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“ぴょこっ” とたくさんのポートが現れる「LUUP」のマップUI

4月中旬に入り、気温も20℃を超え、ようやく花粉も減ってきて、街歩きやサイクリングにちょうどいい季節になってきました。

さて今回の【勝手に分析!Good CX】は、電動アシスト自転車/電動キックボードのシェアサービス「LUUP」(ループ)のアプリにおけるマップのデザインについて分析していきます。


すぐ近くにポートがある印象のLUUP

LUUPというと、良くも悪くも話題になりがちな電動キックボードのイメージが強いですが、私の家の近くでは電動アシスト自転車に乗っている人も結構見かけます。

LUUPは他社と比べて少し値が張る場合が多いですが、それでもLUUPを使う理由の1つには「ポートが近いから」ということがあると思います。実際にLUUPのポートの密度は他社よりも高いですし、ブランドカラーである緑と白のデザインの車体は目立ちやすいので「家の近くにポートがある」と意識しやすいというのはあると思います。(後述のように、そのような戦略を取っているようです)

ただそれ以外に、アプリを開いた時の印象からも「なんか、あちこちで借りられそう」感がある気がしていて、本日はそれについて考えてみたいと思います。


アプリを立ち上げるとマップに “ぴょこっ” とピンが立つ

LUUPのアプリを立ち上げると、現在地のマップが読み込まれてから、一瞬の間があった後に、“ぴょこっ” とポートを示すピンのアイコンが現れます。

LUUPアプリを開いた時のマップの表示

他のバイクシェアリングサービスのアプリにはこういったエフェクトはなく、もっと滑らかにポートの場所と空き状況が表示されます。

このような “ぴょこっ” と出てくるエフェクトは、(私の勝手なイメージですが)野菜を育てるゲームで野菜が生えてくる時なんかによく使われていて、「新しく生えてきた感」「増えた感」が想起させられます。
そのためか、LUUPアプリを開くと「おっ、こんなにいっぱいポートがあるんだ」と感じます。(よく見ると利用可能なポートは5分ぐらい歩かないといけない…ということも時々あるのですが、第一印象はそのように感じます)

デザイナーやエンジニアのちょっとした遊び心によるUIなのかもしれないですが、このエフェクトは「すぐ近くにポートがある」印象につながっているように思います。


最初に表示されるマップのエリアが広い

もう1つ特徴的と感じるのが最初に表示されるマップのエリアの広さです。HELLO CYCLINGでは比較的近場のみが表示されているのに対して、LUUPのマップは結構広いエリアが表示されています。

LUUPとHELLO CYCLINGのマップの比較

現在地からマップの端の場所までは地下鉄で2駅近く離れているので、借りるためのポートを探すだけであれば不要な情報です。しかし、広いエリアが表示されている分、目に飛び込んでくるポートの数は多くなり、「このあたりにはたくさんのポートがある」という印象を持ちます。

さらに「あっちの方面にはポートが結構たくさんあるんだな」と日頃から印象付けられることで、そのエリアに行った時に「このあたりならLUUPで借りられるかも」とアプリを開いてみるきっかけにもなります。
こういったことも「すぐ近くにポートがある」印象に寄与していると思います。


「いつでも、どこでも、乗れる機体があること」を目指していた

冒頭で少し触れたように「すぐ近くにポートがある」ということは、CEOや当時のPMの発言からも戦略的に行っていたのではないかと考えられます。
LUUPでは「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」というミッションを掲げており、その中で「日々のルーティン移動をする人」の「移動のハードルを下げる」ことにフォーカスしてプロダクトを作っていたそうです。そして、これを実現するための施策の1つとして「いつでも、どこでも、乗れる機体があること」の実現を目指していたようです。
(参考:2021年 プロダクトマネジメントカンファレンスBusiness Insider「電動キックボードのLuupが45億調達。「近距離密集型」モデルで見えた、黒字化の道筋」

上記の記事のように、都心部のポート密度を高める戦略や、視認性を高めるポート・機体のデザイン、簡単にライドできるUXといった話はよく見聞きします。ただそれだけでなく、アプリのマップのUIUXデザインにも「すぐ近くにポートがある」感を演出する仕掛けがあるのではと思い、今回の記事を書いてみました。


(執筆者:デザインストラテジスト 杦木 陽一)


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