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五年振りの一時帰国

今、私は日本に帰って来ている。実に五年振り、いや、もしかしたら六年振りかもしれない。コロナを経て、トロント⇔羽田直行便が飛ばなくなり、更にどうせだったら2~3週間は滞在したい、予算、季節などと色々考えているうちに時間が空いてしまった。三週間の滞在のうち、前半戦が終わったところ。横浜の実家に住まわせてもらっています。

今回の一時帰国のテーマ

別に毎回テーマを決めて壮大な旅をしている訳ではないのだが、個人的なミッション。今回、何となく「日本の良さ、再発見」というテーマで日々過ごしている。

カナダ、トロントに住み始め約10年。友人カップルが日本に引っ越したり、40手前になり周りで「老後は日本で過ごしたい」、更に私には子どもがいないが「子どもを産んでから、子どもと一緒に過ごす事で気付いた日本の良さ」みたいなのを盛んに聞くようになり、なるほどなぁ、日本はそんな良い国なのかぁ…と単純に日本を知ってみたい、みたいな思いです。

(いや、日本で生まれ育って10年弱しか海外生活なくて、そんな他人事な)みたいな思いを抱かれる方もいらっしゃるかもしれないのですが、例えばコンビニの自動精算レジなんかは、今回初めて利用しました。

しばらく帰っていないと、その昔の日本の記憶で止まっているということが良くも悪くもあり、新鮮な気持ちで日本を受け止められる、と言いますか、壮大ですよね。うふふ。

お断り

私のスタンスとしては、完璧な国なんて存在しない、という半ば諦めにも似たところにあります。ここから「ここがダメ、日本/カナダ」なんて言い出すかもしれませんが、別にカナダが理想郷だとは思っていません。しかし、もし、ここまで読んでくださり、何言ってんだこいつ、とお思いでしたら、ご自身の為にも読み進めるのを中止される事をお勧め致します。

私がカナダに住んでいる理由

私は国際結婚などの理由で渡加した訳ではなく、一年間の短期語学留学(ワーホリ)を経て、なんかカナダ好きかも、永住権取ってこの国で暮らそうかな、というノリで永住権を取りました。

初めのうちは、カナダラブ♡でしたが、二年目くらいで既に「カナダという国が好きかどうかは分からんが、もう永住権を取る為の手続き及び工程を初めてしまったからとりあえず突っ走る」的な感じで生きていました。今は、もうカナダで過ごすことが日常になり、良いところも悪いところもあるよね、みたいな感じ。しかし、好きか嫌いかで言ったら、好きです。

そもそも、カナダへの永住を志した理由としては「人々がフレンドリー」「街中に緑が溢れている」「労働環境」「カナダの方が向いている」などがあります。この辺も10年経つと少し揺らいでいくもの。

例えば、私がフレンドリーだと思っていた人々、実にフレンドリーなんですが、例えば今は口パクでも英語で悪口言ってたりすると聞こえなくても何を言っているのか分かったりします。言い回し一つをとっても、当時は知らなかったけれど、裏の裏、というか京ことばの様に言葉の背後に隠れる本心を、生活していく中で文化や習慣と共に知っていきます。よく言われるのは「カナダ人は礼儀正しくフレンドリー」でも同時に「正直に言わないから意図が分かりづらい」みたいな一面もあるかと思います。あとオブラートに包み過ぎてクレームなのかも分からない、みたいな。

労働環境についても、保育士業界(私は日本でもカナダでも保育士として働いています)日本よりは良いが、世界と比べるとそうでもない、と言えます。

老後は日本勢

さて「老後は日本で暮らしたい」というのは、在外邦人から比較的よく聞かれる言葉。私はこれに反対派であります。単純に、急に老後に引っ越して適応出来るかな、という懸念。

例えば、今現在、日本は春で朝晩の冷え込み等は特にありませんが、部屋がなんとなくほんの少し肌寒い、と私は感じている。というものの、北国カナダの私の住んでいるトロントは寒いけれど部屋の中は南国かのように暖かい。私の部屋着は基本、キャミソールに短パン。そういう小さな違いが老体には堪えるのではないか、と思うのだ。(あ、でもトロントの冬の凍結した道に老後どう対応していくのか、っていう不安もある。あと住宅バブル中で家を買えないという根本的な悩みもある)

