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【美術展2024#07】豊嶋康子 発生法─天地左右の裏表@東京都現代美術館

会期:2023年12月9日(土)〜2024年3月10日(日)

豊嶋康子(1967-)は、1990年より30年以上にわたって、私たちを取り巻くさまざまな制度や価値観、約束事に対して「私」の視点から独自の仕方で対峙し続けてきた作家です。物や道具の仕組み、学校教育、経済活動から日常の様々な行為まで、私たちに避けがたく内面化、自動化されてきた思考や行為の枠組みやルールを、自身の感じる違和感や関心を梃(てこ)として独自の仕方で読み替え、捉え返すことで、人の思考の型の形成、社会と自己の成り立ちの在り様を問うてきました。

豊嶋の制作は、1990年の《エンドレス・ソロバン》や《鉛筆》など、物の使用法や構造に従い、守りつつ攻めるといった方法で別様に展開、その機能を宙吊りにする作品に始まります。90年代後半からは、「表現」の領域を広く考察し、銀行での口座の開設や株式の購入、生命保険への加入といった社会・経済活動そのものを素材として用いて、特定のシステムの全体を「私」の一点から逆照射するような《口座開設》《ミニ投資》などを発表しました。2005年の《色調補正1》では、一般的に共有される色の体系を「私」の設定のもと、ひたすらに塗り替えることを試みています。作品それぞれの外観は幅広いものですが、それらはいずれも、いわゆる既成の仕組みや枠組み、順列などに対して、脈絡を守りつつ「私」を用いて別の見方を挿入し、本来の意味作用を逸脱させ、歪ませ、反転や空回りをさせることで、その構造と私たちの認識や体験の「発生」を捉えようとするものだといえるでしょう。〈ある順番に並べる〉(2014-2016)や〈隠蔽工作〉(2012)、一連の〈パネル〉(2013-2015)、〈地動説2020〉(2020)などは、こうした構造それ自体を抽象的に展開した作品と捉えることができそうです。順序や表/裏、支持体と図、天と地、作ると作らない…、こうした二項自体をずらし、重ね、また反転させ続け、複数の見方が現れる作品群が生み出されています。

東京都現代美術館



自らの全てをさらけ出しながら、小学生が考えるダジャレのような(だが誰も実行しないような)発想を執拗に繰り返して、やり切ってしまった異様な空気感が会場を埋め尽くす。

ルールや制度を問うとのことだが、なんだか壮大な自画像のようにも見えた。

執拗に口座開設を繰り返す。
今の時代はもうこんなことできないだろうな。
だけどこの人ならやっぱりやってしまうのだろう。

執拗に賞状を並べる

パネルを木版画のように彫る。
他の作品に比べて人為的な作業が入っている分多少温度が感じられた。


コンセプチュアル系作家は静かな狂気を感じる。

その昔(25年前)ここ東京都現代美術館で「ひそやかなラディカリズム」と題した企画展(MOTアニュアル1999)があったがそんなタイトルを思い出した。
出品作家や作風は全く違ったが豊嶋氏とは同年代の(当時若手の)人たちだったので、この年代の方々は世代的にそんな時代の空気感を孕んでいるのだろうか。


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