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ナイトミュージアム@オランジェリー美術館

モディリアーニの特別展をやっているというのでオランジェリー美術館へ行ってきた。こちらは金曜日がノクチューン。

19時半入場の予約をし、潤んだ雲が覆うパリの寒空の下、長そでシャツの上にフカフカダウンを着込み、足元は歩きやすいスニーカーを履いて家を出た。

美術館では歩き回るので、特別なデートでもない限りなるべく歩きやすい靴を履くのがベスト。それに省エネが実施されているとはいえ、絵画の保護のために空調をしっかりと効かせているうえに人の多い美術館で厚着をすると汗をかいてしまうから、薄着とまではいかなくても、なるべく軽めの服装で行くのが良い。


メトロのコンコルド駅で夫と待ち合わせをし、いつの間にか観覧車が撤去されていた広場をセーヌへ向かって突き抜けて歩く。チュイルリー公園の角を曲がったところが入り口だ。

ずっと昔に訪れた時は昼間で公園から入ることが出来たが、今回は公園が閉まっていたのでひと回りをしなければ入り口に辿り着けなかった。

オランジェリーにはもう随分と前に一度だけ来たことがある。確かフランスの通貨がまだフランだった頃だ。

懐かし~。


19時半にゲートが開き、それほど待たずに入ることが出来た。セキュリティーチェックを済ませてからヴェスティエールに上着を預けて身軽になり、両腕を大きく振って薄暗い回路を進んでいく。

先ずは地下階で開催されているモディリアーニ展へ。

モディリアーニ特有の肖像画がズラリと四方の壁に掲げられている。予約の人数制限をしているのか人の数はそれほど多くなく、ゆっくりと鑑賞のできる環境だった。モディリアーニの描くご婦人や殿方たちに360℃囲まれながらゆっくりと歩いていたら、あっという間に見終わってしまった。

その後は所蔵の絵画を見て回る。


ルノワールやセザンヌ、ピカソなど、よく知る名画がドドドーンと並んでいる。オランジェリー美術館に所蔵されている絵画のほとんどは寄贈された個人のコレクションだ。

これが個人の所有物だったなんて!正気なのか?

どんだけ絵画好きやねん!ってゆーか、どんだけ集めたら気が済むん?金持ちの道楽にも程がある!

その中でも特に私が気に入ったのが、ルソーの絵。見惚れすぎて写真に撮るのを忘れてしまったけど、『田舎の結婚式』はキャンパスのサイズ感といい、色合いといい、描かれている人や犬の縮尺のいい加減さといい、一瞬で目が釘付けになってしまった。そして笑った。

だって犬が巨大なんだもん。おばあさんが小さすぎるのもなんだかかわいいし、みんな真面目な顔して正面向いてるけど、やっぱり犬デカっ!!

チラッと横を見ると、隣りに展示してあった同じルソーの馬車に乗った人の絵にも同じ巨大犬が描かれている。こっちも犬デカっ!!

そ、そうか、これは超大型犬だ。そうに違いない。

そう思って馬車の方の絵をじっくりと鑑賞していると、端っこの方に黒くて小さな物体が描かれていることに気が付いた。目を細めてよくよくみると。。。犬?いや、猫か?いやいや、犬っぽい。。。って、ちっさっ!!めっちゃ小っさ!え、遠近法?そ、それともこいつは超小型犬なのか?

それにしても大きな犬と小さな犬のバランスよ!どうしたらこんなコミカルなバランスで描けるのか?!もう天才!

可笑し過ぎてニヤニヤしながらもう一度全体を見直してみると、なんだかまだ違和感が滲み出ている。馬車に乗って正面を向いている家族たちの視線の中から違和感ビームが飛び出している。むむむ。なんだろう。何かがおかしい。むむっ。

ハッ!!!おぉぉ!!

クマか?いや、犬だろう。犬に違いない。灰色で毛の長いチューバッカ似の動物がこちらを見ている。人間と同じノリで。

ええ、私、犬ですけど、何か?と言わんばかりのとぼけ顔の犬がいたーー!しかも中央に!!

あぁ、もうだめ、お腹がよじれる。可笑し過ぎる。

犬種の違う犬を3匹描いただけでこんなに笑えるなんて、ルソーって何者?

こちらは『ジェニエ爺さんの馬車』というタイトルの絵。気になる方は是非見に行って下さい。


そんなルソーにひと笑いもらったところで階段を上がり、大トリも大トリ、ミスター・オランジェリーであるモネ大先生の睡蓮を拝見しに行く。

展示室への入り口を曲がって入ったところにドーンと広い空間があり、四方の壁に大きな睡蓮の絵が壁紙の如く備え付けられていた。

奥の部屋へ進むとまたドーンと暗い配色の睡蓮たちが息をひそめて静かに壁に収まっていた。

部屋の真ん中にある椅子に座ってぐるりと一周してみる。どこを見ても睡蓮しかない。暗い夜の庭。

以前見た記憶の中の睡蓮はもっと明るい配色だった気がするが、目の前に広がる景色はズッシリと暗い。夜だから?

それでも睡蓮は睡蓮。近くへ寄って筆使いを見ると、モネの息遣いまで聞こえてきそうな迫力だ。

そんな睡蓮に見惚れていると、館内放送がかかった。

「閉館まであと15分です。出口の方までお進みください」


なんやかんやで入館したのが8時前。そしてどうやら閉館は9時のようだ。

小さな美術館とはいえ、1時間は短い。あともう15分、いや20分欲しいところだ。

後ろ髪を引かれつつ、モネ大先生に別れを告げて外へ出た。

冷たいパリの外気が非日常の景色と共に腹の奥底へと入り込む。

グルルゥ~とお腹が鳴った。

周辺には何もないので少し歩いてご飯を食べに行くことにした。

街はクリスマスの準備の最中で、キラキラとした電飾が中途半端に輝いていた。非日常感が半端ない。

大きな壁面装飾が流行りらしい

ヴァンドーム広場を抜けたところで軽く食事を済ませ、ウーバータクシーを呼んで帰宅した。

家へ戻るとミアが嬉しさ半分、不満半分な顔をして出迎えてくれた。

そろそろパリを後にする準備をしなきゃ。

太陽輝く南仏ニースへ戻るよ。

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