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五月雨の月


久しぶりに見る月は靄がかかっていて
照れたようにこちらを見ていた

「久しぶり」

本当に言ったのか、
ただ思っただけなのかは定かではない

雨続きの毎日に何一つ不満はなく
寧ろ雨音が心地いいとさえ思っていた
雨は好きだ

月が見えたことに歓喜を覚えるのも
雨のおかげだと思うと一層愛おしい

不意に夜空を見渡すと
月の明るさで辛うじて映る飛行機雲

夜の飛行機雲

流れ星の跡をずっと見られる感覚になって
また頬が緩んだ

掴めそうで掴めないのに
いつなん時も見上げると存在する雲
夜はこんな風に過ごすのか

そう思いながら

「雲みたいな人ですね」

と伝えてしまったあの人を思い出す

「どんな人なんだろ」

なんの疑いもなく問い返すその人は
をかしい人という表現が最適だろうか

その人が薦める
四千頭身というトリオを独り笑い見て

ビール片手に一緒に観たいなと

そうして今宵の月の感想から
大喜利なんかをしたいなと

なんだか良い夢が見られそうだ

あゝをかしい五月雨の月
あゝをかしい、をかしい


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