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誤訳のパターン2 構文読み違い(文法間違い)

 間違っている翻訳、つまり誤訳にはいくつかパターンがある。
 今日は英語の学習不足による「文法間違い」について訳文を挙げ、対策を考える。

thatは品詞も意味もいろいろ

Well this isn’t just an artful way of exploring the 911R’s retroism by following the timeline back from the modernist wonder that is the Stuttgart Museum to the marque’s birthplace in a wooden hut.
※the marque:ポルシェのこと
そう、これは単に、近代主義者が「これがポルシェミュージアムか」と驚くシュトゥットガルトの博物館から、ポルシェが生まれた木造の小屋へと時間軸を逆にたどることで、911Rの懐古趣味を探る気の利いたルートというだけではない。

 どこがおかしいか。この訳は、thatを従属接続詞ととり、the modernist wonderと同格として訳している。だがそれではthat節内が破綻している。to以下がかかるところがなくなってしまう。

 この英文は、次のようにとるべきだろう。太字語句が先行詞、thatは関係題名詞でMuseumまでが関係代名詞節(パーレンでくくった)。そうすれば、to以下は前行のfromからつながっていると判断し、破綻なく読める。

Well this isn’t just an artful way of exploring the 911R’s retroism by following the timeline back from the modernist wonder (that is the Stuttgart Museum) to the marque’s birthplace in a wooden hut.
そう、これは単に、近代の奇跡(と言えるシュトゥットガルトのミュージアム)からポルシェが生まれた木造小屋へとさかのぼって、昔の911Rを懐かしむことができる気の利いたルートというだけではない。

多くの品詞、多くの機能を持つ「誤訳しやすい語」はこれだ!

 多くの品詞、多くの機能をもつ語は誤訳の温床だ。だが、こうした誤訳を防ぐのは難しくない。きちんと構文分析をして読んでいけばよいのだ。
 上ではthatの例を挙げた。thatは接続詞、関係代名詞のほか、指示代名詞として働くこともあるから要注意。ほかにも次のような語が誤訳しやすい。

that:接続詞、関係代名詞、指示代名詞(何を指しているか)   
it:形式主語、形式目的語、指示代名詞(何を指しているか)、
  IT(原文タイプミスで小文字になっている)if (原文タイプミス)
as: 前置詞、副詞、接続詞、関係代名詞、慣用表現多
what:疑問詞(間接疑問含む)、関係詞
have:現在完了、使役動詞、状態動詞、動作動詞
doing:進行形(現在完了や受動態が入っていると難易度アップ)、
動名詞、現在分詞

久松がセミナー用に作成した資料より。不許複製

構文分析をするには

 これらの語を誤訳しないようにするには、英文を構文分析すればよい。だが、そんなことをしたことがないならば、薬袋善郎『基本文法から学ぶ 英語リーディング教本』を購入し、この本のとおりやってみればよい。
 わたしは20年くらい前、この著者の別の本(絶版)で、構文分析を徹底的に実践した。そうしてやっとできるようになり、この手の誤訳をすることは少なくなった。
 英語を使った仕事をしていていて「なんとなく英文を読んでいる」人は、一度薬袋メソッドを身体に染み込ませることを強くお勧めする。

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