見出し画像

途中でやめてもまた戻りたくなる、健康管理アプリ「YAZIO」

先週末は全国各地で桜が満開で、どこに行ってもみんなお花見をしているほどでしたね。お花見といえば桜ですが、発祥したとされている奈良時代では中国から伝来した梅の花が主流だったようです。これは、決して桜が好まれていなかったわけではなく、香り高く美しい梅が好まれていたと同時に、当時の日本人にとって桜は神聖な木であり鑑賞する対象ではなかったのです。それから徐々に、日本古来の桜を春の花の代表格として愛されるようになりました(諸説あり)。お花見といえば桜ですが、個人的には梅の華やかさも好きなので来年は梅の木の下でお花見をしたいと思います。

さて今回の【勝手に分析!Good CX】は、健康管理アプリ『YAZIO』」について分析していきます。


健康管理アプリって結局途中でやめてしまう

みなさんは健康管理のアプリを使ったことはあるでしょうか?私は以前、自己管理をしながら健康的なダイエットをするために、UIのデザインがシンプルで使いやすそうな「YAZIO」という健康管理アプリを使い始めました。このアプリは、ユーザーの目的と状況に応じてPFC(エネルギー産生栄養素であるタンパク質、脂質、炭水化物を、どのようなバランスで摂取すると健康的かを表す比率のこと)が設定され、食べたものを書き込めば自動でそれらの計算もしてくれます。このようなレコーディング機能があるアプリはYAZIOに限った話ではなく、今やどんな健康管理アプリでもありますよね。便利な時代です。

アプリの通常画面

しかし、アプリが便利だからといって、ずっと使い続けられるわけではありません。最初は勢いよくダイエットと食事管理をアプリで始めます。管理できている自分にも満足し、少しの結果が出るとより嬉しい。でも、人はずっと何かを続けられるほど強くはないのです。私はいつの間にかアプリを開かなくなりました。仕方ないと思いつつも、なんだか宿題をずっと先生に提出していない気持ちに近しいモヤモヤした感情をどこかで抱えていました。

おそるおそるアプリを開くと「おかえりなさい!」

あるとき、生活に余裕も出てきたのでダイエットや健康管理をもう一度してみたいと思い、アプリの整理も兼ねて、しばらく使っていなかった「YAZIO」をおそるおそる開いてみました。
すると、以下のメッセージ画面から始まりました。

「YAZIOへおかえりなさい!あなたが戻ってきてくれて、うれしく思います。もう一度トライして、一緒に旅を続けましょう。あなたならできます!私たちは、あらゆる旅の段階でそばにいます。それをお忘れなく。」

アプリを再開したときの最初の画面

こんなことを言われるとは全く想定していなかったので、驚いたと同時に、「またやってみようかな」という気持ちが一瞬で芽生えてしまいました。

次の画面に行くと、「あなたが数日休んだ理由は何でしたか?」「旅を続けるにあたりどんな気分ですか?」「どのように軌道修正しますか?」など、中断してしまったユーザーに対して、不快にならない配慮がされながらもモチベーションを上げていく方向で深掘りされていきました。そして知らない間にこれからの目標の話に誘導されていきました。

アプリを再開したときの他の画面

中断して戻ってきたときの一瞬の体験をいかに設計するか

これをCXの観点でみると、重要なことが2点挙げられます。

1.「戻ってきた瞬間」へのアプローチ
ユーザーにとって記録や管理をするためのアプリを長く続けるのは難しいことです。記録が面倒だからやめてしまったり、目標を達成したから使わなくなったり、さまざまな理由でユーザーが途中で脱落することは避けられません。いかに利用し続けてもらうかは重要ですが、使用をやめて再び戻ってきたときの体験設計は意外と見過ごされがちなのかもしれません。

つまり、「アプリを始める瞬間」だけではなく、「アプリからしばらく離れていて戻ってきた(再度開いた)瞬間」も重要なMOT(Moment of Truth:真実の瞬間)であるということです。もう一度やってみたいけど、どうせまた自分のことだからやめるんじゃないか。そんな期待と不安が混在している状態でアプリを開くユーザーの、その一瞬にアプローチできる瞬間。ここの体験の設計が、こんなにも次のアクションを生むために重要なのだと身をもって感じられました。

2.ユーザーにとって、アプリは「旅の仲間」
ユーザーがアプリを再開した瞬間にどんな言葉をユーザーに投げかけるのか・・・その背景にはユーザーにアプリをどんな存在として感じて欲しいのかがみえます。YAZIOは一貫して「旅の仲間」として話しかけてくれます。ここでいう「旅」とは「ユーザーが健康管理する中で目標を達成するまでの過程」のことを指しています。「旅」というメタファーを用いることで、旅の途中でつまづいてしまう=アプリを中断してしまうこともよしとした考え方があることが伝わります。そして、旅の途中で迷うことがあっても、相談できる「仲間」がいることで、目標に対して一喜一憂せずモチベーションを維持し続けるような設計になっているのです。

特に私がダイエットが続かない一つの理由として「途中の失敗を許さない」「最短経路で最大効果を得ようとする」というなんともわがままな考え方による「目標設定の誤り」が大きいです。私はYAZIOを使うことで、目標を立てるときに自分にはどんな要素が必要かを考えることとなり、無理な計画を立てることは少なくなりました。

こういった1個1個の体験の設計の裏には「ダイエットや健康をどう捉えているのか」「ユーザーにとってこのアプリがどういった存在であってほしいのか」といった考えがあり、ここの設計がとても重要です。このアプリではメタファーを用いて上手に伝えてくれており、うまく私を導いてくれました。

ただ、ダイエットで難しいのは無理なく続けられる条件を探すことなので私の旅の道のりはまだまだ長そうです...。YAZIOとともに長い旅を歩んでいきます。

#goodCX   #CXデザイン #YAZIO #健康 #ダイエット #デザイン #マーケティング #顧客体験 #UI

(執筆者:デザインリサーチャー 梅田郁美)

私たちが所属する会社はこちら→株式会社mct