ほろよい

今日終わった場所。今日初めてのこと。今日あたしが発した言葉。たった1日でこんなにたくさんの出来事があるなんて。
永遠なんてない。心配しなくても終わりは来る。どれだけ望んでもずっと続いてはくれない。
だけど、どうか、あたしを生かしてくれているあなたたちの身体と心と生活ができるだけ長い間健康でありますように。
そりゃ生きてるんだから酔っ払って転んで血が出たり、誰かと喧嘩して傷付いたり、病気をすることがあるかもしれないけれど。
それでも、自分で自分の終わりを決めてしまうことはしないでいてほしいし、あたしの大切なお城や帰る場所が1つたりとも減らないでいてほしい。
もういいやって言うことも、言われることだってどれだけの絶望と悲しみを連れてくるものなのかあたしは痛いほど知っているから。
この身体に大切なものすべてを刻んでおきたいほど、たった3行の寄せ書きなんかに書き表せれないほど、あたしはそれらすべてを愛しているの。
ハグをして耳元で囁く大好きよって言葉があたしの中での最大級の愛情表現だけれど、あのときあたしを抱きしめてくれた彼女はあたしからの健康でいてねって言葉をとても大きな愛情表現だと受け取ってくれた。
あたしの額に唇をくれる不思議で優しい彼も、決まっていつもキスをねだる可愛いあの子もそれがあたしへの愛情表現なんだろう。
愛の形はそれぞれだから。
男女でなくても、人でなくても、愛はある。
あたしはあのお店を愛していたしそこで働く人たちをこれ以上ないくらい大切に思っている。
あたしのお城へ遊びに来てくれるお客様もあたしと一緒に働いてくれるスタッフも飾り気のない茶色いあの壁やテーブルも丸ごと全て宝物のようだった。
彼女の息遣いや声のトーンやたまに裏返る音やギターの弦が擦れる音も愛しくて大切で尊いまま、ずっとあたしの中で跡を残してほしくて墨色の絵にしたんだ。
わがままで生意気で理不尽で、けれど心が強くて頑張り屋で可愛くて強くて美しいあの子も花となってあたしの左腕にずっといてほしい。
優しくて怖くて不器用な彼のいびきも声も耳元で囁かれる言葉も音楽にしてしまいたい。
肌を重ねたときの体温も同じ匂いになったこともあたしの部屋に増える彼の痕跡も汗ばんだ首元の柔らかい感触も全部愛しくて忘れたくないからどうにかして残せやしないかと思うんだ。
全部全部愛してる。
こんなこと普段言わないけどさ。
感謝してるんだ。
死にたかったあたしが死ぬのを怖がれるようになるまでの間あたしを引き止めてくれたもの全部。あたしに笑顔をくれた人たちにも。
ちゃんとあたしがあたしを愛していられるのはそれら全てがあったから、君たちがいてくれたから。あなたに出会えたから。
だから今度はあたしがあなた達の健康を祈るよ。
明日からそれぞれ別の道を歩んでいくあなた達へ。今思うように行かなくて落ち込んでいるあなたへ。いつも頑張りすぎていることに気づいていないあなたへ。
あたしが何よりも大切だと思っている愛しい人たちへ。どうか、健康で。できるだけ長く生きて。少しでも多く笑って。いつか命が消えるその時までその目から溢れるほどたくさんの愛に囲まれていますように。
大好きです。今までも、これからも。
永遠に愛しています。


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