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語彙力とは数ではなく応用力のことだ/作家の僕がやっている文章術062

語彙についてお話します。

「私は語彙力がなくて」と相談をもちかける人がいます。

「言葉をたくさん知らない」
「正しい意味で言葉を使えない」
「四字熟語など難しい言葉の意味を知らない」

語彙力と問われるとこうした悩みを挙げる人は少なくありません。

しかし語彙力とは「言葉をうまく表現に応用できる」力(ちから)です。

<文例1>
「電車に頼って通勤する」
「電車を使って通勤する」
「電車を利用して通勤する」

電車に頼って通勤すると表現する人は、まずいないはずです。

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では、次の文例ではどうでしょうか。

<文例2>
「睡眠薬に頼って眠りにつく」
「睡眠薬を使って眠りにつく」
「睡眠薬を利用して眠りにつく」

原稿を書く際に、
「睡眠薬に頼って」と文章化するケースはあるでしょう。

しかし睡眠薬を「利用して」と文章に書くと、読者が受け取るイメージは変わります。

「頼る」を使うか「利用する」を使うか。

ここで言葉を選択して、書き分けられる能力が語彙力です。

<文例3>
「親を頼って生活している」
「親を利用して生活している」
「親に援助をしてもらって生活している」
「親からの援助を受けて生活している」

描く対象人物をどう印象づけたいか。

「頼って」と書くか「利用して」や「援助してもらって」と書くかで、やはり読者が受け取るイメージは変わります。

言葉をうまく表現に応用できる力が語彙力です。

<文例4>
ミツバチは、1回の飛行で片道5キロ、往復10キロも飛行する。
平均して15回ほどの採蜜に飛ぶから1日に75キロも飛行をするのだ。

この感嘆の表現を支えているのは「も」の助詞と文末の「のだ」です。

ミツバチの偉大さみたいなものに筆者の感情が乗っています。

<文例5>
ミツバチは、1回の飛行で片道5キロ、往復10キロを飛行する。
平均して15回ほどの採蜜に飛ぶので1日に75キロを飛行をする。

「も」を「を」に変えました。
「から」を「ので」に変えました。
「のだ」を削り「する」と文末を結びました。

文章は冷静で客観的な印象になります。

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このように言葉をどう表現に使うか。使いこなす力が語彙力です。

<文例6>
早急に対処し、万難を排することこそ急務と思惟する。

高尚な表現として「万難を排する」「急務と思惟する」が使われていますが、意味が分かれば良い文章であるならば、次のように表現できます。

<文例7>
急いで、問題に取り組み、不安を無くしていくことこそ、急いでやらなければならないと考えている。

平易な言葉で、どれだけ的確に表現できるか。

たくさんの言葉を知っていなくても構わないのです。

知っている言葉で、どれだけの表現ができるかです。

語彙力とは、言葉の応用力を指すのです。


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