あと、エンターテイメントの違い。やっぱり、少し北米で過ごしていると心は北米人。「面白い」と思う価値観とか「正しい」と信じるものの違いなんか。例えば、日本のファッション雑誌をチラッと読んで、白人のスラっとしたモデルしか登場しないので、私は嫌悪感というか、すごく不信感というか、なんというか説明が難しいのだけど「トロントの友達にこれは見せられない」と思う。

なんかもう大分ネガティブな事を言い過ぎているだろうか。

日本に一週間滞在してみて思う事

さて、好きでカナダに移民した私の五年振りの日本。

真っ先に言えることは「美味しい」

日本の全てが、食べ物が全部が美味しい。トロントでも日本に旅した人達や、仕事などで少し住んでいた出会い同じ感想を告げられるが、私も同じ思い。もちろん、日本食で育ってきたという贔屓目もあるが、美味しくないものがない。

日本を旅行したトロントの人の中で聞かれる事の多くに「ゴミが落ちていなくて街が綺麗」「人々が丁寧で親切」「交通機関の正確さとその種類や路線の豊富さ」なんかがある。

清潔さ

ゴミが落ちていなくて街が綺麗、というのは本当にそう思う。トロントなんて、10メートル置きにゴミ箱が設置されている大通りでポイ捨てされたゴミが散乱してたりする。最近、トロント市内で新しい地下鉄が開通する予定なんだが(というよりもう10年くらい工事しているけれど一向に開通の兆しが見えない)その駅付近にゴミ箱がないのにベンチが大量に設置されてて悪い予感しかない。どうしてベンチを設置するならゴミ箱はペアであるはずなのに…デザイナーを呼んで来い、と言いたい。

そして、今回春で気持ちが良く、色んなところで一人ピクニックをしているが日本はゴミ箱が無い。ゴミ箱が異様に少ないのに(私の感覚では)、ゴミが散乱されていない。それは海外からの旅行者からもよく驚かれることである。「人生で初めてゴミを自分のバッグに入れたよ」みたいな事を言われたことある。日本すごい。

あと、それ繋がりだと、日本の小学校などでは生徒が自ら教室の掃除などをするのも絶賛される事があるが、私はそれには複雑な心境。確かに自ら掃除する事で汚さないで利用するという事に繋がる、掃除を幼き頃から習慣化するという強みばかりが取り上げられるが、お手洗いの掃除は子ども達の健康保健的に不安があるし、保育士が保育室を掃除したりする=本来の必要業務以外の労働/大抵時間外に残って掃除して帰ったりする事に繋がっているのでは、と思ったり。他国では、掃除やメンテナンスは保育士の業務外なので他の方が雇われ保育時間外に行われる事が多いと思う。

人々が親切

私のトロントの好きなところに「人々がフレンドリー」というものがある。バス停で知らない人同士長話、レストランやカフェなどでオーダーを取ってもらう前にちょっとした世間話、下の名前で呼び合い同僚の配偶者の名前なんかも割と知っている、みたいなのがトロントでのあるある。

これらを(別に日本でもそうじゃない?)って思う方もいるかもしれない。現に大阪出身の方とかは、トロントのそれについて何も感じないらしいし。私は横浜で生まれ育ったので、トロントのそれがいいな♡って思うのだけれど。あと、トロントはカナダの中の都会(東京)みたいな位置付けなので、国内の他の地域から引っ越して来た知人らは「地元に比べると、冷たい街」と口を揃えて言うのである。

さて、で、ここ数日日本で過ごしてみてどう思うか、というと「日本の人々、みんな優しい」と思う。ご高齢の方がレジで小銭を急いで仕舞おうとしていると、レジの方が「ゆっくりで大丈夫ですよ」と微笑みながら言う。電車内で空いている席に座った方が横の方のジャケットの裾を踏んでしまい「あ、すいません」と言い「あ、いいえ…」って会釈し合う。エレベーターに乗っていたら、走って来た方がいたので待ってあげたら「すみません~ありがとうございます~」って乗っていた全員にお辞儀をする。

