見出し画像

米国コロナでうつ病が3倍に、その傾向とは

日本では新型コロナの流行が続いています。不安やストレスで気が滅入る方も多いのではないでしょうか。「コロナうつ」という言葉も一般的となり、新型コロナによる精神面への影響が注目を浴びています。

 そんな中、米ボストン大学が2020年9月にある論文を発表しました。2020年の3月~4月にアメリカで調査を行ったところ、「新型コロナの流行前(2017年~2018年)と比較してうつ病が3倍になった」というものです。

 調査の対象はランダムに選ばれた18歳以上の市民で、抑うつ症状や社会的背景(年齢、性別、人種など)、ストレス要因(失業、知人のコロナ関連死など)について聞き取り調査が行われました。
 抑うつ症状の評価にはPHQ-9が使われました。心身に関する9つの質問に答えて点数をつけるもので、点数が大きいほど抑うつ症状が強いことを表します。症状は軽い方から「症状なし」「軽症」「中等症」「やや重症」「重症」と分類され、中等症以上の抑うつ症状を持つ人は「うつ病」と診断されました。

 この調査の結果、うつ病や抑うつ症状の増加は、性別・年齢・人種・収入・学歴などに関係なくすべての統計学的集団で認められました。うつ病の有病率が特に高かったのは、年収が20,000ドル(約220万円)未満の人、貯蓄が5,000ドル(約55万円)未満のひと人、未婚者、ストレス要因が多い人、などでした。

 うつ病と診断された人の割合は新型コロナの流行前と比較して3倍に増えていました(8.5%→27.8%)。また、抑うつ症状がある人の割合も2倍以上に増えています(24.7%→52.4%)。

画像1

新型コロナ流行前後の抑うつ症状の推移を示したグラフ。コロナの流行により抑うつ症状のない人が減り、抑うつ症状のある人は増加している。原著論文より引用し、筆者により翻訳・改変。

 今回の疫学調査については、日本を含めいろいろな国で同様の調査が行われており、結果はどれも似たり寄ったりでした。つまり、社会的背景によらず多くの人が精神的な影響を受けており、とりわけ影響を受けやすいのが経済的・社会的基盤が弱くストレス要因の多い人である、ということです。

 この結果を見ると、新型コロナによるストレスから逃れることはできないように思えます。少しでもストレスを発散できるように努め、自分や周りの人にうつ病のサインがあれば助けを求めるほかに無いのかもしれません。
 しかし希望もあります。現在、日本ではワクチンの接種が行われており、長い目で見れば新型コロナの流行や精神面への影響は減っていくと予測されます。皆が平穏に暮らせる日々が一日でも早く戻ることを願います。

参考引用:
Ettman CK et al. Prevalence of Depression Symptoms in US Adults Before and During the COVID-19 Pandemic. JAMA Netw Open. 2020;3(9):e2019686. doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.19686
Pierce, Matthias et al. Mental health responses to the COVID-19 pandemic: a latent class trajectory analysis using longitudinal UK data. The Lancet Psychiatry, Volume 0, Issue 0
Michiko Ueda et al. Mental health status of the general population in Japan during the COVID-19 pandemic. Psychiatry and Clinical Neurosciences 74: 496–512, 2020 など

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?