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Age Factoryへ愛を込めて 

Age Factoryというバンドを追いかけている。

彼らと出会ったのは2018年のムロフェスだった。当時、彼らはメインステージに立っていなかった。とても小さい方のサブステージで演奏していた。

第一印象、態度が驚くほどに悪かった。メインステージでは別のバンドが演奏しているわけだが、そのバンドに向かって「うるせえな」とか呟いていたのを覚えている(実際はもう少し過激だった)。
誰がどう見てもイラついていた。纏っている空気は異質そのもので、胸ぐらをつかまれているかのような威圧感があった。
私は、少し気になるから〜くらいの軽い気持ちでライブを観に来たから、その空気感にぞくぞくしていた。


まずその日のセトリを載せておく。

1. Moony
2. RIVER
3. CLEAN UP
4. WORLD IS MINE
5. Puke
6. Tours

このセトリ、見返したらなかなか熱いセトリだと思ってて。Age Factory好きな人だったら分かってくれると思う。今となってはセトリ落ちしがちなレア曲のオンパレードだ。

例えばMoony、疾走感あふれ、どこか感傷的なギターに彼らの真骨頂なノスタルジックが溢れてくるような歌詞を乗せた曲で、私も大好きな曲だ。
今、彼らのライブでMoonyがセトリに上がるたびに、その公演に行かなかった人たちの悲鳴が溢れるような、そんな頻度でしかやらない曲からライブは始まっていた。

RIVERなんかは初期のころの曲だけれど、彼らの音楽的姿勢を決定づけたアンセムソング的なものだと思っている。曲自体も骨太なロックで、その歌詞からの生き様はもはや模範的なまでにパンクなものだった。しかしこれも今の彼らは演奏することが少なくなった。

バンド歴が長くなれば、過去曲の演奏頻度も減っていくのは当たり前だ。しかし、彼らの場合は過去曲で人気曲が山ほどある。
その中でも特に人気がある曲を集めたかのようなセトリなのだ。

ムロフェスでRIVERを初めて聴いた時、驚愕した。
このバンドがこんなクソ小さいステージでライブやっている事実に対して、本気で意味が分からなかった。Age Factoryがこんなステージでやっている、現行の音楽シーンに対して不信感を覚えたほど、それくらい強烈に食らってしまったのだ。
結果論にはなってしまうが、絶対このバンドは大きくなると思った。

当時の邦楽ロックとは全然違う方向に向かっているように感じた。
掻き鳴らしたギターの轟音と、少し掠れたような声でシャウトしているのはボーカル清水エイスケ。
地を這うような低音を鳴らし、楽曲に破壊力を加える。その長髪を揺らしながら弦をはじくのはベースの西口直人。
力強いドラムを叩きながら叙情的な抑揚がある、Age Factoryの音を先導するドラムの増子央人。
(特にドラムは力強いスネア?とタム?〈ドラムに対して詳しくないので違うかもしれない〉が特徴的で、Age Factoryのドラムの音は結構すぐわかる。)

続いて、有り余った不満を払拭するかのように掻き鳴らしたギターリフ、CLEAN UPで更にフロアの熱気は一段と上昇する。後方でゆっくり観ていたはずの私は、少しずつフロアの前方に一歩、また一歩と近づく。

WORLD IS MINEでは、フロアの観客全てが拳を天に突き上げ、WORLD IS MINEと咆哮する清水エイスケの声に共鳴していた。
それはもはや傍から見ればカルト的のようでもあったが、確かにここは世界の中心だった。震源地はお台場。そのくらいの熱気がフロアにはあった。
私はフロア前方に立っていて、拳を突き上げていた。

そしてPukeでアップテンポな曲は落ち着いた、と思った矢先。

最果てから送りつけるよ
愛を込めて
最果てから
お前へ送るよ 

Puke - Age Factory

サビに入った瞬間に啖呵を切るかのように発された強烈なシャウトと、ハードロックゆずりの破壊力のあるギターリフを食らって、もはや笑ってしまうくらいの恍惚感を得たのは覚えている。


