構想力、観察力の鍛え方

https://note.com/mementid/n/na079796f3feb

正直、この構想力、観察力は鍛え方が分かりません。多くの予備校でもここは、悩みの種だと思います。
予備校を始めてすぐに気がついている子もいれば、何年浪人しても気がつかない子、1年目は全くピンと来ていなかったのに、突然気がついて伸びる子、色々いるのです。

でも、身につけてほしい考え方は、いくつかあります。習熟度別に並べてみます。


まず前提:うまい作品=受かる作品じゃない

最初に身につけてほしい考え方。
これは説明が難しいです。受かってる作品は上手いから。
でも、上手いかどうかより、押さえなきゃいけないポイントがいくつかあると思ってください。構成できているか、とか、モチーフが観察できているか、とか。気遣いができているか、とか。要点を把握する力は、実技対策でも大事です。
というか、デザインの仕事の半分は、ひたすら要点を把握するお仕事なので!

次に必要なこと:作品を日本語訳する。日本語を作品に訳す。

さて、上手い作品が受かるわけではないが、受かる作品はうまいと言うことが納得できたら、次に必要なことは、筆者は、作品と言語の翻訳技術の獲得と考えています。

受かる作品とはなんなのか
・今の自分の作品はどういう作品なのか
・参作はどういう作品なのか
日本語に訳してみよう。つまり、言語化してみよう。ということ。

そして、言語化したら、次の課題で盛り込んでみてください。おそらく、1回では盛り込めないでしょうから、2-3回。効果が出ているか確かめてください。日本語を作品に翻訳してください。

作品を見る→日本語に訳す(言語化する)→日本語で考える(セオリーを見つける、編み出す)→作品に訳す(計画する。エスキス)→作品を作る
まず、これができるようになりましょうね、という話です。
そのためには、メタ思考が大事です。

提出された自分の絵、それが、並んでいる作品の中で、どう見えるのか。
講師の講評のアドバイス、今の自分の技術力と、試験で求められているポイント、今日の体調etc……今の現状を鵜呑みにするのではなく、なぜこの状況が生まれたのか、考えることが大事です。
一度の結果に一喜一憂せず、自分の作品を俯瞰して捉えられないと、自分が上達しているのかどうなのか、判断がつきません。
明日褒められる作品を作るのではなく、本番で、受かる作品を作るのがゴールです。


最後の壁:作品のことは作品で考える

最後のブレイクスルーは「作品のことは作品で考えろ」です。

例えば、日本語でコミュニケーションを取る際、日本語に不慣れな英語話者は、

  1. 日本語を聞き取る
    「なぁ、この写真どう思う?俺は渋いと思うんだけど」
    (What….?なぁ…..?)

  2. 英語に訳す
    (Uh…なぁmeans Hey, and……この写真どう思う means……
    So,He said" How do you think with this picture?"……What is "Shibui"? )

  3. 英語で考える
    (I think this picture is awesome!very very cool.)

  4. 考えたことを日本語に訳す
    (How do I say "I think this picture is awesome!very very cool"inJapanese?Awesome means ”素晴らしい”, but I feel like I'm missing something.…私は、素晴らしいと思います?)

  5. 日本語で返答する。
    「私は素晴らしいと思います。」

と言うステップを取ります。
これだと、日本語から訳した際、日本語へ訳す際、時間がかかるし、微妙なニュアンスが抜け落ちますね。

しかし、本来日本語のコミュニケーションは、こうのはずです。
日本語を聞き取る→日本語で考える→日本語で返答する。
渋いを英語で無理に訳して、ニュアンスを落とすことも、
Awesome!のニュアンスが抜け落ちて、素晴らしいになってしまうこともありません。
シンプルで早いし、微妙なニュアンスの抜けがないです。

絵もコミュニケーションです。
身振り手振りといった、視覚を利用するノンバーバルランゲージの一種です。
作品を見る→日本語に訳す→日本語で考える→作品として訳す(作品を計画する)→作品を出力する
より、
作品を見る→作品で考える→作品で出力する
こっちの方が、早くて微妙なニュアンスの抜けもない。

