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研修デザイン:管理職のパラダイムシフトは可能か?

やばい・・・研修開発の納期が明日なのに、まだ何もできていない・・・。最近プログラミング体得に夢中で通常と違う脳を使っているせいなのか、本業である研修企画のインスピレーションがあまり生まれない。研修企画とは、ADDIEモデルに沿って開発されることが多く、現状はA(nalize)とD(esign)をさまよっているフェーズ。パワポでなく、活字でまとめると思考整理ができそうで、noteに向って、とりあえずD(esign)実施で、研修のプロトタイプを作ってみる。

今回の研修テーマ
対象は、大手内資金融系で働く50代管理職。テーマは、『若手従業員のキャリア自律を促すべく、上司である管理職に部下のキャリア自律を促す重要性を訴求し、管理職自らにおいても会社の人的資本開示の取り組みについて重要性を理解し、本気で取り組むための管理職のパラダイムシフトを起こすような研修。さらには、安泰と思われる当該産業においてもAI革命がもたらしうるビジネスモデルの変化についての危機感を醸成し、世の中の変化に対し当事者意識を持って捉えてほしい。(ちなみに10年先のビジネスモデルの変化は長期過ぎ、ジブンゴトにならないため、直近5年程度の競合のDXについての動きも捉えつつ、現実的な危機感を醸成してほしい』・・・テーマ盛り込みすぎて難しくない?(笑)というか、マウスイヤーな近年の管理職は、マクロもミクロも、さらには上も下も全方位でなければならず、本当に大変だ・・・課題感が現場にいる時からアップデートできず、理論ばかりになるコンサルにはなりたくないため、そんな危機感を色んな企業と一緒に毎回感じさせてもらっているのでありがたい。

(ざっくりと論点は・・・)
外部環境の変化を当事者意識を持って捉えるマインドの醸成
  →AI革命はいち事例として

『会社が取り組む人的資本開示』についての重要性を理解し、能動的に取り組むためのマインドの醸成

『従業員へキャリア自律を促す』ための管理職としてのあるべき姿の認識とコミュニケーション力含むスキルの体得

(どうまとめるか・・・)
外部環境の変化はファクト整理
人的資本開示についての会社が求めるゴールを再認識
 →一般的にだが、企業は手段が目的化しやすい。IR情報にきれいにまとめられた情報だけでなく、マクロ的に人的資本がもたらすものを、ジフンゴトとして腹落ちさせるためには、作り手側自らが、理屈ではないレベルで腹落ちさせる必要がある。
キャリア自律についても同様で、その必要性と有用性を落とし込む必要があり、Z世代の動向から深堀り、言及していく必要がある。
④は、もっとも重要で、研修が『ポツポツ情報が点在し、情報のシャワーで行動変容につながない』という状態だけは避けたい。そのためには、研修全体としてストーリーを持たせる必要がある。よって、この研修は、②と③をシームレスにつなぐことが重要で、立場が変わることで、取り組むべき施策が変わっているだけで、『人的資本』だろうが『キャリア自律』だろうが本来向かっている目的と方向性は同じ、という着地にしなければならない。

(ChatGPTの限界)
・Chappy先生に相談してみたところ、シナリオはぱっと見、きれいだが何だか魂入っていない感じ、当たり前か(笑)。Chappy先生は、上記①ファクトの列挙には最適だが、②③の信ぴょう性、さらには、④は不得意な様子。『人的資本』とは、『キャリア自律』とは、ということは教えてくれるが、ワードごとのブリッジング(パワポのメインメッセージから次のスライドまでの論理的なつなぎ)は論理が破綻していることが多い。テーマやワード事の、それぞれの内容は蓄積されたデータでマスな回答をしてくれるが、テーマとテーマがどうつながるかなんていうデータがそもそも多くは蓄積されておらず、ここにバリューを発揮できるのが研修講師(ヒト)なのかもしれない。そもそもロジカルであるとは、絶対解があるわけでなく、『最も一般的であろうという解に導くこと』が論理的な筋道ということであるため、データが少ない事象においては、鼻を利かせ判断し、ストーリーを導くことは人間でしか難しいのかもしれない。(ChatGPTのジョークはイギリス人のジョークから面白さをとったレベルで、理解が困難なことが多い(笑))

研修の組み立て
①ファクト整理
ちょっとズレたが、①のファクト整理には、人間でしかできないことAIで効率化できることなんていうのも織り交ぜる。但し、ジブンゴトとして捉えるためできるだけ身近な事例で整理。

