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(読書)ようこそ、ヒュナム洞書店へ ファン・ボルム著


ファン・ボルム著 「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」という作品を読みました。

ヒュナム洞書店の店主、ヨンジュ。そして同書店のバリスタ、ミンジュン。
このふたりが作りだす、ヒュナム洞書店は、常連客のジョンソに言わせると「受け入れられている」と感じられる空間。
書店に出入りする人たち同士が出会い、交流を通じて「生きていくこと」「夢」「仕事」について想いをめぐらせます。


「あなたの書く文章は、あなたにどれくらい似ていますか?」

ものがたりの中盤、ヒュナム洞書店企画の「トークイベント」で店主・ヨンジュが作家へインタビューする〈質問〉として考えた項目。

興味深い質問です。

ひとの書いたものを読む時、わたしは無意識に「そのひと」をイメージしながら読んでしまいます。

作家の作品でもnoteでも
たいていは、相手をよく知らないので、文章からイメージを膨らませてしまいます。
そのイメージは、勝手なもので一方通行なもの。
それはアイドルに憧れる気持ちとよく似ています。

わたしはじぶんの書く文章の中で誠実でありたいとは思います。
それが実際のわたしにどれくらい似ているか?となるとむずかしいですね、、

わたしのてがみやメールを読んだ友だちたちは、わたしが〈しゃべっているような文章〉を書くと言ってくれます。
が、それは似てるのとは違いますから。

文章は偽れるけれど、細部にそのひとがにじみ出るものかもしれません。

本書の中で高校生のミンチョルがプロの作家に質問します。

「ちゃんとした文章を書くにはどうしたらいいか」

作家は、このように答えます。

「率直に書け、心を込めて書く、
そうやって書いた文章は、ちゃんとした文章なんだ」

ようこそ、ヒュナム洞書店へ より

この作家さんがおもう<良い文章>は、
「心がこもった文章」なのだそうです。
そこに「感情」がていねいに書かれていること。

どうでしょう。
わたしは、心をこめて書きますが、感情は文中にちりばめていない気がします。
むしろ、あえて書いていないかもしれません。

ようこそ、ヒュナム洞書店へ 
韓国の「今」がよく描かれています。
そしてそれらは日本に共通するものばかり。
読んだひとは、じぶんごと、のように感じる部分があるかもしれません。

わたしのお気に入りは、バリスタ・ミンジュンの「ボタンとボタンの穴」についてくだり。

ミンジュンは両親から良い大学に入り、良い就職をすることを望まれて育ちました。

ミンジュンの母は言います。
「一番はじめのボタンをちゃんとかけさえすれば、次のボタンもその次のボタンもスルスルかけられるのよ」と。

ミンジュンは、親の言いつけ通りに素直に育ちます。
学生時代は、「ボタンを作る」ことに専念し、誰よりていねいに仕上げることができました。

その彼はフリーターのバリスタ。
 (それが悪いわけではない)
ヒュナム洞書店で過ごしたミンジョンは、どんな気づきを得るのでしょうか。

ヒュナム洞書店に集う多くの人は、人生に迷い悩むひとたち、10代から50代のそれぞれが出した「結論」はいかに?

ハッとするような展開も魔法のように解決することもないものがたりだけど
読んだあとにきっとほっとする。

ヒュナム洞書店に行ってみたい!そう思うことでしょう。

わたしもそのひとり。

ミンジュンの淹れた珈琲を飲みながら、好きな本を開き、時々顔を上げて周りの人たちを眺めてみたい。
そしてわたしは、常連客のジョンソから編みものを教わりたいのです。

おしまい

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