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バーンスタイン、北条正子、ジャンヌ、それから石田珈琲

なんだか朝からやる気がでない。
疲れたなあと思って、とりあえず散歩に出かけた。

外は、春風が強く吹いていて、空も晴れたり曇ったりで忙しい日だ。
それにしても札幌も随分と暖かくなった。

近所に古本屋がある。
散歩しているうちにその近くまでに来たので、寄ろうか寄るまいか迷いながらも、僕の足はお店の方へ向かっていった。
店先にある野ざらしにされている100円コーナの棚に目が止まる。

「レナード・バーンスタイン ジョーン・パイザー著」

ほぼ新品だ。

現在は絶版になっている本で、定価2400円、それなのにこの店では100円。

僕がこよなく愛する指揮者、レナード・バーンスタインと、こんなところでこんな値段で出会えるなんて感激だ。

帯には

「どこまでが神話でどこまでが事実か!
比類なき才能と限りを知らぬ情熱、
自ら神になろうとするかのごとき天才音楽家に生涯つきまとった分裂の苦悩」

と書かれている。

装丁にあるバーンスタインの写真が「マスダくん頑張っているね」といっているように思えて癒される。

レナード・バーンスタインは「ウエストサイド物語」を作った作曲家でもあり、
当時カラヤンと肩を並べた世界的指揮者でもある。

死の直前は、ここ札幌で、教育的音楽祭であるPMFを創設した。
毎年7月から8月にかけて、世界中からオーディションを勝ち抜いた学生たちと、ウィーンフィルやベルリンフィルの超一流プレイヤー達や、超有名な指揮者達が先生となって学生オーケストラを指導し、音楽祭が開催される。

なかでも、芸術の森で開催されるピクニックコンサートは、大自然の中でワインを飲みながら音楽に浸ることができて、僕が毎年楽しみにしている行事のひとつだ。
そんなわけで、僕はバーンスタインの本と、それを100円で買える喜びを抱えて店内に入る。

ざっと店内も見ようと、文庫本コーナーに行くと、何か鋭い視線を感じる本に出会った。
本好きならわかると思うが、本からの視線、本に呼ばれるなどの体験をすることがよくある。

ふと見ると背表紙に『北条政子』永井路子著とある。
手に取ってみると帯にはこう綴られていた。

「NHK大河ドラマ(昭和54年度)草燃える原作
頼朝に恋し、その妻となり、鎌倉幕府と共に生きた北条政子
歴史の激流の中に刻んだ女の人生の哀歓を描く、感動の人間ドラマ!」

ああ、なんと、北条政子さんまで僕を励ましに来てくれているのかと、勝手に妄想し、バーンスタインの本の上に重ねる。
2冊とも読みあとがなく新古品という感じだったので嬉しい。

新書のコーナーへと足を向けた。
「ジャンヌ・ダルク」の文字に目が止まる。そこでは、ジャンヌさんには、舛田さん頑張れというはげましだけ頂いて、今日は新書を読む気がしないのでスルーした。

話題の本コーナーでは、「祝!芥川賞受賞」のピンクの帯が目に飛び込んでくる。
村田沙耶香さんのデビュー作『授乳』だ。彼女が書いた「コンビニ人間」が面白かったのでおまけで購入。

レジに向かう途中に少量の漫画コーナーがあった。
忘れてはいけない、漫画もチェックしなければとざっとチェックするとその中に、機動戦士ガンダムで有名な安彦良和名前があった。
タイトルには「ジャンヌ」とある。
またここでもジャンヌ・ダルクに出会う。
これは購入しよう。

4冊を500円で買い、それを持って古本屋近くにある石田珈琲店へ行った。

地下鉄、北18条駅から200メートルくらい、古民家を改装した店内は、カフェというより「喫茶」が似合う落ち着いた雰囲気だ。

ここに来ると、実家の居間で、よく晴れた日の午後、珈琲を飲みながら本を読んでいた頃のことを思い出す。

いつもここで注文する石田骨喜(いしだこーぴー)は、甘さがあって苦味もあり、とても深い味、一口飲むたびに時間がゆっくり流れる。

そこで、先ほど買った本をパラパラとめくっているうちに、あっという間に数時間が過ぎていた。

夕方になる頃にはとても元気になっていた。


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