②人的資本開示
を考えるにあたり、以下③キャリア自律を考える

③キャリア自律
日本人がキャリア自律が苦手と言われる理由は、日米の組織構造と人事慣行の違いを比較することで浮き彫りになってくる。

日米の組織構造と人事慣行の比較
米国企業の組織構造の特徴のひとつは、トップダウン型のストラクチャー。組織のMVV・パーパスを実現するための戦略が明確に描かれ、それがミドルマネジメントのKPIやアクションプランにまでブレークダウン。この形式知化された戦略やアクションプランの実行を支えたのが、評価や報酬が人ではなく仕事(課業)に紐付く『ジョブ型人事制度』であった。一方、米国企業のトップダウンのピラミッド組織構造と対局なのが、日本企業のボトムアップ型組織構造。高度成長期の日本の経済を支えたのは、3種の神器(企業別組合、終身雇用、年功制)と日本企業特有の組織構造であると言われている。大卒新入社員層から持ち上がったピラミッド構造においては、ボトムアップで仕事を作り、従業員の間に有機的な仕事のつながりができる所謂『メンバーシップ型』の組織が組織業績に寄与していた。そして、そのような組織をさらに活性化させたのは、年功や人の能力を評価する職能資格制度であり、また、この時代は、『kaizen』に代表されるように、日本式経営とも呼ばれ、米国企業がその経営スタイルを取り入れるなど、日本のマネジメントスタイルが世界的に注目を浴びた時代でもあった。要するに過去の成功体験を支えたのは、終身雇用前提の愚直な日本人であり、キャリア形成は従業員の責任以上に企業側にあったということだ。

●変革が迫られる日本企業
バブル崩壊後の経済停滞に追い打ちをかけ、グローバル化・コモディティ化による市場の収益性の悪化、さらには人口構造の変化等、市場自体がすでに成熟社会に突入し、日本企業は働き方改革による生産性向上、イノベーションの創出、コスト構造の改革等、様々な変革が余儀なくされている。かつては日本式経営として注目を浴びたマネジメント手法や、それを支えたメンバーシップ型人事制度の有用性さえ疑問視されている背景には、この市場の変化が大前提に。この状況を捉え、競争戦略で有名なマイケル・ポーター博士は、日本には戦略がないとし、日本が競争力を失っている理由を『日本はコンセンサスを重視することで知られ、個人間の違いを強調するより、むしろ調整する傾向が強い。』と言っている。

●人事制度改革の課題
 日本企業の多くはジョブ型・またはハイブリッド人事制度導入を開始し、MVVやパーパスをトップダウンで戦略にブレークダウンし、課業ベース(ジョブ型)もしくは役割ベースでの人事制度を構築することが、業績停滞からの脱却のための打ち手になると考えているようだ。果たして、この打ち手はうまくいくのだろうか?日本が業績不振の煽りを受け、何とかコスト構造を改善しようとリストラを図った1990年代終わりから2000年代初頭にかけての動き、この際大手企業の間で広がったのが米国からそのまま輸入した「成果主義」だった。人事の歴史の中では黒歴史と言われているのがこの時代と人事施策である。今回もジョブ型・ハイブリッド型人事制度を強行手段で導入し、急遽、従業員側に『キャリア自律』『リスキリング』が求められているというのが、これらバズワードの背景だ。言い換えると企業側からすると、この人事制度大改革を成功させられるかは、人事市場の流動性、さらには、従業員側のポテンシャルにかかっている。さらに、従業員側としても、企業側の変革に対応できない人材は、これからも労働市場での優位性は築きにくい時代になってくるのかもしれない。

(従業員側に危機感が醸成しきれない原因)
また、前述のように、日本の基本の組織構造はボトムアップ型であり、それを支えてきた新卒一括採用、ジョブローテーションを通してのジェネラリスト育成という人事慣行が企業には残り、これらが既存の従業員の安堵感を醸成しているのかもしれない。また、ジョブ型人材を獲得するにはまだまだ市場の流動性が低く、採用力がある企業のみが優秀人材を獲得できるという企業間格差にもつながることも予想される。要するに中堅以下の企業の方が、危機感を感じにくい。終身雇用という人事慣行だけでなく、そもそもの解雇のハードルの高さや、年功序列の賃金制度による不利益変更を起こしにくいということも原因にあげられるかもしれない。

このように日本企業、特に大手企業が人事制度変革を行っている以上は、今後ますます、企業間格差、従業員格差が広がっていくことは間違いなさそうだ。その際に、従業員側が自らパフォーマンスを発揮できるポジションを知り、見つけ、さらに変化する外部、企業内環境に太刀打ちするためのスキルの醸成(リスキリング)は、必要不可欠になっていくだろう。依存しても、ぶら下がっても会社は守ってはいられない状況になっている。従業員自らが、進みたい方向を明確にし、必要とされるスキルの体得を続けながら、主導権を握り、企業・ポジションを選んでいってほしい。その必要性に気付くには、上司である管理職が危機感を醸成し、その必要性を唱え続けていく必要があるのかもしれない。

人的資本開示・・・(続きは後編に・・・)

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