三原由宇

本を読むのは謎解きのようなもの。物語の中にひそんでいるテーマを見つけよう。小学生・中学…

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本を読むのは謎解きのようなもの。物語の中にひそんでいるテーマを見つけよう。小学生・中学生の国語の読解を助けるヒントを書きます。読書感想文の個人出張お手伝いします。 本業は子どもと家族の写真を撮るフォトグラファーです。 http://www.miharayuu.com

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  • 「ごんぎつね」を読んでみる

    小学4年生の国語教科書に採用されている「ごんぎつね」を読み解きます。読解の苦手な小学生向け。一緒に読んで文章に隠されたテーマについて思考を深めます。

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「ごんぎつね」を読んでみる おわりに

<前のページ 「ごんぎつね」のラストは、悲劇なのだろうか。   物語を読むと、ごんは死んでしまって、兵十には救いがないように思える。   しかし、作者である新見南吉…

三原由宇
1年前

「ごんぎつね」を読んでみる 6

<前のページ 六  そのあくる日もごんは、栗をもって、兵十の家へ出かけました。兵十は物置で 縄をなっていました。それでごんは家の裏口から、こっそり中へはいりまし…

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「ごんぎつね」を読んでみる 5

<前のページ 五    ごんは、おねんぶつがすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十と加助は、また一しょにかえっていきます。ごんは、二人の話をきこうと思って…

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「ごんぎつね」を読んでみる 4

<前のページ 四  月のいい晩でした。ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。中山さまのお城の下を通ってすこしいくと、細い道の向うから、だれか来るようです。話声が…

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「ごんぎつね」を読んでみる 3

<前のページ 三  兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。  兵十は今まで、おっ母と二人きりで、貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては…

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「ごんぎつね」を読んでみる 2

<前のページ 二    十日(とおか)ほどたって、ごんが、弥助(やすけ)というお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、弥助の家内(かない)が、お…

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「ごんぎつね」を読んでみる 1

ごんぎつね  新見南吉 一    これは、私わたしが小さいときに、村の茂平(もへい)というおじいさんからきいたお話です。  むかしは、私たちの村のちかくの、中山(なか…

三原由宇
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「ごんぎつね」を読んでみる はじめに

はじめに   思い立って40年ぶりに「ごんぎつね」を読んでみた。    新見南吉の代表作で、誰もが一度は小学校で読んだことがあるはず。    僕も読んだはずなのだが、…

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「ごんぎつね」を読んでみる おわりに

「ごんぎつね」を読んでみる おわりに

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「ごんぎつね」のラストは、悲劇なのだろうか。
 
物語を読むと、ごんは死んでしまって、兵十には救いがないように思える。
 
しかし、作者である新見南吉は、お互いの気持ちがすれ違ったままの結末は望んでいなかったのではないだろうか。
 
この物語で、一番大切な一行を挙げるとするなら、『ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。』である。
 
なぜごんはうなずいたのか。
 

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「ごんぎつね」を読んでみる 6

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 そのあくる日もごんは、栗をもって、兵十の家へ出かけました。兵十は物置で 縄をなっていました。それでごんは家の裏口から、こっそり中へはいりました。
そのとき兵十は、ふと顔をあげました。と狐が家の中へはいったではありませんか。こないだうなぎをぬすみやがったあのごん狐めが、またいたずらをしに来たな。
「ようし。」
兵十は立ちあがって、納屋にかけてある火縄銃をとって、火薬をつめまし

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「ごんぎつね」を読んでみる 5

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 ごんは、おねんぶつがすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十と加助は、また一しょにかえっていきます。ごんは、二人の話をきこうと思って、ついていきました。兵十の影法師をふみふみいきました。
お城の前まで来たとき、加助が言い出しました。
「さっきの話は、きっと、そりゃあ、神さまのしわざだぞ」
「えっ?」と、兵十はびっくりして、加助の顔を見ました。 「おれは、あれからずっ

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「ごんぎつね」を読んでみる 4

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 月のいい晩でした。ごんは、ぶらぶらあそびに出かけました。中山さまのお城の下を通ってすこしいくと、細い道の向うから、だれか来るようです。話声が聞えます。チンチロリン、チンチロリンと松虫が鳴いています。
 ごんは、道の片がわにかくれて、じっとしていました。話声はだんだん近くなりました。それは、兵十と加助というお百姓でした。
「そうそう、なあ加助」と、兵十がいいました。
「ああん

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「ごんぎつね」を読んでみる 3

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 兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。
 兵十は今まで、おっ母と二人きりで、貧しいくらしをしていたもので、おっ母が死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。
「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」
こちらの物置(ものおき)の後(うしろ)から見ていたごんは、そう思いました。

「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」

ごんは一人ぼっち。

一人ぼっちだとさびしい。

兵十も

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「ごんぎつね」を読んでみる 2

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 十日(とおか)ほどたって、ごんが、弥助(やすけ)というお百姓の家の裏を通りかかりますと、そこの、いちじくの木のかげで、弥助の家内(かない)が、おはぐろをつけていました。鍛冶屋(かじや)の新兵衛しんべえの家のうらを通ると、新兵衛の家内が髪をすいていました。ごんは、
「ふふん、村に何かあるんだな」と、思いました。
「何なんだろう、秋祭かな。祭なら、太鼓や笛の音がしそうなものだ

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「ごんぎつね」を読んでみる 1

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ごんぎつね 
新見南吉


 
 これは、私わたしが小さいときに、村の茂平(もへい)というおじいさんからきいたお話です。
 むかしは、私たちの村のちかくの、中山(なかやま)というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまが、おられたそうです。
 その中山から、少しはなれた山の中に、「ごんぎつね」というきつねがいました。ごんは、一人ぼっちの小ぎつねで、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほっ

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「ごんぎつね」を読んでみる はじめに

「ごんぎつね」を読んでみる はじめに

はじめに
 

思い立って40年ぶりに「ごんぎつね」を読んでみた。
  
新見南吉の代表作で、誰もが一度は小学校で読んだことがあるはず。
  
僕も読んだはずなのだが、すでに記憶がおぼろげで、物語のあらすじさえもほとんど忘れてしまっていた。 
 
とりあえず読んでみる。物語は長くない。5分もあれば全文読めてしまう。
 
大人になって読み返した「ごんぎつね」は新鮮で、ごんと兵十(ひょうじゅう)の気持

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