道等棟エヴリカ

(不眠で)眠れない夜が多すぎるので、その時間をなにか有効活用できないかと書き物をしてい…

道等棟エヴリカ

(不眠で)眠れない夜が多すぎるので、その時間をなにか有効活用できないかと書き物をしています。 ご連絡やご感想は仕事依頼タブにお問い合わせフォームがありますのでそちらからどうぞ。 X/🦋→caremoonNYmake

マガジン

  • 【連載】SERTS season 1

    従者である『僕』と、上位存在である『王』の人ならざるふたりが織り成す、近未来を舞台としたのんびりグルメ旅ジャーナル。アジア大陸編。 ※このシリーズにおける地理や歴史観は実在の国や地域、団体とは一切関係ありません。 ※このシリーズには一部グロテスクな表現や性的な表現があります。(R/RG12程度)

  • 【連載】AND THE BEAT GOES ON-RMX

    2XXX年。太陽が昇らなくなっておよそ100年。 人類は絶滅し、地上は魔族たちの楽園と化していた。 新たなる世に発足した監察組織『DVS』……そのトウキョウ支部には人類史に名を馳せたファッションブランド“FM”の代表取締役社長である『椿屋 霧雨』の姿があった。  2015年よりprivatterにて連載していた、人の世に紛れて暮らす『人外』たちのお話【MIDNIGHT-FLYGHT】シリーズの続編(2018.5.13~)です。   前日譚は鋭意発掘中。

  • 【小説集】BULLET JOURNEY

    蒼生名義の中~長編をまとめました。

  • 【小品集】樹海の真珠

    短編/掌編をまとめました。 お茶請けや眠れない夜にいかがですか。

最近の記事

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【小説】ライオン・ニルヴァーナ(前編)

 水気の抜けた、見るからにぱさぱさとした質感をした白い髪が、その痩せた背中に垂れている。ライオンみたいだろ、と自らの髪を称していた彼女のことを思い返しながら、僕は帰宅したばかりの、夜の空気を吸い込んだままの身体から薄いカーディガンを剥ぎ取った。あれはどれほど前の出来事だっただろうか……仔細を思い出そうとしても僕の萎縮した脳はその芯の辺りを小刻みに震わせるだけで、思考のポーズですら取ってはくれない。なんて怠慢な脳味噌なのだと叱咤したい気持ちは、腹からせり上がっても喉頭の手前で諦

    • 【SERTS】scene.7 スリーサイド・烙鍋デート

      ※この話には一部性的な表現があります。  安徽の省都である合肥から、貴州省の貴陽までのおよそ一千百キロの道程を、二時間と少しのフライトで飛び越えることにした僕たちは、飛行機内で軽く仮眠を取り雨の貴陽に降り立った。  貴州省は平地の少ない高原地域であり、晴れの日が少ないとは聞いていたが、雨の出迎えにはなかなか気が滅入る。地下鉄に乗り継ぎ市街地へと辿り着くと、一本の折り畳み傘のもとふたり縮こまり、服の裾を濡らしながら予約していたホテルへと急ぐ。まだ昼前なのに薄暗い街にぽつぽつと

      • 【SERTS】TRAVELERS【PROFILE】

        〔Main Story〕  人外バディがバカンスしながら飯を食う、近未来SFファンタジー。  小吃感覚でお気軽にお召し上がりいただけます。  スパイス程度にR/RG12表現アリ。 〔TRAVELERS〕 ◀【王】 ボディは疑似餌。 『自分以外全員雌』であるためどんな相手も母体に書き換えられる権能を有する、パワータイプの繁殖方法を取るイキモノ。 『かわいいおよめさん』が欲しくてバカンスついでに婚活中。 性格はロイヤル~におっとりのんびり。一方で壊滅的にやんちゃ。 175c

        • 【SERTS】 scene.6 黄山炖鴿はどこで?

