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『彼女と彼女の猫』ダルは彼女にとっての“扉”だ

2016年に劇場公開された、新海誠原作の『彼女と彼女の猫』を観た。

猫のようになる彼女と扉の役割をする黒猫ダル

彼女が落ち込んで挫折しかけるシーンが2つある。転校したてで母親ともうまくいっていない小学生のころと、就活が思うように進んでいない現在だ。

小学生の彼女は一度ダルを捨てようとするが、人に見つかりそうになって捨てるのをあきらめる。

その帰り道に公園のブランコで出会ったのが、ルームシェア友達の知歌だ。

ダルに興味をもった知歌が彼女に声をかけたのだ。描かれてはいないがその後彼女と友達になり、現在ルームシェアするほど仲良くなったということなのだろう。

ダルが彼女に友達ができるきっかけを作ったのだ。

また、就活がうまくいかずにふさぎこむ彼女が映し出される。布団の中で丸くなる姿はまるで猫。

そんな彼女のもとに母親がおとずれる。彼女の家から無言の電話がきて、心配した母親がかけつけたのだ。

ダルが受話器をいじってたまたま発信したんだろうと話した後、いい雰囲気とはいえなかった彼女と母親があの日のように笑い合う。2人のギクシャクが少しほどけた瞬間だった。

現状がうまくいかない彼女が布団にくるまり「猫のようだ」とたとえられるなら、ダルは“扉”だ。

彼女と外の世界とつなぐ扉。「外=人とのかかわり」という意味で、小学生のころも現在も彼女の外との接点を作ったはダルだった。

ダルは彼女の守り神のようにも映る。だが、映画の冒頭で扉があくシーンが描かれることから、ダルは彼女を外の世界とまじわらせる扉のメタファーなんだろう。

不幸を呼ぶといわれている黒猫がこうやって彼女が前進するきっかけを作っているのが面白いし、やさしい。

そして、老衰もあり無力感すらただよっていたダルが彼女を外の世界とつなぐ役割を担っているのが、彼女に対するふかい愛情からくるものだと考えると心がじんわりする。

がんばって日々を送る彼女をダルの視点で目をほそめて見つめるような、やさしい作品だった。


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