見出し画像

【フェムテック通信#25】画像生成AIで作成された画像を見て感じた、無意識の偏見によるジェンダーの違い

最近、SNSで「画像生成AIで作りました」という投稿を見かけるようになりました。また、筆者が使っている画像生成AIは、Discord上で生成するものが多く、他の方が作った生成AI画像を見ることが多くなりました。

その生成された画像を見ていて感じたのは、「目が大きく」「胸の大きい」女性の画像がとても多いことです。
不思議に思い、ChatGPTに聞いてみたところ、このような答えが返ってきました。

画像生成AIが女性の目や胸を大きく描写するのは、いくつかの貢献によるものです。 まず最初に、美の考え方や社会的なステレオタイプが影響している可能性があります。文化やメディアに関して、大きな目や豊満な胸は女性の美しさの象徴とされてきました。そのため、画像生成AIはそれらの特徴を強調する傾向があるのか​​もしれません。

画像生成AIは、大量の画像データを学習しており、その中には多くの美しく加工された写真や広告などが含まれています。これらのデータから学んだAIは、一般的に美しいとされる特徴を再現するようにプログラムされているため、女性の目や胸を大きく描写する傾向があるかもしれません。

ChatGPTの回答

ChatGPTの回答に納得したものの、AI開発者のジェンダー比率や人種などによって、AIそのものが影響される部分も多いことから、無意識の偏見によるジェンダーの違いについて、3つの事例を紹介したいと思います。

1.工学分野では男性が標準?

2018年の事例ですが、米アマゾン・ドット・コムがAIを活用した人材採用システムが、男性を偏重するという機械学習面の欠陥が判明し、運用を取りやめることになりました。
過去に採用された人材が男性が多いため、女性に不利な結果になってしまったのです。女性に関連する言葉が含まれる履歴書を自動的に減点していました。

この問題は、AIが差別を助長する可能性があることを示しています。AIは、過去のデータから学習して判断を行うため、過去に偏見が存在していた場合、その偏見を学習し、再現してしまう可能性があります。
AIを開発・使用する際には、差別を助長する可能性に注意し、偏見のないデータで学習させることが重要と認識させられる事例です。

2.医療分野では性差が見過ごされやすい

医療分野では、女性は妊娠や出産への影響を危惧し、薬の臨床試験の被験者が少なくなったり、女性やメスはホルモンの変動による影響から、マウス実験でもオスを使うことが多く、男性のデータが基準となっています。

そのため、女性の健康に有効な薬や治療法が開発されにくく、女性の健康被害につながる可能性があります。例えば、女性ホルモンの影響で、女性は男性よりも薬の副作用が出やすいことがあります。しかし、女性の被験者が少ないため、この副作用が十分に検証されていないことがあります。

また、女性の体調は月経や更年期などによって大きく変化します。そのため、女性の被験者を多く含めた臨床試験を行うことで、薬の有効性や安全性をより正確に評価することができます。

女性の臨床試験を増やすためには、女性の被験者を募集する際に、妊娠や出産への影響を十分に説明するとともに、女性が安心して参加できるような環境を整備することが重要です。
また、女性の健康に有効な薬や治療法の開発を促進するために、政府や製薬会社などの関係者が協力することも必要と考えさせられる事例です。

3.無意識の偏見

シェリル・サンドバーグのTEDで紹介されている「ハイディ・ハワード実験」というのがあります。
ある起業家の成功に関する紹介文を学生たちに読ませ、それがハイディ(女性の名前)という起業家の実例の場合と、ハワード(男性の名前)という起業家の実例の場合で、人が感じる印象がどう変わるのかを調べたものです。
(実際のモデルは、ハイディという女性起業家)

・ハイディ(女性):身勝手で抜け目がない
・ハワード(男性):好感度が高い

ハイディ・ハワード実験で出た、それぞれの印象

この結果は、起業家に対する印象が、起業家の性別によって大きく影響を受けることを示しています。
日本政府でも、女性起業家支援の施策が出てきていますが、起業家を支援する際には、性別に偏った評価を避け、女性起業家にも男性起業家と同等の機会を与えることが必要と考えさせられる事例です。

ここで重要なのは、自分のアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に気づくことです。アンコンシャス・バイアスは、無意識のうちに働くため、気づかないうちに差別的な言動をしてしまうことがあります。それはAIも同じです。
自分のアンコンシャス・バイアスに気づいた後は、それを正しく認識し、意識的に排除していく必要があるのではないでしょうか。

4.まとめ:STEM分野の女性進出が、フェムテックの発展を支える

筆者は日頃、フェムテックに関わる社会情勢やビジネスモデルを調べていますが、日本のフェムテックが海外と比べて「Tech」が弱いひとつの理由として、STEM(科学・技術・工学・数学)分野の女性比率が低いことがあります。

日本は理工系人材が男性に偏っており、高等教育におけるSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の卒業生のうち、女性比率が日本は17%です。
OECD平均は32%で、ポーランドや英国などは40%以上に達していますが、工学系は特に女性比率が低いのが現状です。

女性がSTEM分野に進出するほど、女性の健康課題を解決するテクノロジーも増えていくと考えており、今年はそのような活動も増やしていきたいと思います。