狂気の音世界のグルーヴを体感せよ。Miles Davis「On the Corner」
いつもロックのアルバムばかり取り上げて記事を書いているから、たまにはjazzのアルバムも取り上げてみよう、ということでジャズの巨匠の一人であるマイルス・デイヴィスから1枚。
高校時代、マイルス・デイヴィスのアルバム20枚組BOXセットを買って聴いていた。
もう配信サービスとかあるから20枚組BOXセットとかあまり需要ないのかな、私が聴いていたBOXはもう廃盤になってしまったようだ。20枚組で6000円ぐらいだったはず。安いだけあって、紙ジャケに直で裸ディスク入ってるだけの仕様だったけど、聴く分には全く問題なかった。
その20枚BOXのなかでも、一番衝撃を受けたマイルスのアルバムが「On The Corner」だ。
(画・緑色三号)
初めて聴いた時は正直訳が分からなかった。「これ、何……???」って感じになったと思う。
普通の人が「ジャズ」と聞いて思い浮かべる音楽とはひどくかけ離れている。
再生ボタンを押してすぐ、なんかチャカポコチャカポコいってるのだ。
このアルバム、「ジャズファンク」として評されることが多いらしい。確かに、ジャズよりもファンク的ではある。
しかし、普通のファンクより明らかに不穏な音。深夜のラジオからこのアルバムの曲聞こえてきたら怖くて寝られなくなる自信がある。
序盤は一応4曲という扱いになっているのだが、ほぼシームレスで進行していくのでタイトルを小分けにしている意味が分からない。怖い。
(この作品について、ジャズに詳しい知人は「アルバム全体を一曲として考えた方がいい」というようなことを言っていた。なるほど、そういう見方が正しそうだ。)
そんないろいろと訳の分からないアルバムなのだが。
これがハマると最高に気持ちいい~~~~~~!
聴いているうちに、わけのわからないサウンドの中で展開される唯一無二のグルーヴ感に打ちのめされてしまう。
そう、独特のグルーヴ感がこの作品の要だ。
実家のリビングにあるコンポでこれを流したら、私の父親は「酒を飲みまくった状態で聴いたら最高な気がする」というようなことを言っていた。
やったことないけど、たぶん最高だと思う。私がそう思う理由は、このアルバムの音世界から「酩酊状態」のような印象を受けるからだ。
独特のグルーヴ感から感じられる気持ちよさが、あの酔っ払ったときの気持ちよさと似ているのかもしれない。
そういうわけで、「On the Corner」が私のイチオシアルバム。
◇
マイルス・デイヴィス全体の話もしておこうかな。
私が20枚聴いて思ったことは、「時代が進むにつれてよくわからん!」
マイルスってデビューしたばかりの頃は結構耳なじみのいいジャズをやってるんだけど、どんどん前衛的になっていく。なかなかアグレッシブな方なんですよね。全然保守的じゃない。
後期の作品は一曲が長いのもあって結構聴くと疲れるし、良さがわかるまで時間がかかる。「Bitches Brew」とか、未だに良さがよくわからない……。
前衛的なものの中では「In A Silent Way」が比較的聴きやすい印象なので、最初はそちらを聴いてみるとよいかも。
名盤と評価されることが多い「Kind of Blue」とかあのへんのモードジャズの感じ、聴きやすいがちょっと定番になりすぎて個人的には面白みが薄い。
そう考えるとこの「On The Corner」の気狂ってる感じが、ロック的刺激を求める自分にはちょうどいいのかも。
ついでに、ジャケットのけばけばしさも良い!!!!!
機会があったら聴いてみてネ。
★この記事は、私が個人ブログに載せていた記事を加筆・修正したものです。
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