などなど。

優しい。そして、ほど良い距離感。

例えばトロントだったらエレベーターに乗って来た時点で、誰か一人が「タイミング良かったね!今日はツイてるね!」とか言いそう。「ありがとうございます」って言われたら無言でお辞儀は絶対無くて「全然問題ないよ~ん」みたいに言う。そこの違いはあるが、そこは文化の違い。

でも、私が住んでいた10年前はこういう優しさに気付いていなかったように思う。忙しく働いていた労働者だったから、そういう優しい世界にいなかったのかもしれない。いま、私はただの旅行者で毎日呑気な時間に出掛けて行って通勤ラッシュなんかとは無縁だし。ストレスも無いし。そこは住んでみないと分からないけど、でも良かった。そういう日本の良さを知れて今回帰って来た甲斐があったな、とまで思う。

利便性

これはもう日本に勝る国は世界中どこにもないと思う。なんでもスピーディーで正確で、旅行者として最高に便利。でも労働者としてはそうは思わない。これらの利便性は、労働者の並々ならぬ努力や無償労働の元で成り立っていると知っているから。

便利さと労働者への搾取との天秤で良し悪しを捉えた時、私はそれが正解だとは思えない。私はそれに加担したくない、と思う。給料が上がらないまま物価上昇で、サービスはコスパだけが問われているイメージ。でも、外国からやって来ると、適切な価格でもっと販売していいのに、とちょっと思ってしまう。なんていうと、何も知らないくせに、って言われてしまいそう。はい、何も知りませんけどね。

街としての魅力

私はカナダという国が、好きなのだが、そもそもトロントという街が好きなのが大きい。国内旅行をあまりしたことなく、そこしか知らない、とも言える。

更に、日本においても、私は生まれは実は東京だけど、横浜で育ち、10年程働いて住んでいたのも横浜なので、日本という主語=横浜のことを指している。

トロントに降り立った時、私は「田舎…だな?」という感想を持った。街が小さくて、ダウンタウンを歩いて「ああ、これだけ?」みたいな思いで大変驚いた。今は、ミッドタウンという住宅街に住んでいることもあり、アパート住まいだが、なんというか道は広く、大きな木々があり、行き交う犬は大型犬がほとんどで、多頭飼いもよく見る。

それで、横浜の実家に戻って来て「家々がひしめき合っている」という感想を持った。先日、長野出身の友人と会い「長野の実家から都内に戻って来る時、だんだんキュウっと街が凝縮されているような、スペースが無くなって、心もキュウっとなる」と話していたのを聞き、ああ、なんか同じだな、って思った。多分、トロントって長野なんだろうな、って。

だから、どこで過ごすか、って国もすごく重要だともちろん思うけれど、街も大切だよな、って。

そういえば、冒頭で話した本帰国した友人はスノボが好きで、長野に拠点を置いている。

もし日本に帰って来たとして、両親や昔からの友人が多くいるので、住むとしたら横浜だとは思ってしまうけれど、もっとフラットな視点でどんな生活をしたいかで街を決めることをしたいな、と思った。

あとは、その子が言っていたけれど、国は別に関係なくて、誰とどんな老後を過ごしたいかのが大事じゃない?って言ってて、あーそこかーって。結局どこに住もうかなんて手段でしかなくて、誰とどんな生活をしたいかが生活なのか、と思ったり。

例えば、私、天気のいい日は外でピクニックだけ出来れば割ともう何でもいいんだろうな、って今回の旅でも思った。買い物とかも楽しいけれど、買い物は毎日出来ないけど、ピクニックは毎日出来るし。

トロントに帰ったらまた考えをまとめよ。今回、本帰国もあるか?って感じで一時帰国してるんだけれど、それについて母親と話したこともあったりで。



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