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もうドライブが終わる合図

あ、助手席左になってる。久しぶりに会って最初に気づいたことが君のクルマについてで私は自分を誇らしく感じた。狭い空間に二人、十年以上の付き合いでも一年ぶりに会うと、いつも通りとなんだか変な感じの中間で、結局なんだか変だった。

君は何も変わっていなかった。私も何も変わっていなかった。いや、正確には少しずつ、趣味や住む場所、仕事、髪型、些細な違いはあるけれど。でも根本的には何も変わっていないはずで、相変わらず無言の時間が多い。車中にひたすら流れるTWICEのライブ音源。韓ドラにハマってさ。そこからJYPに興味もって、TWICEのプロフェッショナルを感じて、ライブ当たったんだ。そんな意外とミーハーな部分も何も変わっていないのに、全てに疎い私は単語だけしか理解できず、へー、そうなんだ、すごいね、と底辺の返事をした。君はがっかりしただろうな。

一時間半都内をドライブして、することもなくて、私が好きな通りや東京タワーを二周して、いよいよ会話が尽きた。一年ぶりなのに話すことが何もない。何も出てこない。ずっと会いたかったとか、会えてうれしいとか、当たり前に言えたらいいのにな。そういう言葉の素を胃の奥の方から搾り出し、喉から空気に変換する瞬間にはもう蒸発寸前で、音になりそうな欠片もあったような気がするけどTWICEにかき消された。口からは何も出てこなくて、ごまかすように君が買ってくれたミルクティーを流しこむ。ドコモビルが近づいてくる。もうドライブが終わる合図。黙ってても可愛い時代はとっくに過ぎてることも分かってて、何もできない自分に苛立つ。

私が最後にできたのは子どもみたいなねだり方のハグで、顎をつかまれたキス、(それ私が好きなやつ)、少し触れ合った舌先、今なら言えそうなのに。でもなんて言えばよかったんだろう。まだ帰りたくないの。ホテル行きたい。抱いて?いや、ストレートすぎるよね。でも本音だった。私はずっと抱かれたい。君に抱かれたい。もう数年前の記憶をいつもビデオのように頭に再生してる。あんなに近くで耳元に流し込まれた吐息ももう忘れそう。君は今どんな風だろう。それも変わっていないのかな。変わっていたとして、それもなんか嫌だな、なんて。

クルマをおりて考える。ドライブ中にミルクティーはトイレが近くなる。日中暑かったのに夜は冷えるなんて、正真正銘春だね。春。また会えるのは一年後、それとももう会えない?この不確かさに、もうずっと、恋が終わらない。

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