痴漢を撃退できる日本語は?

痴漢。”Chikan”

”sexual harassment, especially groping on public transport in Japan"                         (source: wikipedia)

これはWikipediaで翻訳されている ”痴漢”の定義です。

この”痴漢”という概念は日本独特のものであるということをみなさんはご存じでしたか。英語にはこの”痴漢”に直訳できる言葉がなく、海外では近年”Chikan”という日本語の言葉がそのまま浸透しているほどです。

オーストラリア人彼も”痴漢”という言葉を知っていました。

日本に来て、一度だけ電車で痴漢を目撃したそうで、止めに入ったそうです。(痴漢していた男の人からは、逆切れされ”なんなんだ”この外人野郎!”みたいな感じで罵られたそうですが。悲)

また、なんと目撃しただけではなく、彼自身も2回ほど女の人から痴漢に遭い、”痴漢は男の人が女の人にするものだと思っていたけど、女の人も男の人に痴漢するなんて、、、なんてこった日本クレイジー”と言っていました、、、悲しい。

さておき。

海外の人とこの”痴漢”というテーマについて話すとき、必ず聞かれる質問があります。

”なぜ日本人女性は痴漢されたときに声をあげないのか”

なぜ、、なぜなんでしょう。

いつもこの質問の返答に戸惑ってしまう自分がいます。

”怖いから” ”声をあげるのが恥ずかしいから”というようなことが思い浮かびますが、なんか違うような違和感を感じるし、こういったとしてもだいたい ”何が怖いの?何が恥ずかしいの?悪いのは痴漢してくる方で、被害者が声をあげて止めるのは当然でしょ!”と言い返されます。(笑)

かくいう私は痴漢の被害に遭ったことがありません。

彼には、「痴漢に遭ったら絶対に”Fuck off!”って言って手を払いのけるんだよ!絶対!」と言われています、、実際、英語話者の女性が痴漢のような被害にあったら、このように強い言葉で抵抗するのだろうなと思います。

では、日本語だとどういう言葉で痴漢を撃退すればいいのでしょうか。

男女で差がある日本語

これは日本語教師をしてて気づいたことですが、日本語には女性が日常的に使える”強い言葉”がないのです。

日本語で強い言葉を言いたいときに使われるのが”命令形”と”禁止形”。

命令形だと、例えば、 ”やめろ” ”離せ”といった言葉。禁止形だと、”触るな” ”近づくな” ”話しかけるな”などの言葉です。

ですが、こういった表現は男性に主に使用されていて女性が使用することはほとんどありませんよね。

私も子供の時から祖母によく、 ”女の子なんだから言葉遣いを改めなさい”と何度言われたことか、、、、私実は子供の時、かなり言葉遣いが”悪くて”、男の子口調だったんですよね。(笑)

こうして日本語を使う女の人はその言語文化的な背景から自分の強い意志を使う言葉を封印されていきているような気がします。

”やめろ”は”やめて”、”触るな”は”触らないで”、に置き換えられてしまい、あくまで”お願いしている”といった言語機能に変えられてしまう。

こうしてみると、日本人が声をあげられないのは、その文化的な背景だけでなく、言語的背景もあるような気がします。もしくは、言語的側面が、こうした文化を創り出している。

思考が言葉を生み出すのではなく、言葉が思考を生み出す、という説を私は言語とアイデンティティ的な面から信じています。

学生にもこの”命令形”や”否定形”を授業で導入するとき、”女の人はあまり使いませんよ~”と一応一言入れるのですが、そういうとやっぱり、”じゃあ、女の人が強く言いたいときは”どう言えばいいのか”というところに行きつくんですよね。これって母語話者の日本人はあまり持たない考えですよね~おもしろい。

時代の変化とともに、日本語のこうした”言葉”も変化していくのでしょうか。

まあ私も時代の変化を待つ前に、自分を守る言葉、強い意志を示す言葉は身につけておきたいものです。

じゃあ、また★


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