この「微妙なニュアンス」がCを超えるには、極めて大事です。
だって言葉で説明できないから、作品で表す技術が必要なんです。
これが、デザインの仕事のもう半分。要約するだけじゃダメよ〜。要約は、具体化とセット。

悲しい話なんですが、これ、なぜか予備校に入ってくる前にどこかで既に身に付けてる人がいます…ビジュアルコミュニケーションネイティブ……強い…。
そっそういう人はメタ思考ダメダメだったりするんだから!(負け惜しみ)

講評とかで言われがちなことで整理すると、こう言う感じ

初めたて

「まずは、参考作品とか研究してみようか」

こう言うコメントもらう人は、高確率で、「うまい作品=受かる作品じゃない」がわかっていないと考えられます。
ここら辺はさっさと抜けたいですね。おそらく受験生活の最初の1割くらいにしか該当しないです。

初心者〜

「終わらせるところからだね」
「無理しない構成しようか」
「明度計画を考えみよう」
「粗密がなぁ」
「描写(模刻)もっとがんばろうか」
「精度がなあ」
「安定しないね〜」
「この間は良かったのになぁ」

いわゆる、安定しない時期。
ここが一番長いかな。受験時代の8割くらいは彷徨う。

安定しない理由。
これは、メタ思考、メタ視点、そして、画材を扱う力が足りません。
メタ思考は、作品を見る→日本語に訳す→日本語で考える→作品として訳す(作品を計画する)→作品として出力する
まずこれができていません。日本語に訳せていないか、作品に直せていないか。作品(視覚)でコミュニケーションが取れていません。

うまい作品=受かる作品じゃない、と言うのはわかっているはず。
繰り返しになりますが、
受かる作品とはなんなのか
・今の自分の作品はどういう作品なのか
・参作はどう言う作品なのか
日本語に訳してみよう。つまり、言語化してみよう。
メタ思考を鍛えて、自分の作品と、受かる作品を言語化する訓練をした方が良い段階です。
筆者は、5回に1回良い作品を作る人より、5回とも安定して惜しい作品を作る人の方が、実力あると思います。

画材の扱いに関しては、慣れです!
筆や鉛筆を動かす筋肉とそれを動かす神経の発達の話なので、新たなことができるようになるまで二ヶ月〜三ヶ月はかかります。楽器やスポーツの練習に近いですね。1回2回で諦めず、継続して練習してください。経験者はわかるかな…?

C手前

「なんか寂しいんだよね」
「惜しいんだけどなぁ」
「やり切りが足りない」
「もっと観察して」

合格まであと一歩。難関私大なら受かり始めます。抜けるのには1-2ヶ月くらいかなあ。
夏終わり〜冬季講習入る前でこのレベルだと、かなり合格が近いです。

作品を見る→日本語に訳す→日本語で考える→作品として訳す(作品を計画する)→作品として出力する
これができています。
構成や明度計画の言語化(つまり、作品の言語化)ができていて、それに沿って、自分の作品のマネジメントもできる状態です。

でもここから先は、作品を見る→作品で考える→作品で出力するが大事。
日本語に訳す際に、抜け落ちるポイントや、日本語から訳すときに抜け落ちるポイントが、「寂しさ」の原因。
そのポイントが、作品にどれほど反映されているか。言葉に直せない部分をどれだけ盛り込めるか。
具体的には、日本語だと「いい感じ」とか「あの感じ」としか言えないものが、反映されていればいるほど、点数が稼げると考えて良いです。

確かにデザインは作品と言語を翻訳し続ける仕事です。
今思えば、ネイティブレベルの作品でのコミュニケーション力求めるというのは、なかなか酷な入試ですね。
デザイン思考みたいな、デザイン理論やプロセスの解説が流行ってますが、作品を作品のまま作品でコミュニケーションするってところまで触れているものは少ないと感じます。
デザイン思考がノンデザイナーのための知識なら、おそらくこの、「視覚表現は視覚表現で考えられるか」がノンデザイナーとデザイナーの分水嶺でしょう。
でも、実際、気が付いてしまえは、言葉を身につける過程で忘れてきたものを思い出す、という感触に近いです。
人間文字や言葉を覚える前なんて、絵を含めた視覚表現だけで会話していたわけですから、コツを掴めば簡単です。

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