持ちが強いチームになる

というものが挙げられています。

またこの理論を研究した論文には、全体の43.6%のキャプテンはこの4つの役割りの内一つの役割も果たせていないという報告もされています。

いろんなチームを見ていると、コーチがキャプテンの役割をしてしまっている
チームをよく目にします。

これの弊害についてもこの論文では述べられていました。
コーチのリーダーシップではない、選手達自身のリーダーシップは集合的効力感に影響を及ぼす。

集合的効力感とは、
「あるレベルに到達するため 必要な一連の行動を体系化し,実行する統合的な能力 に関する集団で共有された信念」(Bandura, 1997, p. 477)


難しい言葉なので簡単に表現すると、
目標を達成するために自分達の到達したいレベルまで、どうすれば到達できるか?この答えをチーム内で共有し、自分たちで実行していく力のことを言います。

これは、自信というものとは違い、外的要因(例えば相手チーム)の影響を受けず、自分たちの課題に専念できるため、よりパフォーマンスに影響を与えるとされています。

この集合的効力感が高ければ、自分たちの目標にたどり着くため、チームのメンバー、1人ひとりがより生産的にどういう行動をすればいいのか理解し、実行していけるのです。

その力は選手間のリーダーシップでしか高めていけないと言われています。
コーチがあれこれ指示していては、この力は高まらないのです。

ではコーチは手放しに見守ることしかできないのでしょうか?

それは違います。

"放任""任せる"ことは違うのです。

この研究では、コーチは自身のリーダーシップの質の向上と、
選手のリーダーシップを育成する必要があると結論づけられていました。

コーチのリーダーシップの質は、選手達の目標を達成する自信に影響を及ぼすとされています。選手が優秀な指導者だと感じることにより、選手は目的を達成できる自信が高まります。

ここでのコーチのリーダーシップの質というのはさまざまだと思いますが、プレーの技術指導、選手達への課題設定、選手を鼓舞する姿勢、選手から尊敬を集める振る舞いや言動。などコーチのスタイルによって様々だと思います。

もう一つ、選手のリーダーシップを育成するために、コーチが環境を作ってあげることが重要です。
それぞれ選手の適正を見極め、キャプテン以外の選手をリーダーに特定することは有効な方法です。そして、それぞれのリーダーの指導に時間をかけていきます。

そうすることで、より効率的にチームのリーダーシップの質を高める事が可能です。

コーチのリーダーシップよりも選手のリーダーシップの育成に時間を費やすことがよりよいチーム作りに必要なことだとされていました。

だからこそ、環境を作るという観点から、選手の個性というのを見極めてあげること。チームの勝利のために、それぞれの長所を発揮できる場所を作ってあげることがコーチにできることだと知りました。




最初に述べたブルー・ピリオドに登場する美術の先生の言葉からも自分が思うことですが、

自分が何が好きなのか?
何が得意なのか?
自分にどういう価値があるのか?

これはチームとして目標に向かって活動することでより見つけやすくなるおではないかと思っています。

自分の価値に気づけた人は強い。
案外自分の価値に気づいている人は少ないのです。

これから変化の激しい社会を生き抜く創造力をもった人を育てるためには必ず必要なことだと思っています。

自分の価値に気づけるという事は、バレーボールを辞めた後、社会の中で働くようになった時大きな武器になると思っています。

その武器は、チームでなにかの目的に向かって活動していく中で、見つけやすくなるものだと感じています。だからこそ主体性が必要なのです。

自分からやりたいと思えない事をやっていても、武器は見つかりません。
選手それぞれが自分の武器を見つけることができる環境を作ることこそがコーチがチームワークを育んでいく上で一番重要なことなのではないかと思っています。

自分の武器を見つけられたメンバーで構成されたチームになることが勝利への近道だと思っています。

全員が同じ色をしている、仮面ライダーでいう"ショッカー"ではなく、

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"ゴレンジャー"のようなそれぞれの色を持ったチームにしたいと思っています。

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競技を終えた後にその選手に満足感以外の何を残せるか?何を掴んでもらうか?

これを目指すうえで大切にしていきたいビジョンだと思っています。








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