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夜に魅せられた時の話

誰もいない道路の真ん中を得意気に歩いた。
澄んだ空気と夜空を纏いながら。
昼には人通りが多い道も
180度景色が変わるのが夜のいいところだ。
この道のもつ様々な表情を私は少し知った気でいる。


一歩歩くたびに静かに響く私の足音を聴きながら
少し先にある消えかけた街灯が
点滅するのを見るのが楽しみだった。
この瞬間の私は誰よりも強くて無敵で
まるで夜を独り占めしたかのような
そんな気分に襲われている。


私の存在を脅かす者がいないとわかった瞬間から
少し強気になるのはなぜなのか。
私の容姿を、私の価値観を、
私の好きなものたちを否定されずに
何かに怯えることなく過ごせる居場所は、
時間はこの瞬間だけだったのかもしれない。
私はこの瞬間を、この優越感を
きっと独り占めしていたいのだ。
いつも歩いているこの道も、綺麗に光る夜空の星たちも。今この瞬間に瞳に映る全てを。
決して、決して手に入れられることの出来ないものへの憧れをほんの少し胸から取り出すことができるのは
誰もいないこの瞬間だけだ。


夜という存在に魅せられ続ける私という存在は
既に夜の所有物であり、
独占されているのかもしれない。
夜は私の所有物として、私は夜の所有物として。
今日もまた会いにいく。
あの瞬間の優越感と自由を求めて。
誰もいない暗い夜道に私は誘われて。


めろんだいふく

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