【読書日記㊺ひと/小野寺史宜】悲しみも喜びも、”ひと”がいるからこそ生まれるんだな
読書日記も久しぶりに書きます。
読書量が落ちてる訳じゃないですよ。だいたい月に7冊くらいは読んでるし、最近は毎日図書館に通ってます(会社から図書館が近いので)。
ひと/祥伝社/小野寺史宜
鳥取出身の柏木聖輔(かしわぎせいすけ)は、事故で父を亡くし、3年後に母を亡くした。東京の大学を中退し、ギリギリで食いつないでいたある日、総菜屋で順番を譲ったことで、アルバイトをすることに。「おかずの田野倉」の面々をはじめ、高校の同級生、大学の友達、不思議な縁が生まれていく。
主人公、柏木聖輔の母が亡くなってから1年の物語で、「一人の秋」「一人の冬」「一人の春」「夏」の4つの章に分かれています。はじめは、相次いで家族を亡くし、一つ55円のコロッケも買えないほどの貧乏暮らし。大学も中退して、一人で生きていかなくてはならない心細さが描かれ、胸が苦しくなります。
この物語を一言で表すなら、周りの人とのつながり、助けてくれる人の暖かさを描いた作品。この本に出てくる、好きな言葉たちです。
どちらも、主人公が言われたセリフですが、あぁやっぱり人っていいな、と思わせてくれるセリフですね。小説だけではなく、いつかの自分を助けてくれるんじゃないかと、そっと胸にしまいたくなります。
社交的な主人公ではないのに、東京出身だった父のルーツを探したり、ベースを知り合いの息子さんに教えたり、殻に閉じこもらずに、つながりを作ろうとしている姿は見習いたくなりますね。
一方で、嫌な人間もいます。金をせびってくる親戚や、見下してくる同級生の元カレ。そうやって、主人公にとって、いい人間も悪い人間もいるからこそ、この物語にリアリティが生まれています。
リアルさが感じるポイントがもう一つあって、
こんな風に、一文が短く書かれています。心の中をのぞいてるみたいで、主人公の朴訥さや誠実さ、整理のつかない心情が伝わってきます。
後から気づいたのですが、章のタイトルの秋、冬、春には「一人」がつくのに、最後の夏だけは、そのまま「夏」。
もう、一人じゃなくなったことを暗示しているのでしょうか。芸が細かいですね!
「ひと」というタイトル。とてもシンプルすぎるタイトルですが、読み終えたらわかります。この小説のタイトルは「ひと」しかない!
あと、「一人の春」の終わり方と最後の「夏」終わり方が好き。この小説読んだ方なら共感するはず!
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