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「神」が海外を面倒くさがるわけ

そのカリスマ性から、信者からは「神」と呼ばれるYoutuber。

またの名を、しなびた松坂桃李。あるいは、実写版古美門研介(かの名作ドラマ、古沢良太脚本『リーガル・ハイ』の主人公。動画参照)←これは私が勝手に命名しただけだが。「ああいえば上祐」も真っ青な口達者、スーツさんをご存知だろうか。

彼は相当な鉄っちゃんで、メインチャンネル『スーツ 交通』には主に鉄道の旅をあげ、他にも『スーツ 旅行』『スーツ 背広』チャンネルを持つ。3チャンネル合計48万人に迫る登録者を誇る、交通系No.1Youtuberである。

人気シリーズ「最長往復切符の旅」をはじめ、まめに寝台、特急、新幹線などに乗りまくる。時には「シベリア鉄道」「オリエント急行」といった海外遠征もこなす。大学の授業が終わってからひょいと熱海に日帰りしたりと、なかなかのパワーと行動力をもつ。

特筆すべきは彼のあのしゃべり。そのまま落語家になれそうな流暢さ、しかも若いくせにどこか昭和の正統派アナウンサーを思わせる言葉づかい。その頭の回転の速さとマシンガントーク、ぜひいつの日か古美門研介と口頭対決していただきたいものである(笑)。

おっと、古美門研介愛(笑)がゆえに前振りが長くなった。そろそろ本題に入ろう。

さて、煽られても、アンチにいろいろ言われても、いつも強気なスーツさんなのだが、珍しく弱音を吐いている動画がある。

「海外旅行は嫌い」だそうだ。あの「神」ともあろうお方が「冒険はいやだ」とおっしゃる。その理由は:

海外はとにかく面倒くさい・調べなきゃいけないこと理解しなきゃいけないことが多すぎる・予約も面倒・レストランメニューが英語というだけで萎える・この若さだが冒険心が無くなってきた・井戸の中の蛙、大海を知らずでもいい・国内旅行は習慣慣習が全てわかっているので、庭のようなもんで知ったかぶりが出来るから楽しい・海外旅行は本気だす・団体旅行素晴らしい・異なる文化を楽しむのは自分には無理・治安を気にしながら、外敵からの攻撃の可能性に身を置いてまで見たいものはない

あらら、20代前半の若者にしてはずいぶんと老成感がある。スーツさん、人生にいろいろ詰め込み過ぎて少しお疲れなのでは…と思いつつ、彼のボヤキのなかでわかり過ぎるほどわかることがひとつ。それは「言葉」に関してである。

✔自分の抜群の日本語能力を発揮できない
✔普段ぺらぺら話せるのに意志疎通が不便すぎ  
✔日本語ならできることが英語では出来ないことが残念

当然だろう。彼ほど日本語を流暢に操り、金儲け以外にもその恩恵をフルに受けているような人間が思うようにしゃべることができないのは、相当な苦痛に違いない。

この種のフラストレーションは、まさに私の日常の一部でもある。
たいしてしゃべりの上手くない私だって、言いたいことがスラスラ言えないフラストレーションはいまだにある。ましてや「言葉の魔術師」スーツさんのフラストレーションたるや、いかばかりであろう。

この動画を見ながら「異文化に暮らす快適度/疲労度」にあらためて思いをはせる。それは、各人の性格や能力(器)、ライフスタイルにもよるし、人生のステージにもよっても変化する。

スーツさんのように、異文化を面倒くさいと思う人がいれば、もっと広い世界を見たいと切望する人もいる。海外ノマドへの憧れもいまだに根強い。

適応障害のため、数ヶ月もしないうちに泣く泣く日本に帰国する人がいる反面、短期間の間に見事にコミュニティーに溶け込む人もいる。

異国に暮らしても、主に日本人とつるみ、日本食を食べ、日本にいるのとそう変わらない暮らしをする人がいれば、日本語禁止を自分に課し、現地人と交わろうと積極的に動く人もいる。

子供を持つ前は社会と関わることなく疎外感を感じていたが、子供を通じて周りと馴染むことができ、やっと異文化での生活を楽しめるようになったという人もいる。

最初は何事も順調にいったものの、色々な要因が重なり10年20年経ってから大きなつまずきを経験する人がいれば、始めの数年は居心地が悪くても、時間とともに地域社会に根を張れる人がいる。

そして、この地に暮らして25年の自分は。

家では英語、業務も英語、面倒くさい諸手続きも(当たり前だが)英語、同僚とも英語、子供の学校との連絡も英語、ご近所さんとも英語、医療も英語、買い物も英語、TVも英語、トラブル解決も英語… 

長年に渡って英語優先、異文化優先の生活を送った結果、知らず知らずのうちに頑張りすぎたのか、自分の器以上のことをやろうとしたからなのか、そちらの方向に針が振り切れてしまったようだ。

うつをきっかけに強烈な揺り返しにあい、現在は、英語の比率をぐっと下げ、ひたすら日本語に安らぎ(と活路)を求めている、という状態。

スーツさんの「言葉」に関するぼやきが妙に印象に残ったのは、今の自分の「疲労度」をまるで代弁してくれるかのようだったからだろう。

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