          ※この話には性的な話題があります。 「ねえ、メッセージ届いてるよ」  僕の指摘に、それまでぼんやりと窓の外を眺めていた王は、ゆっくりとスマホを手にして「そうですね」と眠たそうな相槌を打ち、それを再びテーブルの隅に置いた。  この午後の穏やかな時間、どうやら王はこのホテルのラウンジに面した、硝子張りの中庭を眺めることに夢中らしい。手元の祁門紅茶に口をつけることすら忘れて、淡い空のひかりを浴びる箱庭にその眼差しを向けている。揺れる緑をその透明な睛に映し、曇りなき窓硝子に斜めアン

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        【小説】ライオン・ニルヴァーナ(前編)

        マガジン

        • 【連載】SERTS season 1
          8本
        • 【連載】AND THE BEAT GOES ON-RMX
          5本
        • 【小説集】BULLET JOURNEY
          2本
        • 【小品集】樹海の真珠
          6本

        記事

          【SERTS】scene.5 火鍋処理場

          ※この話には一部グロテスクな表現や性的な表現があります。  夢の引き際がやさしくて、瞼を開けようか開けまいか迷いながらももう朝だと察して僅かに気を落とす。瞼の裏の淡い橙色が告げる太陽の位置はまだ低く、起きれば暇で、眠れば朝食を食べそびれるくらいの時間帯。微睡みの中で、さっきまでどんな夢を見ていたのか思い出そうと試みるが、中々上手くいかない。悪い夢ではなかったはず……と大まかに分類して夢の内容を掘り下げていると、ふと横臥してシーツをゆるく掴んでいたその手元になにか柔らかいもの

          【SERTS】scene.5 火鍋処理場

          【DOLL】討伐計画詳述

           花の一輪。椀物の貝ひと粒。煮込まれたさかな一尾。分配される牛の一頭。わたくしの前のヒトひとり。生贄。それらに差はありますか。  答えなさい。  わたくしを納得させ、躾け、だまくらかし、そして見事おまえの語る愛で以て討伐してみせなさい。  言葉をつかいなさい。  おまえの知性を存分に活かし、培った情とやらで装飾し、規範や通念をも混ぜ込んだ弾丸でわたくしの伽藍を撃ち抜きなさい。  欲しなさい。  おまえの欲望それらでわたくしに幻影を見せなさい。そうして善いものだと誤認させなさい

          【DOLL】討伐計画詳述

          【SERTS】scene.4 涼皮をプールサイドで食べる日

          ※この話には一部性的な表現があります。  目をさます。青い夜だ。  抱いて眠っていたはずの王の姿は傍らになく、ひやりとして起き上がると、僕の足元にひとつの毛布の塊があった。這うようにしてそちらに身を寄せ覗き込むと、そこにはいつものように蹲って眠る王がくるまれており、僅かにはみ出したその手には片方だけのピアスが握られていた。 「……そうかい。よしよし」  呟いて、王の頭を撫でる。からだをさする。あたためたいと願う。  王はつけないピアスを持っていた。  どうやらさみしい夜にだ

          【SERTS】scene.4 涼皮をプールサイドで食べる日

          【SERTS】scene.3 水席を囲めない私たち

          ※この話には一部グロテスクな表現や性的な表現があります。  新緑が続々と拓けていく。視界の左右で切り立った岩肌と聳える木々が、水の流れを見守るかの如く、穏やかなカーブを描いていた。幽玄な大自然が延々と星の表面を覆うさまは遠目には優美でありながらも、時折ひやりとするほど鋭利な造形が剥き出しになっており、文化圏などひと踏みで圧倒できるのだと微笑み囁いている。そんな大渓谷を成す群峰一塊一塊の迫力に押し潰されそうなのに、空は遠く広い。  緑の風。黄色い青空。それらを混ぜ、ただ深い一

          【SERTS】scene.3 水席を囲めない私たち

          【旅行記】凍て星の里で火花を浴びて〜討ち取れ敵将駈歩ReMix〜

           毎度毎度ふざけたタイトルを出力してしまいすみません。  今回も旅行記。数回に一度はしたためている地元(ガチ地元ではない)の旅行記です。なんかもう旅行記の人みたいになってますね。 ※相変わらず画像が多いです。 ※敢えて名称や場所を記載していないスポットについては、XからDMをくださればお教えします。プロフィールページからXへどうぞ。(生きていなさそうなアカウントですが連絡用です)  今回もパートナー氏が遊びに来たいと口にした次の瞬間にホテルを予約していたので、地元(近隣

          【旅行記】凍て星の里で火花を浴びて〜討ち取れ敵将駈歩ReMix〜

          【SERTS】scene.2 粽の失踪

          ※この話には一部グロテスクな表現や性的な表現があります。  缶ビールをひと口飲んだ王が「ぷは」と景気の良い声を上げる。そしてニコニコと微笑みながらもぴっちりと唇を閉じ、無言で残りを僕に手渡すと、バスルームへと逃亡しようとしたので首根っこを捕まえて身柄を確保し、叱る。これは従者としての責務だ。 「いちばん美味しいところだけ飲み食いして残りを僕に押し付けようとする癖、やめなさいよ。ていうかこのビールなに。どうしたの」  星の刺青が入っている項を僕に掴まれ「いや、いや」と切ない声