最後は夏の日にふさわしいような曲、Tours。

終わりなんてさ無いから
僕らの全部を乗せていこうぜ

Tours - Age Factory

2016年に出した「LOVE」というアルバムからだ。
炎天下の中、汗まみれになって混じり合うモッシュピットが印象的だった。
西口直人のコーラスがまたいい塩梅に気持ち良く突き抜けていって、アップビートな曲ながらも情緒に語り掛けてくるような爽やかさがその曲にはあった。

まだまだ彼らは旅の途中だった。
ライブが終わって、もっと遠くまで、
どこまでも行ける気がした。
それが私とAge Factoryの出会いだった。

翌日、ライブの疲労も残る中、近場のCDショップに駆け込んだ。
彼らのCDを置いてあった中で全種類買った。
こんな衝動は、人生で初めてだった。
2018年のムロフェス。Age Factoryだけが記憶に焼き付いていて、他のアーティストについてほとんど覚えていない。

ムロフェス2018
衝動買いしたAge FactoryのCD4枚。当時に撮った写真。


ムロフェスの舞台で清水エイスケはこう言っていた。
「ここにいる奴らは間違っていない」と。
これはこの時期、彼らが公演をするたびに言っていたセリフだった。
俺たちがやっている音楽は正しいのだと自分たちにも言い聞かせているようだった。

前半でRIVERは彼らの音楽的姿勢を決定づけたと書いた。自分の信じたものを、たとえ時代の波に逆流しているものであったとしても、孤独な道程になるとしても、一貫して貫き通すような固い意思を私はRIVERに感じていた。彼らは孤独を否定せず、むしろ孤独であることを誇りに思っているような毅然とした態度で音楽と向き合っていた。
彼らの音楽は万人受けする音楽ではないと思う。聴いてもらえれば分かるが、彼らの奏でる音楽はあまりにも鬼気迫るような迫力がある。ボーカルも最近流行りのような中性的な声などではなく、あまりにも野太い男の声そのものだ。しかしながら、その声は非常に深みがあって、私たちの本能に直接訴えかけてくるかのような説得力があった。

この音楽で、世界は俺のものだと叫んでいた。

その主張はもしかしたら、最近の音楽シーンに対する彼らなりのアンチテーゼ的な意味合いもあったのかもしれない。Pukeの歌詞を見ると、彼らも他とは違う音楽をやっていることに自覚的だったのだと思う。現行のロックシーンに不満を持っていたのは確かだろう。その音には求心力があった。
2016年に彼らが出したアルバムのタイトルは「LOVE」。
私がムロフェスで浴びた轟音の根本的な部分、そこにLOVEという感情があるということに、そのバランス感覚がまた彼ららしいと思う。

戦う人間のために音楽を 

Ginger - Age Factory

迷走Japnanese お前だよ
得体も知れない 見たこともない
ような音で吐き出すよ 

Puke - Age Factory
Pukeは、スラングでゲロを吐くという意味がある 


Age Factory、「ここにいる奴らは間違っていない」って最近は言わなくなった。代わりに、「俺たちならばどこまでも行けるような気がする。共に行こう」だとか、「Age Factoryのヤバい1ページにしよう」だとか、私たちAge Factoryのリスナーたちと、ライブに足を運ぶファンたちと共に歩んでいくかのような、そのような言葉に変わった。
彼らは丸くなったのではない。もはや自分たちのことを知ってもらおうとするフェーズは彼らの中では過ぎ去っていて、ただただ彼らが追求する音楽、そして音楽によって引き起こせるムーヴメントというものを見通し始めた。
しかしながら、彼らの中で重要なものというのは、変わらず「孤独」であった。彼らの音楽に感じるピュアなものの正体はおそらくこれ由来である。

自分がやりたい音楽を追求する中で、時代に迎合することを彼らはしなかった。その彼らが歩む道程で、私たちは彼らの音楽を好きになって、聴いて、実際にライブに足を運んだ。
上記インタビューのカオスの中で唯一共有できるもの、それはAge Factoryが歩んできた道の中で見つけたひとつの景色のことだったのだと思う。

