研師(とぎし)ヒデの話 (多様性の森に彷徨う若者)
ヒデは揉め事は好きではない。しかし弱い者いじめは子どもの頃から許すことが出来なかった。だから揉め事によく巻き込まれた。
ヒデの仕事場はマンションの一室、窓の無い陽の入ることの無い静かな部屋であった。そこで一刀、一刀と向かい合う。もちろん誰とも口をきくことなく刀を研ぎ続けるのであった。
そして刀たちと心で会話をするのであった。
ヒデに託される刀のほとんどはわざと無造作に荷作られた宅配便で届けられる。「測定用工具」と記名された荷に疑いを持つ業者は一人もいなかった。
いつもは梱