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義父と夫の召し使い!~グレート・インディアン・キッチン

編集部のエイミーです。
「映画館で見る映画の良さを多くの人に伝えたい」
そんな思いで映画と映画館愛を語ります。

インド映画「グレート・インディアン・キッチン」(ジヨー・ベービ監督・脚本/100分)を見ました。

鑑賞館は「イオンシネマ広島西風新都」です。

イオンシネマ

舞台はインド南西部ケーララ州。中東育ちでモダンな生活様式になじんだ妻(ニミシャ・サジャヤン)は、お見合いで出会った夫(スラージ・ヴェニャーラムード)の住む由緒ある家に嫁いできました。朝から晩まで家事労働に従事する義母と一緒に、夫と義父の世話をする日々を過ごします。ほどなくして義母は嫁いだ娘の出産準備のため家を離れ、妻は一人で家事全般を受け持つことに。旧式のものを良しとする義父は、炊飯器ではなく釜で炊くご飯を好み、洗濯も手洗いを命じます。その上、外出するときは靴を、歯磨きのときは歯ブラシを持ってこさせます。そんな父を見て育った夫はもちろん、この生活に何の疑問も持ちません。旧家の広いお屋敷を妻は一人で黙々と掃除し、電化製品がほとんどない旧式の台所で夫と義父の料理を作ります。そんな息つく暇もない生活から逃れられるのは、1カ月に一度、生理が来る期間だけです。それは、女性が「けがれた存在」と見なされる数日間。家にも入れず、不衛生な離れの部屋で生理が終わるまで過ごさなければならないのでした。

冒頭、「Thank you science 科学よ、ありがとう」の文言が表示されます。映画を見終わったとき、「なるほど」と納得しました。スマホで音楽を楽しみ、SNS上で共感する動画をシェアする一方、裸足で歩いてガラスの破片を踏んだり、洗濯物を手で洗ったりする生活に違和感を覚えます。古いしきたりに従い、非効率で非科学的な日常をおくる一家。新しい考え方の妻が口答えをすると、「神よ、お許しください」と天を仰ぐ義父と夫。映画の舞台、ケーララ州は識字率が高く、女性の社会進出も進んでいて、決して後進的な地域ではないそうです。そんな地域ですら、このような日常が繰り広げられているという現実。どっぷりと浸かってしまっては見えない事柄も、俯瞰してみることで理解できることもあるでしょう。傍観者であり、観客でもある私たちが「何か」を感じることが、世界の変化につながるのかもしれません。もちろん科学が全てではありませんが、助けられる部分も多々あります。古くからの慣習だからといって、生理期間中に日も当たらないジメジメした部屋に閉じこめられるのは、あきらかに不衛生で体によくありません。科学の力を借りながら、文化的で快適な暮らしをおくれる人が増えることは、多くの命が救われることにつながるのではないでしょうか。
さて、黙々と家事をこなしていた妻は最終的にどうなったのでしょうか。インド映画らしい爽快な結末を迎えます。

(編集部・エイミー)

111チケット・グレート・インディアン・キッチン


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