見出し画像

価格決定力を上げるとビジネスが上を向く

価格決定力とは、商品やサービスの価格を優位に・戦略的に決めることのできる力のことです。

逆に言えば、価格決定力が無い状態とは、自分たちでは一切価格を決められないことを指します。例えば、競合企業に合わせるしかない、発注企業に言われるがままに応じるしか無い、など。

こうなってしまうと、できる限りコストを削減しつつ、安さだけを魅力に提案するくらいしかできることがありません。採算ギリギリの価格で販売して、利益も薄くなるので、なかなか賃金も上げられない。新しい技術や人材への投資も消極的になるので、その状態を抜け出すための一手を打ち出すことも難しい。

こんなビジネスは誰も望んでいないので、価格決定力を上げていくことはあらゆる企業に通底する重要テーマです。

価格決定力のネガティブスパイラルとポジティブスパイラル

実は日本経済全体がこうした状態にあるとも言われていて、ハルモニアでは2021年にホワイトペーパーを公開しました。課題の全体像理解にはこちらも読んでもらえればと思います。

なぜ「日本は安い」のか 価格決定力向上のための調査レポート https://www.harmoniainc.jp/reports/pricing-power-2021/

価格決定力が高ければ、価格戦略だけでなく、事業戦略の幅がぐっと広がります。同じような事業からもより多くの利益が得られ、それを商品・サービス・人材などに再投資することで、また自社の強みが増して価格決定力を高めることができます。2022年の今、世界中で起きているインフレに際しても、ブレること無く戦略的な価格を維持することが可能になります。

価格決定力を上げる全体像

価格決定力は大きく2つの側面に分けることができます。

  1. 価値を高めて価格を優位につけられる状態を作る(バリューアップ)

  2. 戦略を定めて解像度高く価格を設定する(プライシング)

1.バリューアップ

価格を優位につけられる状態とは、どんな状態でしょうか?

わかりやすい例が、独占です。多くの人が欲しがる商品を、市場であなたの企業だけが提供しているとき。あなたは顧客がいなくならない範囲で、かなり自由に価格を設定することができます。

自社に圧倒的なブランド力がある場合も、価格を優位に設定できます。顧客は多少価格が高くても、競合からではなく、あなたの企業の商品を買いたいと望みます。

つまり、必要なのは差別化です。
安さ以外の価値を高め、顧客から見てどうしてもあなたから商品を買いたい、買わざるを得ない、という状態や関係性を作ることができれば価格決定力は上がります。

いわゆるマーケティングミックスの4Pから価格を除いた3つを中心に、以下のような観点に分けて考えていくことができます。

  • プロダクトで上げる

  • プレイス(売り場)で上げる

  • プロモーションで上げる

  • ブランディングで上げる

  • 顧客との関係性、ロイヤリティで上げる

プレイスで上げる、の例
同じ商品を取り扱っている店が複数あったとして、アクセスに大きな差があれば、多少価格が高くても近い店で買う動機が生まれます。アクセシビリティを上げることが、顧客への付加価値向上に繋がり、価格決定力を上げることに繋がります。

2.プライシング

戦略的な価格設定・解像度の高いプライシングとは、今まで「えいや」でつけていた価格を、検討のメッシュを細かくして、より緻密に行うということです。大きなナタからメスに持ち替えるイメージ。または、野生の勘から科学者の視点に切り替えて取り組む必要があります。

こちらについては書くべきことが本当に沢山あるのですが、ベーシックなところでは以下のようなテーマに整理できます。

  • 戦略

    • 独自の価格戦略を定めて上げる

    • 戦略を社内浸透させて上げる

    • 価値向上と価格戦略のループを繋げて上げる

  • 観点

    • 顧客を知って上げる

    • 顧客が得られる価値を知って上げる

    • 競合を知って上げる

    • ポートフォリオの相互関係を知って上げる

    • 頻度で上げる(≒ダイナミックプライシング)

    • セグメンテーション、パーソナライズで上げる

    • 地域差で上げる

  • 技法

    • データ分析で上げる

    • 仮説と検証を高速に繰り返して上げる

    • 組織を変えて上げる

    • 価格決定のワークフローを整えて上げる

    • デジタル化(アプリ、EC、電子値札など)で上げる

各テーマ1記事ずつ書けるようなボリュームになるので、それぞれの詳細は今後気長に書き続けていこうと思います。読んでくれる方の居る限り。

価格決定力を上げることは誰の仕事か?

ここまで見てきたように、価格決定力の向上はひとつの部署で完結するものではなく、組織横断的かつ長期的な取り組みとなります。事業の売上側とコスト側を俯瞰し、戦略を浸透させ、組織を動かし、ブランドと優位なポジションを確立していく営み。

事業のすべてを踏まえて価格を決める必要があり、また、価格は事業のすべてに影響します。

価格決定は自然と、経営者(CEO)や事業責任者の仕事になるはずです。
とはいえCEOの仕事は広いので、価格決定力への注目は続けつつ、管掌する部門・責任者を立てていくことになるでしょう。その際には、CMO(マーケティング)やCSO(ストラテジー)が専門領域が近く、向いていることが多い印象です。

更に踏み込める場合には、CPO(チーフ・プライシング・オフィサー)を立て、広義の価格決定力向上をコミットできる体制が理想的です。

ビジネスの”量”を重視する時代には、価格決定力をそこまで考える必要はありませんでした。極論すれば、価格はとにかく安くして、規模を取れれば良かった。コスト削減と、販売促進という意味のマーケティングが重要なテーマでした。

ビジネスの”質”を上げるならば、価格決定力というテーマをど真ん中において、向き合うことが出発点となります。顧客への価値を上げて、それを価格に転嫁して収益力を高め、人材に還元し、新たな価値創出に再投資する。

この上向きなサイクルを多くの企業や個人が実践できるように、自分も最前線で学びつつサポートを続けていきます。質問や相談があればいつでもご連絡ください。

この記事が参加している募集

マーケティングの仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?