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ら抜き・感情語・過去丁寧語は避けて書く/作家の僕がやっている文章術153

書き言葉は、話し言葉に引っ張られながら変遷してきました。

<文例1>
こんなやばい景色、見れるところに来れるなんて、もうないかもしれない。

でも、由香利と一緒だったら、ワンチャンあるかもね。

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文例1は、口語体です。

日常会話で、話し言葉として意味は通じます。

文例1をリライトしてみます。

<文例2>
こんな美しい景色を、見られるところに来られるなんて、もう機会はないかもしれない。

でも、由香利と一緒だったら、もう一度くらい機会があるかもしれないね。

正式な文章を書く際には、感情語と、ら抜きと、過去丁寧語に気をつけなくてはなりません。

「やばい」は、30年ほど前から肯定的な意味で使われ始めた気がします。

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<文例3>
この豆腐、やばいですよ。もう食えないかもですよ。

文例3は30年ほど前に、名を知られたそこそこ高級な和食店で、豆腐料理を運んできた店員に、言われた言葉です。

私は「えっ、腐っているのだろうか」といぶかしがったものです。

<文例4>
この豆腐は、とても美味しいですよ。他では食べられない味だと思います。

文例4の意味での発言だ、と気がつくまでに、しばらく時間がかかったものでした。

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「やばい」は感情語です。

「すごい」「でかい」「へこむ」なども、感情語です。

何となく包括されている意味は察しがつくのですが、何が「やばい」のか、どう「すごい」のか、どのように「でかい」のか、どんな風に「へこむ」心境にあるのか、その中身を明言化しないと文章では伝わりません。

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「感情語」「ら抜き」「現代語(ワンチャン)」などは、日常会話では使われますが、文章で使うには、まだ時代が許していないのが現状です。

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<文例5>
ではお約束は明日の午後5時でよろしかったでしょうか。

文例5の過去形の丁寧語もよく耳にするようになりました。

<文例6>
ではお約束は明日の午後5時でよろしいでしょうか。

文例6にあるように、現在形で確認するのが正しい言葉遣いです。

なぜなら、相手とは現在時点での時間を共有しているからです。

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遠回し丁寧語も聞かれるようになりました。

<文例7>
1000円からのお預かりになります。商品の方はこちらの方になります。

<文例8>
1000円のお預かりになります。商品はこちらです。

さらに正式には

<文例9>
1000円をお預かりします。商品はこちらです。

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口語として使う言葉は、相手との会話で意味が通じます。

しかし文章では、意味が伝わらない事態に陥るリスクがあります。

<文例11>
この秋の新商品として発売されたドルチェ&ガッバーナの香水は、高級感はかなり、やばいですよ。

つけた瞬間のトップノートは、官能的だったが、しばらくたった頃には深い森の香りに変化し、野生の男が眠りにつくような香りで、女性はあなたに魅了されるだろうこと間違いなし。

デートに誘ったときにシュッとひと吹きで、ダンディに変身。

スーツを格好良く着れるのも、恋してもらえる男の条件だが、香りを使いこなせるのも、イケてる男の第二の条件だったことをご存じでしたか。

……(後略)。

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文例11は、経験が浅いWebライターの実際の原稿です。

「伝えたいこと」は何となく分かるのですが、意味がはっきりしません。

<文例12>
秋の(この秋に)新商品として発売されたドルチェ&ガッバーナの香水は、高級感にあふれています。

つけた瞬間のトップノートは、官能的ですが、しばらくたつと現れるミドルノートは深い森の香りに変化します。

まるで野生の男が眠りにつくような香りに、女性は魅了されるでしょう。

デートに誘うとき(デートの前)にシュッとひと吹きで、ダンディに変身。

スーツを格好良く着られるのは、恋してもらえる男の条件だけれど、香りを使いこなせるのも、イケてる男の第二の条件だとご存じでしたか。

……(後略)。

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文例12のように書き直すことを、私はアドバイスしました。

① 感情語は、言いたいことの概念を大きく包んだ言葉なので、別の言い方に書き直せないかを考えます。(たいていは適切な名詞か動詞が見つかる)

② ら抜き言葉は、まだ正式な文章としては認められていません。

ら抜き言葉を使った文章は「ランクが低い」「相手に失礼に当たる」「読み直しをしていない」と判断されます。

③ 過去形は丁寧語ではありません。

 「だった」「かった」「なった」は、もう済んだこと、つまりは過去を表しますが、丁寧語ではありません。

過去丁寧語が口語で使われるようになった背景には、相手との距離を離す態度が、現代においては、ていねいに相当すると、多くの人が思い込んだからだと私は考えています。

現在形で表現すると、直接的で相手と距離を取っていない気がする畏れから定着したのかもしれません。

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《ら抜き言葉をチェック》
未然形にして「~ない」と言い換えると見分けられます。

例えば「食べる」を未然形にすると「食べ+ない」になります。

「~ない」の前にくる母音が「エ」のときは「られる」を使います。

×「食べれない」→〇「食べられない」

同じく「着る」は「着+ない」で「~ない」の前にくる母音は「イ」です。

これも「られる」がつきます。

×「着れない」→〇「着られない」

未然形の母音が「イ」「エ」のときには「られる」で表記します。

これが「ら抜き言葉」のチェックの方法です。

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《過去丁寧語をチェック》
「だった」「かった」「なった」「あった」などの過去形には、撥音便「っ」が使われます。

自分が書いた文章に、撥音便を見つけたら「過去形」で良いのか、現在形にしても意味が通じるのかを確認します。

丁寧語のつもりで過去形にしてある場合には、現在形に書き改めます。

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文語体(文章言葉)と、口語体(話し言葉)は、日本語の両輪です。

口語体が間違いで、文語体が正しいわけではありません。

ただし、正式な文章は、文語体のルールで書くという決まりがあります。

手紙を、メールを、ビジネス文書を、あるいは、ライターの仕事として、文章を書く際には、文語体のルールを守らなくてはなりません。

このような細かな注意点から、文章を是正して、スラスラと間違いのない文章を書けるようになる講座をご用意しています。

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