          【SERTS】scene.2 粽の失踪

          【SERTS】scene.1 春、刀削麺

          ※この作品には一部グロテスクな表現があります。  ふうふうと麺に息を吹きかけている我が王のちいさな耳に、垂れてきた長い髪を掛けてやる。冷まさなくても食べられるだろうに、僕が教えた通りにふうふうと。  包丁で削られた不揃いなかたちの麺を摘む箸は、麺と同じくまとまりがない。どういった原理で動いているのか解らないような、どう考えても指が疲れるであろう箸をみかねて、手を出し持ち方を整えてやれば、小麦の麺を噛み締めながら王は微笑んだ。 「美味しいかい」  問うと、王は口にしていたぶん

          【SERTS】scene.1 春、刀削麺

          【旅行記】最果ては空ではなくリュックの中に

           東京ってやっぱり乾燥してるな。  と、帰ってきて思ったり。  先週金曜から日曜の間に都内に遊びに行っておりましたので、今回はそのまとめです。  写真は私撮影とパートナー氏撮影がごちゃ混ぜで、相変わらず数が多いです。 ※お競馬についても記載があるので苦手な方はご注意ください。  毎度恒例ド不眠に悩まされながら、普段より一本早い新幹線で東京へ。  普段は新幹線内で酒盛りしたり原稿やったり写真を撮ったりしているのですが、今回ばかりは不眠がどぎつく、なんにもできないままぼうっと

          【旅行記】最果ては空ではなくリュックの中に

          ライオンの背で微睡む日

           改めてnote創作大賞2023応募作品への応援をありがとうございました。  残念ながら選考外となったのですが、有志の方の調べによると、恋愛小説部門の選考基準を満たした約1300作品中私の作品は11位だったそうです。  これだけでもう生きていけると思いました。  本当に本当にありがとうございました。  見た瞬間泣いたよ。  しかしこれはいいね数を参考にしたランキングであり、こちらのランキング上位であってもその多くが予選通過していないという結果となっているので、単純に私の

          ライオンの背で微睡む日

          そしてビートは続いていく

           privatterにて連載していた【ATBGOrmx】シリーズをこちらにも運び入れましたので、マガジンを作成しました。かなりの不定期更新ですが、気になる方はマガジンの購読をして頂くとなにかと便利かと思います。  マガジン購読(通知)そのものは無料。作品も今のところ無料です。今後どうするかはまだ決めていません。  もうべったーで読んだよ〜って皆さんも、好きな話や、好きなキャラが出ている回に♡を押して下さるとたいへん参考になりますので宜しくお願い致します!  モバイルからだ

          そしてビートは続いていく

          【ATBGOrmx】ch.5 殉教者のフロウライト

          MIDNIGHT-FLIGHT AND THE BEAT GOES ON-RMX ch.5 殉教者のフロウライト  摩天楼が夜空へ向かって在りし日の夏の雲のように膨れ上がっていた。  今日のトウキョウの空は快晴。とは言っても暗がりの世界だ。昼夜関係なく濃紺に塗り潰された空は、まるでコンピューターによって境を失った生と死のように茫漠とした反自然を映して星を瞬かせている。であればこの空も、すべてコンピューターのせいなのではないかと思えて仕舞う。生命が滞りなく活動できるだけの気

          【ATBGOrmx】ch.5 殉教者のフロウライト

          【ATBGOrmx】ch.4 To be or not to be

          MIDNIGHT-FLIGHT AND THE BEAT GOES ON-RMX ch.4 To be or not to be  暇だったから、という理由で『DVS』に入局してもう何年だろうか。あの戦争で私は宝飾技師の職を失い掛けた訳だが、別に人類の為に戦おうと奮起したことなどないし、ただクソだるいなと引き籠もりがてら前職でのボスである椿屋霧雨の息子、幻日を預かり面倒をみたり、その合間にちょこっと齧ったハッキングの技術を活かして戦場をアクション映画を鑑賞するようなノリで

          【ATBGOrmx】ch.4 To be or not to be