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寮美千子さんオンラインイベント「困った子は困ってる子~奈良少年刑務所 絵本と詩の教室~」

4/4日に行われた寮美千子さんのオンラインイベント「困った子は困ってる子~奈良少年刑務所 絵本と詩の教室~」に参加したので、少しだけレポートを書き書き。

奈良少年刑務所で行われてきた先進的更生教育「社会性涵養プログラム」。
受講生はみな「加害者である前に被害者であった」ような少年たちでした。
10年にわたる実践でわかった「心を開いてもらえる教室運営」の秘訣と、
深い心の傷を抱えた少年たちを癒してきたワークショップの実施風景を、
受講生=受刑者らが書いてくれた作品とともに紹介します。

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「困った子は困ってる子~奈良少年刑務所 絵本と詩の教室~」

寮美千子さんは奈良少年刑務所(現在は閉鎖されホテルへ改装)で受刑者たちに行われていた社会性涵養プログラムである「絵本と詩の教室」を担当されてきた方。もともとは作家・詩人として活動されていて、とあるきっかけから特別講師に。その教室で生まれた詩の数々が書籍として『奈良少年刑務所詩集 空が青いから白をえらんだのです』にまとめられています。

で、今回の寮さんのお話の中でふたつのことが私の心に残ったんですよね。
◎つらい・苦しいを封じると、自分が何を感じているのか分からなくなる
◎「自己表現+受けとめ」の大切さ

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つらい・苦しいを封じると、自分が何を感じているのか分からなくなる

子供を持つ親向けのイベントではあったものの、「困った子は困ってる子」と題して語られたその内容は、かつて子供だった大人にとっても価値あるものだったなと。

幼少期に安心安全の場を得られない状態だと、つらい・苦しいという感情を封じてしまうようになる。けれど、その人にとってネガティブな感情だけを抑えようとしても、うれしいやよろこびといったポジティブな感情も排除することになってしまうのだという。その結果として、自分が何を感じてるのか分からなくなってしまう。
う〜ん、自分自身まさにそうなっていただけに、わかりみがスゴい。

で、ここからは私の考えだけれど、自分が何を感じてるのか分からなくなってしまった人というのは、コントロール喪失状態と言えるんだろうなって。私が私を生きてるって感覚がない、私なのに私だと思えない。
だから、自暴自棄になり、むなしさ・無意味感に襲われ、なにもかもがどうでもよくなってしまう。あるいは、喪失感の反動から、他人への暴力やハラスメントに攻撃が向かってしまったり。

自分への信頼感が失われてしまうと人は破壊衝動に駆られて、それが内側に向かうか、外側に向かうかとなりやすいのだと思うんです。どちらにしても、自分もまわりの人も傷つけてしまうあまりにも悲しすぎる行為なんだよなあと。

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「自己表現+受けとめ」の大切さ

絵本と詩の教室を通して寮さん気づいたのが「自己表現+受けとめ」が人を癒していくということ。自ら詩をつくり読んでそれを聞いてもらう、その過程のなかで困難を抱えた受刑者たちが変化していく姿を何人も見てきたという。

ここでいう「受けとめ」とは聞くことであり、相手を認めることなんだろうと思います。個人的にも思い返せば、受けとめてもらえなかったなという思いがあって。こちらの発信を無視や否定で返されてしまったこととか。
あるいは、褒める・励ますといった行為。寮さん曰く、褒める・励ますには「誘導」のメッセージが込められていて、勘のいい子・感受性の高い子ほどその言わんとするところを読み取ってしまうという。

まわりを困らせる子、問題を起こす子、トラブルメーカーの子らは困っていることをトラブルを起こすという表現以外に分からなくなっているのかもしれない。
この子の言動はなにを訴えている?この子をどう受けとめたらいい?問われているのは、大人・親・社会の側の「受けとめ」なのでは。

自分が何を感じてるのか分からないという感情の麻痺・感覚の不全。そうであっても安心安全な環境と似たような境遇の仲間がいる場の中で自分を表現をし、それを受けとめてもらうことでその状態が改善・回復していく。塀の内側にいる子たちへの更生の過程は、塀の外側にいる子たちにとっても意味あるものなんじゃないかな。

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今ここから、生き直したい人へ

詩を読んで泣いたのはこれが初めてでした。寮美千子編『奈良少年刑務所詩集 空が青いから白をえらんだのです』。そのひとつひとつの詩が、言葉が、文章がとても心に響いて。一方で、それを書いたのが殺人や傷害を犯した受刑者だということに驚きを隠せず、言葉にできない複雑な気持ちに駆られたのも覚えてて。

ただ、やっぱり。改めて生き直したいと思っている人にとっては、たくさんたくさん手がかりが詰まっている。今回の寮さんのお話を聞いて、改めてそう思ったんですよね。必要な人に届くといいな。


◎寮美千子さんの著書


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