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モリマガジンvol.4 村上春樹を書く

 <目次>
・映画「ショート・カッツ」から
・映画「ファーゴ」へ 
・文学の道祖神に連れられて

 表紙絵: ダサワミイロウ


映画「ショート・カッツ」から

文: 森のマスター

ぼくが映画にはまっていたころ、自分の中に研究テーマがあった、面白い映画とは?、本を読んだり映画を見たり、出た答えは、面白い映画とは、1つの壮大な物語ではなく、起承転結でもなく、その逆でもなく、小さな小さな物語がたくさんあって、それらが1つのテーマ、1つのキーワードで繋がっている、それぞれの話はバラバラしてるけど結局みんな繋がっている、社会の中で、もっと深いとこで、そこにたどりついた、これってまさにわれわれのことだなあ、そう思った、そんな映画を見つけた

ロバート・アルトマン監督、ショートカッツ、レイモンド・カーヴァーのいくつかの短編と1つの叙情詩からなる総勢25人の物語、とっても面白かった、楽しかった、でもそれだけではなかった、原作も面白いのではと、レイモンド・カーヴァーの短編を読んだ、訳者は村上春樹、あっ、知ってる知ってる、村上作品も読んでみようか、それが出会いだったかなあ、小説「ノルウェーの森」を読んだ、ノルウェーの森というビートルズの静かな名曲がある、歌詞は浮気の隠喩表現だとも言われている、小説ではキーワードがいくつかの逸話をつなぎ、うごめき合う、そう感じた、面白い映画とは、面白い物語でもある、小説「ノルウェーの森」は世界中で大ヒットした、面白いものにはわけある、売れるものにはわけがある、そういう思考がいつもぼくの根底にある


映画「ファーゴ」へ

文: 森のマスター 

村上作品の面白さは短編にあり、そう思ったぼくは、当時短編を読みあさった、文庫本も出てたけどお気に入りは、外国向けに出した短編選書、黄色とピンクの表紙が好きだった、文庫本というとカジュアルな感じだけど、選書は少し聖なる雰囲気が漂っていて好きだった、短編はいろんな物語があったけど、どれも面白かった、世界観は様々だった、読み終わった後の余韻がよかった、なんで面白いんだろう?、自分の探求スイッチがオンになった  

村上春樹語録を集める、村上さん曰く、人には深いとこに共通無意識がある、ぼくはそこのまだ描かれていないとこを書いている、なるほど、描いていないとこってどこなんだろ?、さらにアンテナが伸びた、共通無意識で一般的に、社会的に、認知されているとこ、たとえば、人は心身共に疲れがたまると癒されたいと思う、そんな時、多くの人は自然の中に入ったり、自然の恵みを求めたりする、これがよくある集合無意識だ、だけども全く違った方法で癒される人もいる、社会的にはタブーとされている方法で、社会的には違法とされている方法で、納屋を焼く、村上さんの短編作品がある、放火魔の話だ、放火魔がなぜ放火魔なのかは分からない、少しホラーな感じと、神秘的な空気感と、主人公の日常が合わさっている感がすごく好きだ、村上さんの1番好きな短編作品だ、共通無意識、誰も描いていない世界

ある日突然、コーエン兄弟監督の映画、ファーゴが観たくなった、アカデミー賞を取った作品だ、1回目観た時はただただ面白いと思った、スティーブ・ブシェミの演技はキレキレだった、物語は保険金詐欺の実話に基づいた話だが、観ていると、別の登場人物が気になりだした、殺人鬼のゲアだ、ラストシーン、捕まったゲアは問われる、どうしてちょっとばかりのお金のために人を殺したのか?、ゲアは遠くを見つめたまま、完、お金ではない、そう思った、その瞬間、この映画面白い!、と思った、みんなに共通してるけどまだ描かれていない世界、みんなの心の奥底に眠るけどまだ気づかれていない場所、ぼくはそこが描かれている作品が好きだ




文学の道祖神に連れられて 

文: ダサワミイロウ

『私たちは皆、多かれ少なかれ、卵なのです。
私たちはそれぞれ、壊れやすい殻の中に入った個性的でかけがえのない心を、持っているのです。
わたしもそうですし、皆さんもそうなのです。
そして、私たちは皆、程度の差こそあれ、高く、堅固な壁に直面しています。』
「卵と壁」村上春樹氏
エルサルム賞・スピーチよりの抜粋

この村上春樹氏のエルサレム賞のスピーチが、ずっとココロに残っており、ある機会をいただいて、一枚の絵をかいた。
地球を、卵そのものに見通したつもりで、そのときの気持ちを紙に落とした。
ハルキストとは到底言えないけれど、『アフターダーク』などを、徹夜しながら読んだ記憶がある。脆さの中に、一筋とおった光のような道しるべを辿る感覚が、いつもその風景にあり、あの崩壊になり切らぬ学びみたいな余韻がいつも頭をかすめるのだ。
この湿原の上を月夜にあるく情景を想いながら、それは小説のノクターンだと捉える心地。
お塩だけでなく、胡椒をあわせるとピリッとして旨くなる芳香に似て、いつも読書の時間を一段とおいしくしてくれる。
夜に着想を得ながら、さつま芋のチップスを手揚げしてこの塩コショウで食べていると、そこにあらわれるふしぎでエキゾチックな浜辺はフィジーの海岸。
少しの郷愁を携えている懐には、島崎藤村や室生犀星の詩集があり、ただ連綿とつながり合う日本の文学を歴史的に受け取れる日々を、このハルキストのみる世界を通じて垣間見れる気がする、路傍にはまだ道祖神の陰に小豆洗いが手招いている田舎道にぼんやりとした灯りを点しながら。





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