マガジンのカバー画像

Special Thanks !(みんなのフォトギャラリー)

383
みんなのフォトギャラリーから、みあんご!が撮影した写真を選んで使ってくださったみなさんのノートをまとめています。ありがとうございます!
運営しているクリエイター

2022年12月の記事一覧

51 鎌倉を歩く  

私が勤務した学校では班ごとに鎌倉の町を巡る「鎌倉班別自主行動」を実施していました。市内では他にも複数の学校でこれを実施しており、名称は「鎌倉班行動」とか「鎌倉遠足」などそれぞれに異なりますが、1年生か2年生で実施されていました。3年生の修学旅行につなげるためです。修学旅行では京都や奈良を班ごとに巡る自主行動が定番になっており、鎌倉でのそれはリハーサルのような位置づけです。以下は「鎌倉班別自主行動」について書いた学級通信(複数回)です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

魔導人形は深き者どもの夢を見るか①

敷石の中を魚が泳いでいく。 骨張った不味そうな魚が一匹、不思議な軌道を描いている。 鱗に反射する光は左右にチラチラと輝きながら半円を描いたかと思うと、急に旋回して引き返す。 なんどか繰り返した後に、そいつはじゅぽんと音をたてて潜っていく。 石に完全に同化してしまうと、それはもう完全に敷石以外のなにものでもない。 真っ昼間から、目を開けて夢をみていたのかと物思いにふけり、しばらくその場に立ち尽くす。 「何をぼけっと突っ立っているのだ」 「今、敷石の中に一匹の魚が潜っていくのが見

秋の記憶【短編近未来SFノベル】

「綺麗な夕陽だね」 「そうね、波にキラキラ反射して、ちょっと眩しいわ。」 ひと気のない晩秋の海辺。肩を寄せ合うようにして、若い二人は沈みゆく夕陽を、名残惜しそうに眺めていた。 「これが秋の夕陽なんだね。何やら物悲しいよ。切なさで胸が締め付けられそうだ。」 「そうね、本当に素敵な季節ね。この前、山で見た、紅葉っていうの?あれも、もの凄く綺麗だった。」 「春の花々と鮮やかな緑、夏の太陽と湧き立つ雲も捨てがたかったけどね。だけど秋って季節は格別だな。」 「このあとは冬が待つばか

わたしの巴御前

わたしは巴御前が好き。 勇猛な男性のかたわらで懸命に戦う彼女の姿に憧れます。 巴御前との出会い高校生のころ、教科書の『平家物語』「木曽の最期」で巴御前のことを知りました。平安時代にあんなカッコいい女性がいたなんて!! 夫、木曽義仲を助けて戦う彼女の姿がとってもまぶしくて……。 あんな風に愛する人と一緒に戦いたい。助けたい。支えたい! ……なんて、わたしには到底できないのだけど、なぜだかとってもすてきだなと思ったのです。 この後、わたしはさまざまな作品を通して巴御前

家族

「おもちゃいらないの? 片づけないと捨てるよ!」 いやだと駄々をこねていると、父の手はおもちゃから私に移り、全面ガラスばり、15階のベランダに出された。夜だと暗いほうから明るい場所がよく見える。 泣きながらも、母と室内で話す父がほんの一瞬、笑みを浮かべたのを、私は見逃さなかった。3歳の記憶。ほんの5分くらいのことであろう。あの顔が今も脳裏に焼き付いている。 その日は突然やってきた。2012年の夏の朝、妹が姿見を倒して割ってしまった。「あー!」と割れたことに対して驚く中、