寂しさを抱えているから人は集まるのだと思う。
いつか終わりが来ることを知っているから、刹那的な時間に身を委ね、瞬間に命を燃やすのだと思う。
そして音楽には、私たち人間の寂しさや心の空白を埋めてくれる力がある。
Age Factoryの音楽によって、心の空白を埋めつくした人たちの、ライブで見せてくれた輝きのようなものを、彼らはステージの上からずっと眺めてきたのではないだろうか。
Dance all night my friendsは本当にたくさん聴いた。
2021年で一番聴いた楽曲はこれだった。 

Age Factoryのライブは、Age Factoryにしか出せない空気感がある。
Age Factoryと観客の、本能と本能のぶつかり合い。互いに切磋しあうような気迫の応酬。そして、フロアは青く燃焼を始める。魂を燃やす炎の色だ。

Age Factoryのライブに行くたびに、ムロフェスで言っていた「ここにいる奴らは間違っていない」という言葉の答え合わせをしてしまう。
声を大にして言いたいのだ。
あそこにいた私は、
何一つとして間違っていなかった。

少し話は逸れるが、彼らは日々新しい音楽を追及していて、ラッパーのJUBEEとAge FactoryでAFJBというユニットを組んだ。
もともとヒップホップを取り入れた楽曲に彼らは挑戦していた。ラッパーのKamuiと、先述したJUBEEである。

彼らは、HIPHOPとバンドとのクロスオーバーを目指している。AFJBは、coldrain主催のBLARE FESTIVALなどの大型音楽イベントに出演するなど精力的に活動している。AFJBお披露目の場として、バンドカルチャーとクラブカルチャーの融合をテーマにしたオールナイトイベントを愛知、大阪、奈良、そして東京にて主催し、大成功を収めた。
このバンドも非常にかっこいい。Dragon Ashを彷彿とさせるようなミクスチャーロックだ。ヒップホップとロックの融合、音楽の新しい地平になっていると思う。興味があったら聴いてみて欲しい。

AFJB東京公演にて


話は戻るが、Age Factoryは現在、
4枚のアルバムと3枚のEPを出している。
「LOVE」
「GOLD」
「EVERYNIGHT」
「PURE BLUE」

そしてEPの
「手を振る」
「NOHARA」
「RIVER」だ。

このアルバムたちはどれも音楽性のテイストが違っていて、Age Factoryという音楽の多様性を垣間見ることができる。
初期の曲たちは粗削りで、ある意味で暴力的と呼べるまでの音楽の中には、彼らを形作る原風景や世の中への捉え方などのAge Factoryのエッセンスがふんだんに詰まっている。
最新のアルバムに近づくにつれ、そのもともとの感性を研ぎ澄まし、洗練されていく価値観やエモーショナルな音もまた彼らの重要な構成要素となっていく。これからのアルバムでまたどうやって音楽性が変容していくのか、私は楽しみで仕方がない。


直近で彼らは新しいツアーが決まっている。

少しでもAge Factoryが気になったのならば、ぜひ一度彼らのライブに足を運んでみてほしい。
Age Factoryのことを好きな人が一人でも増えてくれたら私も嬉しい。私が2018年に受けた衝撃を、彼らはきっと与えてくれる。


ムロフェスの、Age Factoryのライブを観た後のこと。休憩所がどこも席が埋まっており、お願いして相席させてもらった男性が偶然にもボーカル清水エイスケのお父さんだった。

「あれね、うちの息子なんですよ。かっこよかったでしょう」

日々進化していくAge Factory。彼らの音楽に私は目が離せないのだ。私はこれからもAge Factoryの歴史を目撃する一人でありたい。
あの日から、私はずっと彼らを追いかけている。
本当にかっこよかったです!ファンになりました!と答えたあの日から。

Age Factoryへ。
最果てから愛を込めて。


長々と書いてしまった。
読んでくれてありがとう!
まだAge Factoryを聴いたことがなかったら
ぜひ聴いてみてください!


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